高度心不全治療センター

東大病院は重症心不全の“最後の砦”としての役割を果たすべく、関東甲信越及び北陸地方、さらには沖縄県までの大学病院及び地域の中核的医療機関と連携し、心臓移植や補助人工心臓(VAD)装着が必要な患者さんの受け入れを行っています。これまでに体外式・植込型VADを合計350例以上に装着し、心臓移植実施件数は2021年4月末の時点で国内最多の158人に上りますが、さらに250人以上の患者さんが当院を移植実施施設として待機しています。高度心不全治療センターは、2018年1月にオープンした新入院棟B 5階病棟を拠点として、心不全患者さんに対してわが国最高レベルの診療を提供できるよう努めております。また、近年は「心不全パンデミック」と言われ、高齢者の増加に伴い高齢心不全患者さんが急激に増えていますが、当院ではこのような患者さんにも幅広く対応しています。例えば、重症大動脈弁狭窄症のために経カテーテル大動脈弁植込術(TAVI)を施行された患者さんには心肥大がありますが、16%の患者さんに心アミロイドーシスを合併していたという報告があります。当院は心アミロイドーシスに対する治療薬であるタファミジス導入の認定施設でもあり、様々な基礎疾患との鑑別を進めながら慎重に対応しています。さらに、トランスレーショナルリサーチにも力を入れています。心不全の治療をする前に心筋DNA損傷の程度を定量評価することで治療に対する効果や病状の経過を高精度で予測できることや、拡張型心筋症において特定の遺伝子の病的変異の内容が予後規定因子となることなどを明らかとしてきました。たくさんの心不全患者さんを診療しながら、個人ごとの違いを考慮した最適な予防や治療法(プレシジョン・メディシン)の確立にも努めています。年齢や基礎疾患によらず、心不全でお困りの方はいつでもご相談下さい。

概要

診療体制

高度心不全治療センターは入院棟B5階を主病棟としています。病棟は34床からなる循環器内科・心臓外科の混合病棟です。循環器内科・心臓外科に加え、レシピエント移植コーディネーター、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士などからなるハートチームで診療にあたっています。

センター長 波多野 将(循環器内科/重症心不全治療開発講座)
副センター長 木下 修(心臓外科)

得意分野

  • 心臓移植
    わが国では2021年4月20日現在で583人の心臓移植が行われていますが、東大病院では158人と我が国最多の心臓移植を行っています。待機患者数は現在900人以上に上りますが、東大病院を実施施設として待機している患者は250人以上と、こちらも最多となっています。わが国における移植後の10年生存率は88.7%と、世界的に見て極めて優れています。
  • 補助人工心臓(VAD)
    東大病院ではこれまでにこれまでに体外式・植込型VADを合計350例以上に装着しております。わが国における植込型VAD装着後の2年生存率は89%と、心臓移植と同様に世界的に見て極めて優れています。現在我が国で使用可能な植込型VADはEVAHEART2,HeartMateⅡ,Jarvik2000,HVAD,HeartMate3の5機種ですが、当院では5機種全てが使用可能であり、患者さんの体格や心不全の状態に応じて個々の患者さんに最も適した機種を使用することができます。これまで植込型VADは保険上心臓移植の待機患者さんにのみ使用可能でしたが、2021年5月より心臓移植を前提としない植込型VADの使用が認められました(Destination Therapy : DT)。これにより、心臓移植の対象とならない患者さんであっても、一定の条件を満たせば植込型VADを装着することが可能となりました。当院ではDTの治験段階からDT治療を行っており、DTを行うことが可能な施設として認められています。
  • 心不全に対する薬物療法
    β受容体遮断薬,アンギオテンシン変換酵素阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬などの従来の心不全治療薬に加え、近年イバブラジン,アンギオテンシンネプリライシン阻害薬,SGLT2阻害薬などの新しい薬剤が相次いで心不全治療薬として承認されました。当院ではこれらの薬剤に対する使用経験も豊富に有しており、心不全患者さんに対して最適な薬物療法を行っています。
  • 心アミロイドーシスに対するビンダゲル導入
    希少疾患である遺伝性トランスサイレチン(変異型)アミロイドーシスの末梢神経障害の進行抑制に対して使用されてきたビンダケル®(一般名:タファミジスメグルミン)が、2019年に野生型および変異型トランスサイレチンによる心筋症へ適応拡大されました。トランスサイレチン型心アミロイドーシス症例に対してビンダケルが適正に使用されるために、日本循環器学会では、精度の高い診断のもと、適正な処方がなされるための施設要件、医師要件を定め、これらのすべての要件が満たされることをビンダケル投与導入の条件と定めました。当院ではビンダゲル処方施設・処方医の認定を受け、既に多くのビンダゲル導入経験を有しております。

対象疾患

拡張型心筋症・肥大型心筋症などの特発性心筋症や各種の二次性心筋症が中心となりますが、心不全は全ての心疾患の終末像ですので、全ての心疾患の患者さんは心不全を発症する可能性があります。高度心不全治療センターでは、基礎疾患によらず全ての心不全の患者さんの診療を行います。

先進・特殊医療

ハートシート

自家骨格筋芽細胞をシート状に調製して心臓表面に移植するハートシートについて、東大病院では治験段階から開発に参画してきました。本治療については2015年11月に保険収載されましたが、現在は条件及び期限付承認であり、市販後調査において60例における治療の有効性の確認及び既存治療を行う群(120例)との比較で生存率における優位性の確認を行うことが条件となっております。当院も市販後臨床試験に参加しており、ハートシート移植を行うことが可能です。

外来担当一覧

循環器内科では月曜日~金曜日まで毎日午前中、心臓外科では月曜日~木曜日の午前中及び月曜日・木曜日の午後に初診の患者さんの診察を受け付けていますが、心不全の患者さんについては水曜日午前の重症心不全専門外来(担当:波多野)の予約をお取りください。
外来担当一覧

診療実績について

循環器内科心不全チームの治療実績および心臓外科実績をご参照下さい。 循環器内科心不全チームの治療実績はこちら
心臓外科実績はこちら

センター長

波多野 将(はたの まさる)

波多野 将(はたの まさる)

プロフィール

リンク

受診予約のご案内

【予約センター】10時00分~17時00分(平日)

TEL:03-5800-8630