呼吸器外科
呼吸器外科は肺がん、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、胸膜・胸壁腫瘍などの胸部腫瘍疾患の手術治療を行っています。気胸、その他手術治療が必要な良性胸部疾患に対しても手術治療を行っています。胸腔鏡やロボット支援(Da vinci)による低侵襲手術を積極的に行い、術後早期の機能回復に努めています。また東大病院は2014年より肺移植認定施設となり、2015年4月から2023年3月までに148名に肺移植を行いました。
以下の疾患については、当科では多数の方を治療しています。
- 原発性肺がんに対する外科治療を中心とした集学的治療 および胸腔鏡やロボット支援(Da vinci)による低侵襲手術
- 転移性肺腫瘍に対する外科治療を中心とした集学的治療 および胸腔鏡やロボット支援(Da vinci)による低侵襲手術
- 縦隔腫瘍、胸腺疾患に対する手術法(開胸、胸腔鏡、ロボット支援下)
- 自然気胸・その他の良性疾患や高齢者・低肺機能者に対する胸腔鏡手術
- 重症筋無力症に対する拡大胸腺全摘術
- 末期呼吸不全に対する脳死および生体肺移植
お知らせ
さらに詳しい情報を知りたい方は、以下のリンクをご参照ください。
概要
診療体制
- 科長(教授)〈臓器移植医療センター 副センター長〉 佐藤 雅昭 (平成11年卒)
外科専門医、呼吸器外科専門医 - スタッフ(講師) 此枝 千尋 (平成17年卒)
外科専門医、呼吸器外科専門医、移植認定医 - スタッフ(特任講師(病院)) 川島 光明 (平成19年卒)
外科専門医、呼吸器外科専門医 - スタッフ(助教) 豊川 剛二 (平成18年卒)
外科専門医、呼吸器外科専門医、日本ロボット外科学会専門医 (国内B)、がん治療認定医 - スタッフ(助教) 中尾 啓太 (平成22年卒)
外科専門医、呼吸器外科専門医 - スタッフ(助教) 叢 岳 (平成24年卒)
外科専門医、呼吸器外科専門医
治療方針
- 非小細胞肺がんに対する治療
肺葉切除・標準リンパ節郭清が原則ですが、術前肺門・縦隔リンパ節転移陽性診断例に対しては集学的治療ならびに拡大手術を考慮いたします。高齢者・有合併症例に対しては胸腔鏡下肺葉切除(VATS-lobectomy)を行います。胸壁・大血管浸潤例に対しては心臓血管外科と協力し、拡大切除を行います。 - 術前未診断肺内腫瘤(肺がん疑診)に対する治療
胸腔鏡下肺生検を行い、迅速病理診断の結果から肺がんであれば続けて肺がんに対する治癒手術を行います。このような早期の肺がんに対する手術の術後成績は非常に良好です。また2014年1月より当科では気管支鏡バーチャル3D肺マッピング(virtual-assisted lung mapping: VAL-MAP)法*を取り入れ、胸腔鏡下に触知困難な早期肺がん疑い病変の精密な切除を行っています。 - 胸腔鏡手術
自然気胸など良性疾患に対しては極力低侵襲である胸腔鏡手術による治療を行います。 - ロボット支援下手術(Da vinci)
肺がん、縦隔腫瘍に対してダ・ビンチ(Da vinci)を用い、胸腔鏡並みの低侵襲かつ繊細・正確な手術を行います。 - 転移性肺腫瘍
原発巣が治癒している事を条件として、肺転移に対して外科治療を行います。胸腔鏡による低侵襲手術を優先して行います。前述のVAL-MAP法*は転移性肺腫瘍の切除にも有効で、これまで切除困難だった5mm以下の小さな転移性肺腫瘍や化学療法後の残存小病変に対しても手術が可能となっています。肝臓転移合併例に対しては当院肝胆膵外科との協力の下に、肝臓・肺転移の両方を外科的切除します。 - 肺移植
末期呼吸不全の各種疾患に対して、脳死・生体肺移植、心肺同時移植を検討します。人工呼吸器やECMO装着状態の患者さんにも積極的に肺移植適応を検討しています。詳しくは当科ホームページをご覧ください。
**インジゴカルミンを用いるVAL-MAPは2018年3月より保険診療として実施可能となりました。さらに当科では、電磁気誘導気管支鏡ナビゲーションシステムを用いたVAL-MAPや、マイクロコイルにより肺深部のマーキングも併用する次世代VAL-MAP(VAL-MAP2.0)を開発しています。詳しくは当科ホームページをご覧ください。
得意分野
- 原発性肺がんに対する拡大切除・郭清
- 原発性肺がんに対する胸腔鏡下診断および胸腔鏡下あるいはダ・ビンチ(Da vinci)を用いた肺葉切除
- 転移性肺腫瘍に対する外科治療
- 胸腺腫・重症筋無力症に対する拡大胸腺全摘術
- 肺移植(脳死・生体)、心肺同時移植
対象疾患
- 原発性肺がん
- 転移性肺腫瘍
- 診断がはっきりしない肺内異常陰影
- 縦隔腫瘍、重症筋無力症
- 胸膜中皮腫、胸壁腫瘍
- 自然気胸、巨大肺嚢胞症
- 肺気腫(容量減量手術)
- 漏斗胸、胸壁腫瘍
※肺移植の適応疾患は当科ホームページをご覧ください。
先進・特殊医療
胸腔鏡下手術
肺・縦隔疾患に対する手術治療をテレビモニター観察下に内視鏡的に行う方法です。通常の開胸手術と比較すると低侵襲性である点が優れています。肺がんに対する肺葉切除・リンパ節郭清も本方式で可能です。
ロボット支援下手術
Da vinciを用いて、肺がんや縦隔腫瘍に対して胸腔鏡と同様の低侵襲かつ繊細で正確な手術を行います。
循環器疾患を合併する呼吸器疾患に対する呼吸器・心臓同時手術
手術治療を要する悪性肺・縦隔疾患患者に虚血性心疾患などの循環器疾患を合併した場合に、心臓手術と呼吸器手術を一期的に施行します。
末期呼吸不全に対する肺移植(脳死・生体)
間質性肺炎、肺気腫、肺動脈性肺高血圧症、リンパ脈管筋腫症、造血幹細胞移植後肺障害などの疾患による、内科的治療で改善が見込めない末期呼吸不全に対し脳死および生体肺移植を行うことがあります。また2022年より心肺同時移植実施施設としても認定を受けています。詳しくは当科ホームページをご覧ください。
触知困難肺結節に対する気管支鏡バーチャル3D肺マッピング(virtual-assisted lung mapping: VAL-MAP*)法を用いた精密胸腔鏡下縮小手術
手術から2日以内に局所麻酔下に気管支鏡を使って、肺表面の複数個所に少量の色素(インジゴカルミン)を噴きつけ、肺表面に「地図」を描くことで精密な手術を可能とする新しい方法です。詳しくは当科ホームページをご覧ください。
肺気腫に対する容量減少手術
肺気腫によって過膨張した肺容積を適度な肺切除を行うことによって、肺残気量を減少させ、横隔膜運動を適正化させ、呼吸機能を向上させます。