摂食嚥下センター
摂食嚥下障害は、摂食や飲み込みに問題がある状態をいいます。医療技術の進歩による救命率の向上や社会の高齢化により、子供から高齢者まで幅広い年齢層で、先天性疾患や脳卒中、難病、悪性腫瘍などによる摂食嚥下障害の患者さんが増えています。
東大病院では、患者さんにより専門的かつ多角的に摂食嚥下障害の診療を提供するため、2021年4月に摂食嚥下センターを開設しました。耳鼻咽喉科・頭頸部外科、リハビリテーション科、口腔顎顔面外科・矯正歯科を中心に、老年病科、小児科、小児外科、脳神経内科など多くの診療科と連携しています。複数の診療科の医師や多職種の専門家がチームとなり多角的にアプローチすることで、患者さん一人ひとりの状態に応じた治療やリハビリテーション等を検討します。食べることは単なる栄養の補給にとどまらず、「食の楽しみ」「人との交流」など患者さんの生活の質に大きく寄与します。私たちは摂食嚥下の専門医療チームとして、東大病院に入院された患者さんやご家族の不安を和らげ、病状の改善につながる医療の提供を目指しています。
概要
診療体制
嚥下とは食べ物や飲み物を飲み込むという何気ない動作ですが、実際にはさまざまな器官が複雑に働き合っておこなわれており、加えて、食事の形状や食べる姿勢など多くの要因が「摂食嚥下障害」を引き起こします。摂食嚥下センターでは、主に入院中の患者さんを対象に、摂食嚥下に関する検査や訓練、助言などを行っています。他院で治療を受けられた患者さんで、当院での手術治療をご希望の方に対してのみ、手術治療の適応判断のため外来診療も行っています。手術治療目的以外の患者さんについては、診療を行っておりません。
入院中の方へ:医師、言語聴覚士、看護師、管理栄養士、薬剤師、歯科衛生士などの多職種が摂食嚥下診療に関わります。
手術治療の相談で外来受診を希望の方へ:耳鼻咽喉科・頭頸部外科の専門外来(気管食道外来)で摂食嚥下障害の患者さんの診察を行っています。(耳鼻咽喉科・頭頸部外科 気管食道外来について)
他の病院で治療を受けている患者さんの嚥下障害のフォローアップについてはお受けしておりません。嚥下障害に対する手術治療をご希望または検討されている患者さんは、外来にて相談させていただきます。
摂食嚥下センターで連携している診療科・部門は以下の通りです。
- 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
- リハビリテーション科・部
- 口腔顎顔面外科・矯正歯科
- 老年病科
- 小児科
- 小児外科
- 脳神経内科
- 病態栄養治療センター
- 看護部
- 薬剤部
治療方針
摂食嚥下障害にはさまざまな原因や症状があります。摂食嚥下センターでは様々な診療科の専門家が連携し、摂食嚥下障害をもつ患者さんに対して多角的な視点から評価します。個々の病態に応じた集学的かつ専門的治療およびリハビリテーションを提案し、よりよい医療の提供を目指します。
得意分野
子供から高齢者まで、さまざまな摂食嚥下障害に対する診療経験が豊富です。悪性腫瘍に対する化学療法や放射線治療、手術治療後の嚥下障害、脳卒中や神経筋疾患、脳腫瘍による嚥下障害などに対して、多角的・専門的に関わります。嚥下障害に対する手術治療(誤嚥防止手術、嚥下機能改善手術)も積極的に行っており、嚥下機能改善手術後のリハビリテーションも当院入院中に集中的に行います。
組織紹介
センター長: | 上羽 瑠美(摂食嚥下センター 准教授) |
副センター長: | 井口 はるひ(リハビリテーション科 講師) |
副センター長: | 兼岡 麻子(リハビリテーション部 言語聴覚療法主任) |
副センター長: | 後藤 多嘉緒(耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教) |
主な検査と説明
嚥下障害の病態評価や治療法の選択、効果判定などの目的に、嚥下造影検査や内視鏡下嚥下機能検査、嚥下圧検査(高解像度嚥下内圧検査)で詳細な解析と評価を行っています。さらに、国内でもわずかな施設でしか行っていない嚥下CT検査による4D画像(立体的動画)で嚥下動態を検証することもあります。
http://utokyo-ent.org/clinic/specialty-clinics/voice-and-swallowing/#ex1
http://utokyo-ent.org/activities/research/larynx-and-voice/
検査結果や患者さんの状態を総合的に判断して、摂食嚥下リハビリテーションの内容や、嚥下機能改善手術や誤嚥防止手術の適応および術式を決定します。
・内視鏡下嚥下機能検査
・嚥下造影検査
・嚥下圧検査(高解像度嚥下内圧検査)
・嚥下CT など
先進・特殊医療
- 摂食嚥下センターでは粘度計や食品物性測定器などの専門的な解析装置を保有しており、科学的検証に基づくとろみの指導などを取り入れています。
- 嚥下障害に対する手術治療と術後のリハビリテーションを行っています。日本では、嚥下関連手術とリハビリテーションを同一施設で行っている医療機関は非常に少ないです。
- 嚥下造影検査では、嚥下障害が重度の患者さんに対しては、誤嚥した場合でも肺の障害を起こしにくいような造影剤を病院の許可のもとで使用しています。
- 嚥下機能検査のvirtual reality化を進め、嚥下教育にも力を入れています。
http://utokyo-ent.org/activities/research/larynx-and-voice/
臨床研究
東京大学医学部附属病院では、患者さんにより専門的かつ多角的に摂食嚥下障害の診療を提供するために、嚥下障害で診療を受けた患者さんの診療データを用いた研究を行っております。
【研究課題】