内視鏡手術外来

内視鏡手術外来では、腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術、開腹手術など、良性疾患に対する手術の術前管理を行っております。当院に初診の方は、手術療法を希望されていても、まずは一般外来、あるいは各専門外来の初診を受診いただき、治療方針を決めたうえで、内視鏡手術外来に受診をいただいております。
機器や技術の進歩により、いろいろな病気に対し内視鏡を用いて、体への負担を少なくする形での手術が行われるようになってきています。私たち女性診療科・女性外科の領域では、腹腔鏡を用いて子宮や卵巣の手術を行う腹腔鏡下手術と子宮鏡を用いて子宮内の病気に対して行う子宮鏡下手術とがこれに該当します。

従来これらの手術は開腹(おなかを切ること)して行っていました。この場合、通常10 cm以上にわたり下腹部を切開します。おなかに傷が残るという美容上の問題だけでなく、術後の回復に時間がかかること、術後の癒着によって不妊症となったりすることが問題でした。そこで、腹腔鏡という直径が1cm程の内視鏡システムを用いて、より小さい切開で同様の手術をする方法が開発されました。この方法では創が小さいため、術後の疼痛が少なく回復も早いという利点があります。また、術創も見た目にきれいで、特に傷がケロイド状になり易い人には望ましいと思われます。さらに、おなかの中の癒着もできにくいといわれています。一方で、高い技術を要するため、一定以上の技術レベルをもたない施設では行われていません。

一方、病変が子宮の内部(内腔)に限局していて、サイズや数の面からみて手術操作が可能と考えられる場合、子宮鏡手術の対象となります。子宮鏡とは、経腟的に子宮内腔の観察・手術を行う内視鏡で、元々存在する経路(腟、子宮頸管)を経由するので体に切開を加える必要がありません。このような利点はありますが、狭い子宮内腔での手術操作となるため全ての症例が対象となる訳ではありません。

対象としている良性疾患
(2015年実績、重複あり)

  • 卵巣腫瘍
      子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞) 123例
      成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫、デルモイド腫瘍) 45例
      漿液性嚢胞腺腫 22例
      粘液性嚢胞腺腫 13例
      その他 13例
  • 子宮筋腫 206例
  • 子宮腺筋症 26例
  • 骨盤臓器脱 27例
  • 異所性妊娠 13例
  • その他 32例

手術実績(2015年実績、重複あり)

  • 腹腔鏡下手術
      腹腔鏡下卵巣嚢胞摘出術 98例
      腹腔鏡下付属器摘出術 61例
      腹腔鏡下子宮摘出術 41例
      腹腔鏡下子宮筋腫核出術 32例
      腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術 25例
      腹腔鏡下仙骨腟固定術 20例
      腹腔鏡下異所性妊娠手術 12例
      その他(不妊症に対する手術など) 22例
  • 子宮鏡下手術
      子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術 36例
      子宮鏡下子宮筋腫摘出術 29例
      その他(癒着剥離術など) 5例
  • 開腹手術
      腹式単純子宮全摘術 48例
      付属器摘出術 46例
      子宮筋腫核出術 29例
      卵巣腫瘍摘出術 15例
      その他(異所性妊娠手術など) 16例
  • 腟式手術(腟式単純子宮全摘術など) 9例

腹腔鏡下手術・子宮鏡下手術の適応疾患とその術式

1.不妊症

不妊症や不妊治療については、不妊外来のページを参照してください。

  • 診断的腹腔鏡検査
    腹腔鏡を用いて子宮・卵管・卵巣の周囲を十分に観察します。特に問題なければ手術後2~3日で退院になります。腹腔鏡下で以下のことを行います。
    ・ 卵管通色素試験
     (子宮内に色素を注入し、卵管から出てくるかどうかを確認し、卵管の通過性を評価します)
    ・ 大量通水
     (子宮から200-300mlの生理食塩水を注入し、卵管内を洗浄します)
    ・ 癒着剥離術
     (卵管や卵巣周囲に不妊症の原因となるような癒着があった場合にこれを剥離します)
    ・ 子宮内膜症腹膜病変除去
     (子宮内膜症の腹膜病変が認められた場合、電気メスなどを用いて焼灼します)
  • 子宮鏡下子宮内膜ポリープ摘出術
    子宮鏡を用いて、子宮内膜にできたポリープを摘出する手術です。子宮内膜ポリープは不妊症や不正出血の原因となることがあります。特に問題なければ手術翌日に退院になります。また、ポリープの位置、サイズなどの適応を満たす症例に関しては、外来での日帰り手術も行っています。
  • 子宮鏡下卵管選択通水
    不妊症の検査として、卵管造影は卵管性不妊症をチェックする非常に有用な検査ですが、様々な原因で、実際には卵管が通過していても造影検査にて通過性が認められないことがあります。こうした場合に、すべての患者さんに腹腔鏡下手術をおすすめすることは不必要な手術を行う可能性が出てきてしまいます。当科では、不必要な検査、手術をできる限り少なくするために、卵管造影にて卵管の通過性が認められない場合に、子宮鏡を用いた選択的卵管通水検査を行っています。なお、選択的卵管通水検査は、現在のところ保険適応となりませんので、自費診療となります。

2.子宮筋腫

子宮筋腫とは平滑筋繊維束で構成される良性腫瘍で、性成熟期女性のおよそ 30% に認められ、婦人科を受診する外来患者のなかで最も多い疾患の1つです。発生の原因は不明ですが、女性ホルモンの一つであるエストロゲンにより発育が促進されることが知られています。

子宮筋腫の症状は過多月経、不正性器出血、不妊症などの原因になることがありますが、無症状のことも多く、検診時や妊娠時に偶然発見されることもあります。発育する部位により、漿膜下筋腫、筋層内筋腫、粘膜下筋腫に分けられます。漿膜下筋腫は子宮の壁から外向性に発育するもので、症状に乏しいものが多くみられますが、増大した場合は腹部腫瘤感などの症状を認めます。筋層内筋腫は子宮筋層内から発育するもので、増大すると月経量の増加などの症状を認めます。粘膜下筋腫は、子宮内腔に突出して発育するもので、小さいものでも月経量の増加や不妊症などの症状を呈し、治療が必要となることがあります。月経量の増加や月経期間の延長、月経痛、下腹部痛、下腹部圧迫症状など症状を認める場合は治療が必要となります。

子宮筋腫の診断は、超音波断層法検査やMRI検査などの画像診断が有用です。悪性の疾患との鑑別のため、子宮癌検診(細胞診)を行うこともあります。

すぐに治療が必要ないと考えられる場合でも、卵巣からの性ステロイドホルモンに依存して発育する可能性があるため、閉経までは定期的な検診が必要となります。閉経後は次第に退縮して縮小していきます。

薬物療法には、GnRHアナログ療法(偽閉経療法)があります。性ステロイドホルモンの低下、子宮への血流減少などにより、子宮筋腫を縮小させる作用があります。しかし、長期投与は副作用(更年期症状、骨密度の減少など)のために難しいことが多く、子宮筋腫の手術のための術前投与や、閉経直前に使用し閉経に逃げ込む場合などに使用します。

手術療法には、根治手術である子宮全摘術と、子宮を残す手術である筋腫核出術があります。今後、妊娠の希望をされない場合は、子宮全摘術が選択することが多く、結婚されていない女性や妊娠を希望される場合は子宮筋腫核出術を選択します。筋腫核出術で子宮を温存した場合は、子宮筋腫が再発する可能性があるので、手術後も定期的な検診が必要です。

子宮筋腫に対して行う内視鏡手術

手術の術式は子宮筋腫の位置、大きさ、数により決定します。腹腔鏡では難しいと考えられる場合には、開腹手術を行います。

  • 腹腔鏡下子宮全摘術
    腹腔鏡を使用して子宮を摘出する手術です。特に問題なければ退院は手術後5~7日後になります。
  • 腹腔鏡下子宮筋腫核出術
    腹腔鏡を使用して子宮筋腫を摘出する手術です。特に問題なければ退院は手術後5~7日後になります。
  • 腹腔鏡補助下子宮筋腫摘出手術
    腹腔鏡を補助として用い4~6cmの小さな開腹創で子宮筋腫を摘出する手術です。特に問題なければ退院は手術後5~7日後になります。
  • 子宮鏡下粘膜下子宮筋腫摘出手術
    粘膜下子宮筋腫に対して行うもので、腟から子宮内に挿入した子宮鏡により子宮筋腫を摘出する手術です。特に問題なければ手術翌日に退院になります。

3.卵巣腫瘍

卵巣は、子宮の左右にある約3cm程度の大きさの、排卵やホルモン産生を行っている臓器です。卵巣に液体成分や充実性成分が貯留して卵巣が腫大したものを卵巣腫瘍といいます。卵巣腫瘍は非常に種類が多く、その原因も多岐にわたり、また原因の分かっていないものも多いのが実際です。多くの場合症状がなく、健康診断などで偶然見つかることが少なくありません。良性の卵巣腫瘍の中で頻度の高いものとして、漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫、類皮嚢腫、デルモイド腫瘍)などが挙げられます。

腹部腫瘤感、腹部膨満感、下腹部痛、腰痛などがみられますが、いずれも卵巣腫瘍に特有な症状ではなく、気づかれないことも多くみられます。茎捻転(卵巣を支えている靭帯を軸にしてねじれてしまうこと)や破裂などが起こることがあり、強い下腹部痛の原因となることがあります。そのような場合には緊急に手術が必要になります。

診断は、まず腫瘍の存在を確認し、その腫瘍が良性か悪性かを診断する必要があります。問診や外診、内診、超音波断層法、CT、MRIなどにより卵巣腫瘍の有無と鑑別診断、良性か悪性かの診断を行います。また血清腫瘍マーカーなども有用な補助診断となります。卵巣腫瘍は良性、境界悪性、悪性の鑑別が必ずしも容易でないこと、また、茎捻転や破裂などによる急性腹症の発症の可能性などから、良性腫瘍をみられる場合でも、径5cm以上の縮小しない腫瘍は治療の対象となります。基本的には手術療法を行います。術式は、年齢、妊娠の希望の有無、腫瘍の性状(大きさ、癒着、茎捻転、破裂の有無、片側性か両側性か)などを考慮して検討します。手術前の診断で良性とみられていても、摘出腫瘍の病理診断により悪性となった場合は、追加の治療が必要となることがあります。

卵巣腫瘍に対して行う腹腔鏡下手術

当科では腹腔鏡による手術は外来での診察や検査で良性と考えられるもののみ行います。悪性の可能性が否定できない場合には、開腹手術を行います。

  • 腹腔鏡下卵巣腫瘍摘出手術
    腹腔鏡を使用して、卵巣腫瘍のみを摘出する手術です。卵巣の正常部分は残します。特に問題なければ退院は手術後4~5日後になります。
  • 腹腔鏡下付属器摘出手術
    腹腔鏡を使用して付属器を摘出する手術です。(子宮の横についている卵管と卵巣をあわせて付属器と呼びます) 特に問題なければ退院は手術後4~5日後になります。

4.子宮内膜症

子宮内膜症外来のページをご参照ください。

5.子宮腺筋症

子宮腺筋症外来のページをご参照ください。

6.異所性妊娠(子宮外妊娠)

本来妊娠が成立すべき場所である子宮内腔以外の場所に受精卵が着床したものを異所性妊娠と呼びます。以前は子宮外妊娠という用語が使われていましたが、子宮頸管などの子宮内でも妊娠継続が難しい部位もあるため、現在は異所性妊娠という用語を用いています。受精卵の着床した場所により、卵管妊娠、卵巣妊娠、腹膜妊娠、頸管妊娠などに分類されます。異所性妊娠の多くは卵管、特に卵管膨大部という場所におこります。

異所性妊娠の典型的な症状は月経の遅延、下腹部痛、不正性器出血ですが、診断技術の向上によりこれらの症状が現れる前に診断できることも多くなっています。異所性妊娠の場所が破裂した時には腹腔内に多量の出血が起こり、強い腹痛がおこります。迅速な治療を行わないと危険な状態になることがあります。

異所性妊娠、流産、正常妊娠の鑑別は多くの場合、容易ではありません。血液あるいは尿の中の hCGというが成立すると胎盤から作られる物質の濃度を調べます。このhCGの濃度が上昇しているにも関わらず、経腟超音波検査で胎嚢が子宮内に認められなければ子宮外妊娠を積極的に疑います。一回の検査で診断することは難しく、通常何回かこれらの検査を行い診断します。また、これらの検査でも診断が確定できないこともあり、確定のために腹腔鏡検査を行うこともあります。

治療としては、手術療法を行うことが一般的です。卵管妊娠の場合、原則的には異所性妊娠を起こしている卵管を摘出します。その場合でも反対側の卵管が正常であれば、特別な不妊治療を行わなくても妊娠は可能です。卵管を残す手術も可能ですが、残した卵管に再度異所性妊娠を起こしてしまう可能性があります。腹腔鏡と薬物を組み合わせて卵管を残す治療法や手術を行わないで薬物療法のみで治療する方法もありますが、その治療効果についてはまだ確立されていません。

異所性妊娠の手術後に、妊娠の組織が一部残存することにより hCGの値が下がらないことがあります。これを異所性妊娠存続症といいます。通常は無症状であり、術後の血中 hCG 測定によるフォローアップにより発見されることが多いのですが、残存絨毛組織の増殖・破裂により腹腔内出血を来たし、強い下腹痛がおこることもあります。異所性妊娠存続症に対してはメソトレキセートという抗ガン剤の一種を治療として用いることが一般的です。存続外妊症は卵管を残す手術の手術後におこることがありますが、稀に異所性妊娠の部分を摘出する手術を行った後におこることがあります。

異所性妊娠に対して行う腹腔鏡下手術

全身状態が安定している場合の卵管妊娠では腹腔鏡下手術が可能と考えられます。子宮外妊娠破裂により腹腔内に大量出血をした結果血圧が下がっているなど全身状態が安定していない場合には開腹手術になります。卵管以外の場所の異所性妊娠の場合、腹腔鏡ではできないことがあります。

  • 腹腔鏡下卵管切除術
    腹腔鏡を使用して異所性妊娠を起こしている卵管を摘出する手術です。特に問題なければ退院は手術後3~5日後になります。
  • 腹腔鏡下卵管線状切開術
    腹腔鏡を使用して異所性妊娠を起こしている卵管を切開し、中にある異所性妊娠の組織のみを摘出する手術です。特に問題なければ退院は手術後3~5日後になります。

7.子宮内膜ポリープ

子宮内膜ポリープは、子宮の内面に発生するポリープで、不正性器出血や過多月経の原因となる良性疾患です。

診断は、超音波検査、MRI、子宮内膜細胞診などを用いて行います。また、外来での子宮鏡検査を行うこともあります。

治療は、手術を行う場合と、低用量ピルなどのホルモン剤を使用する方法があります。症状がない場合などは、経過観察するのみの場合もあります。

子宮内膜ポリープに対する内視鏡下手術

  • 子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術
    腟から子宮内に挿入した子宮鏡により子宮内膜ポリープを摘出する手術です。特に問題なければ手術翌日に退院になります。また、ポリープの大きさや位置、数によっては、外来通院で子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術が可能なこともあります。

8.骨盤臓器脱

骨盤臓器脱は、骨盤を支える筋力が加齢などの原因で低下して、そのために腟から子宮や膀胱、直腸などの臓器が下がってきてしまう病気です。腟から下がってきた臓器を触れて違和感や不快感を感じたり、腟の粘膜が外に触れて痛みや出血を認めたりします。また、尿が出にくくなる、残尿、尿漏れなどの、排尿障害の原因となることもあります。

診断は、問診と内診で主に行います。MRIによる子宮下垂の評価も行うことがあります。

治療は、骨盤底体操やリングペッサリー挿入などの保存的療法と、手術療法があります。

骨盤臓器脱に対する手術

  • 腹腔鏡下仙骨腟固定術
    子宮体部(子宮の袋にあたる部分)を切除して、子宮頚部(子宮の出口にあたる部分)から腟の前後に、メッシュという吸収されないシートを縫い付け、仙骨まで引っ張り上げて固定する治療です。これまで第2項先進医療Aとして当科で行ってきましたが、2016年4月より保険適応となりました。この術式に関しては、詳しくはヘルスケア外来のページをご覧ください。
  • 腟式子宮全摘術+ハルバン手術
    腟から子宮を摘出する手術です。さらに腟の粘膜の下の組織を縫い縮めることで、骨盤を支える組織のたるみをとります。

腹腔鏡下手術のリスク

これまで当科における腹腔鏡下手術において、合併症による死亡例ならびに重篤な後遺症はありません。しかしながら、他の施設では合併症による死亡例の報告もあります。また、治療や経過観察を必要とする合併症は、当科の統計では全部の腹腔鏡下手術のうち1%前後におきております。また術中の癒着などのために、腹腔鏡下で開始した手術を、手術の途中で開腹手術に変更せざるを得ないことも2%前後ありました。

一般に臓器損傷がおこった場合は開腹することがありますが、より良い修復のためなどに再手術が必要となることがあります。また、術後に合併症がおこり、その治療のために再手術が必要になることもあります。起こりうる臓器損傷として、膀胱損傷、尿管損傷、胃や腸、および腸間膜の損傷、血管の損傷などが挙げられます。カテーテル留置、人工肛門の造設、再手術などが必要になることがあります。当科ではありませんが、特に、大血管損傷がおきた場合は短時間のうちに生命に危険がおよぶことがあります。

手術中の出血が多くなることがあります。術中出血量を予想して自己血を準備してある場合でも、予想を超える出血がおきた場合には他人の血液による輸血をおこないます。また、術後に再出血がおこり、止血のための再手術が必要なことがあります。

手術中や術後に血栓・塞栓症がおこることがあります。これに対して、手術中や術後に、下肢にマッサージのポンプをつけて血栓症や塞栓症を予防します。また、抗凝固剤を用いることもあります。

子宮筋腫に対して、腹腔鏡下子宮筋腫摘出術を行った場合、モルセレーションというお腹の中で子宮筋腫を細切してから体の外に取り出す必要がありますが、この際にお腹の中に子宮筋腫の欠片が残って、Parasitic myoma(寄生性筋腫)として発育することがあります。また、子宮筋腫と術前に診断されていても、術後に子宮肉腫などの悪性疾患と診断された場合には、お腹の中に腫瘍が散乱して、治療予後を悪くする可能性も指摘されています。

術後に感染症が起こることがあるので、手術中や術後に抗生剤を用います。

その他のリスクとして、手術創の縫合不全による創部離開や手術創からの出血、手術創部にヘルニア(腸の脱出)、感染症による腹膜炎、手術器具の一部が腹腔内に残存、皮下気腫、神経麻痺がおこることがあります。

子宮鏡下手術のリスク

これまで当科において、還流液を使用する現在のタイプの子宮鏡下手術での合併症による死亡例はありません。しかしながら、他の施設では合併症による死亡例の報告もあります。当科においては、治療や経過観察を必要とする合併症が、全子宮鏡下手術の約2%でおきておりました。私たちは合併症についての以下のような可能性を考慮して、安全な手術のため努力しています。

一般に臓器損傷が起きた場合は腹腔鏡や開腹により処置しますが、より良い修復のためなどに再手術が必要となることがあります。また、術後に合併症がおこり、その治療のために再手術が必要になることもあります。起こりうる臓器損傷として、子宮穿孔や子宮動脈等血管の損傷、膀胱損傷、腸管損傷などが挙げられます。やむを得ず子宮を摘出せざるをえないことがあります。

術後の子宮内腔の癒着などにより子宮の機能を損なうことがあります。これを防ぐため、子宮内装具(避妊用のリング)を術後3ヶ月間入れることがあります。

術後に感染症が起こることがあるので、手術中や術後に抗生剤を用います。

出血多量になることがあります。術中出血量を予想して自己血を準備してある場合でも、予想を超える出血がおきた場合には他家血による輸血をおこないます。また、術後に再出血がおこり、止血のための再手術が必要なことがあります。

水中毒(手術時間が長い場合などに,子宮内灌流液により血中電解質のバランスが崩れ、一時的な意識障害などを起こします)になることがあります。その場合、輸液による電解質補正が必要です。

手術中や術後に血栓・塞栓症がおこることがあります。これに対して、手術中や術後に下肢にマッサージのポンプをつけて血栓症や塞栓症を予防します。また、抗凝固剤を用いることもあります。

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