脊椎脊髄センター
2020年9月に「脊椎脊髄センター」を開設しました。手足の使いづらさ・痛み・しびれ・歩行障害など、神経に関わるさまざまな問題に対し、整形外科・脊椎外科、脳神経内科、脳神経外科、麻酔科・痛みセンターのエキスパートが診療にあたります。
概要
脊椎はいわゆる「せぼね」のことであり、立位・歩行をする際の屋台骨としての役目を担っています。また、中枢神経である脊髄は脊椎の中を走行し、脳と手足の情報伝達に重要な役割を果たしています。脊椎・脊髄に異常があると、手足の痛みやしびれ、字が書きにくい・手がふるえる、歩く際にふらふらする・力が入りにくい、尿が出にくいなど、様々な神経症状が現れます。これらの異常をきたすような疾患は多岐にわたり、症状のパターンも様々です。疾患ごとにかかるべき診療科が異なるのですが、患者さんにとってはもちろん、専門家にとっても診断や治療に苦慮することがあります。多くの患者さんは脊椎変性疾患(頚椎症、腰部脊柱管狭窄症など)によるのですが、例えばパーキンソン病(脳神経内科)や脊髄血管奇形(脳神経外科)などの患者さんとの鑑別が必要になることがあります。また、痛みが強いものの手術の適応がなく、麻酔科・痛みセンターで保存的治療を行うこともあります。
当院では4つの診療科(整形外科・脊椎外科、脳神経内科、脳神経外科、麻酔科・痛みセンター)で構成される「脊椎脊髄センター」を開設し、診療科間の連携を円滑に進められるようにしました。基本的に独立した4つの診療科ですが、病気によっては複数の診療科で治療方針を決めることも少なくありません。各科のスタッフが横のつながりを持つことで、これまでに診断をつけづらかった症例に糸口を見出すことができるかもしれません。
連携する4つの診療科の特徴
脊椎脊髄センターで連携する4つの診療科の対象疾患、特徴は次の通りです。
整形外科・脊椎外科
対象疾患
頚椎症、後縦靭帯骨化症、腰部脊柱管狭窄症、骨粗鬆症、側弯症、脊髄腫瘍など
※手足の神経症状を伴わない疾患(肩こり・慢性腰痛など)は含みません。
特徴
頚椎症や腰部脊柱管狭窄症では内視鏡を用いた低侵襲手術を行っています。靱帯骨化症では骨代謝や生活習慣病の関与を精査した上で治療にあたっています。側弯症の患者さんも多く受診されています。手術数は約360件(2020年)と全国の大学病院でトップクラスの実績であり、大学病院ならではの難治症例も多く含まれます。頚椎手術における術式を考案してきた実績があり(棘突起縦割式椎弓形成術、正中進入内視鏡下頚椎椎弓切除術)、非常に多くの経験を有していると自負しております。
脳神経外科
対象疾患
脊髄腫瘍、キアリ奇形、硬膜動静脈廔、血管奇形など
特徴
脊脊髄腫瘍や血管に関わる疾患はとても繊細な操作による手術が必要です。東京大学脳神経外科は以下のような特徴を持っております。
- 先進的な診断技術
手術前の徹底的な生理学的検査や3次元的画像検査による病変の精査を行います。 - 手術支援システム
術中の蛍光色素・蛍光造影にて病変の正確な同定が可能になります。また術中の手足の運動・感覚を常時モニターすることにより可能な限り高度な機能温存を達成します。 - 高い手術技術
高倍率顕微鏡を用いて極めて精度の高い手術操作を行います。 - より良い治療のために
より侵襲の小さい治療を目指して細胞・遺伝子レベルの研究にも取り組んでおります。
このような高度な医療を用い、それぞれの病気に合わせた個別化医療を提供しております。脊椎脊髄センター内の連携・ネットワークの中で手術を含めた全ての治療オプションを検討し、もし手術が最も適切と考えられれば、我々の脳・脊髄外科のスペシャリストがベストを尽くして治療にあたります。
脳神経内科
特徴
頚椎症や腰部脊柱管狭窄症では歩行障害やしびれなどの感覚障害がみられますが、同じ症状でありながら別の疾患(例:パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、末梢神経障害など)であることがあります。また頚椎症や腰椎症でどの頸椎レベル・腰椎レベルが症状の原因であるか、レベル診断を詳細に行う必要があります。神経内科専門医が、診察や電気生理学的検査を屈指して筋力低下やしびれの鑑別疾患を行い、脊椎脊髄センター内での連携により最も適切と考えられる診療科での治療が行われるように最善を尽くします。神経伝導検査・誘発筋電図検査は年間約2800件(2019年度実績)、針筋電図は年間約360件(2019年度実績)行っており、日本臨床神経生理学会専門医の指導のもと詳細な診察とともにその症状の原因探索に最適な検査を行っています。
麻酔科・痛みセンター
特徴
急性期疼痛・慢性疼痛を診療の対象としていますが、脊椎脊髄センターの連携においては次のような取り組みをしています。
- 診断的・治療的神経ブロック
整形外科・脊椎外科、他診療科との連携の下、X線透視やエコーを用いて診断的神経ブロックや治療的神経ブロックを実施しています。 - 脊髄電気刺激療法(SCS)
脳神経外科との連携の下、脊椎術後の難治性疼痛や手術適応外の脊椎脊髄関連疼痛に対し、脊髄電気刺激療法を実施しています。 - 高周波熱凝固療法
椎間関節痛や仙腸関節痛に対し高周波熱凝固術を実施しています。 - 薬物治療
脊椎手術の術前、術直後、術後の疼痛に対し、整形外科と連携を図り薬物治療を実施しています。 - 認知行動療法
脊椎術後の慢性疼痛や手術適応外の疼痛について運動や教育的指導による疼痛治療を実施しています。
診療体制・受診方法
診療体制・受診方法は次の通りです。受診の際は、下記をご覧いただき、紹介状をご用意の上、当院予約センターよりご予約ください。
予約センターのご案内
整形外科・脊椎外科
担当
大島寧(チーフ)、谷口優樹、松林嘉孝、土肥透、加藤壯ほか
外来日・受診方法
お急ぎの場合は木曜午後「脊椎診」あての紹介状をご用意ください。
上記の特定の医師を希望される場合には医師名も記載し、火曜午前、水曜午前、木曜午前・午後など、各人の担当日の予約をお取りください。各人の担当日については、整形外科・脊椎外科 外来担当一覧をご覧ください。
整形外科・脊椎外科 外来担当一覧
脳神経外科
担当
高見浩数
外来日・受診方法
紹介状をご用意の上、月曜午後の脳腫瘍外来をご予約ください。
脳神経内科
担当
濱田雅(チーフ)、代田悠一郞(検査部・脳神経内科)、小玉聡、一般初診外来担当医
外来日・受診方法
火曜日を除く平日一般初診外来にて承ります。お急ぎの場合は月曜隔週の一般初診外来(濱田指定)あるいは木曜隔週の一般初診外来(小玉指定)あての紹介状をご用意ください。
脳神経内科 外来担当一覧
麻酔科・痛みセンター
担当・外来日
月:井上玲央/火:土田陸平/水:土田陸平/木:阿部博昭/金:井上玲央
受診方法
紹介状がない場合でも受診可能ですが、できるだけ紹介状をご用意ください。
診療実績について
脊椎手術件数(2023年度): 360件