口腔顎顔面外科・矯正歯科 口唇口蓋裂センター

口腔顎顔面外科・矯正歯科 口唇口蓋裂センターは、口唇口蓋裂をはじめとした口やあご、顔の生まれつきの形の異常を治すことを目的として設立されました。患者さんが生まれる前から大人になってからも、あらゆる治療や相談に対応できるように、日々の診療に取り組んでいます。患者さんやご家族に寄り添いながら、医師や歯科医師、矯正歯科医、言語聴覚士、看護師、歯科技工士、歯科衛生士などの専門家がチームを組んで治療をおこなっています。また、再生医療や先進医療など、最先端の医療技術も取り入れ、最良、最適、最新の治療を提供できるよう、努力しています。

概要

診療体制

口やあご、顔の生まれつきの形の病気の治療は、哺乳指導、小児医療、口の中や顔面の細かな手術手技、言葉の訓練、中耳炎の治療、歯科や矯正歯科の手技、顔面の骨切りの手技、遺伝相談、など、様々な専門的アプローチを必要とします。顎口腔外科・口唇口蓋裂センターでは、医師や歯科医師、矯正歯科医、言語聴覚士、看護師、歯科技工士、歯科衛生士など専門家が常勤していて、毎日、患者さんを診ています。また、東大病院の耳鼻科や麻酔科、産科、小児科、小児外科、リハビリテーション科、とチームを組んでいて、患者様が複数の治療施設に通わなくて済むように、体制を整えています。

外来担当一覧

  • 人工膝関節外来
     月曜日 午前 担当 西條 英人
  • 専門外来
     月曜日 午後 担当 末永 英之、西條 英人、星 和人、大久保 和美
  • 外来
     月曜日 午前 担当 星 和人
     木曜日 午前 担当 星 和人
     ※その他の曜日でも対応できますので、ご相談ください。

治療方針

さまざまな専門家が、あらゆる方向から病気と向き合い、最善、最新、最適な治療を心がけます。生まれつきの形態の異常をもつ患者さんの治療には、長い期間を要することがあります。患者さんやご家族が、治療の途中で困ることがないよう、また、途中から治療を希望される患者さんにも、安心して治療が受けられるように、患者さんとのコミュニケーションを大切にします。また、患者さんの小さいころからの貴重な記録や資料も大切に保管いたします。

得意分野

  • 【出生前カウンセリング】
    妊婦検査で超音波検査(エコー検査)が広く行われるようになり、赤ちゃんが生まれる前に口唇口蓋裂の診断ができるケースが増えてきました(出生前診断)。当科では、出生前診断を受けたご家族に対し、カウンセリングとして専門の医師が、口唇口蓋裂の治療の流れや、哺乳のやり方、生活のしかたなどについてご説明します。
  • 【出生後のケア】
    ご家族がまず心配されるのは、ミルク(哺乳)の問題です。赤ちゃんにあった吸い口(乳首)を選びます。赤ちゃんの裂の形によっては、口蓋(口の天井の部分)のかたちにあったプレート(哺乳床)をつくり、ミルクを吸いやすくすることもできます。また、初回の手術までの間、プレートの形を調整することにより、上あごや鼻の形を整え、鼻への支柱を作ることによって、鼻の形を整え、手術をやりやすくします。(NAM(ナム)プレート、図1)。

    図1:NAMプレート
  • 【唇の手術(口唇形成術)】
    唇の裂については、生後3ヵ月ぐらいで手術を行います。このころには、赤ちゃんも体重も生まれた時の2倍ぐらい(約5-6 kg)に大きくなっていますので、手術を受けやすくなっています。唇の手術(口唇形成術、図2、3)では、唇の裂をとじてバランスのとれた自然な唇の形を作ります。口のまわりの筋肉の輪(口輪筋)を作り直し、哺乳をしやすくし、鼻の位置や形を整えます。

    図2:口唇形成術(片側)

    図3:口唇形成術(両側)
  • 【口蓋の手術(口蓋形成術)】
    口の天井の部分で、口を閉じている状態では舌と接する部分が口蓋です。口蓋は、口と鼻を隔てていて、空気や飲み物、食べ物が口から鼻へ漏れるのを防いでいます。言葉の音を作る(発音)の時にも重要な役割を果たします(図4)。唇、歯ぐきから口蓋へと裂が及んでいる赤ちゃんには、発語がはじまる前の1歳から2歳ごろに口蓋の裂を閉じる手術(口蓋形成術、図5)を行います。言葉がどんどん出てくるこの時期に、自然な発音をしやすくしてあげるのがこの手術の目的です。なお、裂の状態によっては、上あごの成長に、影響がでにくくなるよう、口蓋形成術を後方と前方で、2回に分けて行う場合もあります(口蓋形成術2回法)。

    図4:口蓋の役割(http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~saiken/desc.htmlより引用)

    図5:口蓋形成術
  • 【言葉の訓練】
    口蓋や歯茎に裂があると、口蓋裂特有の発音を身に付けてしまうことがあります。そのため口唇形成術や口蓋形成術を行うお子さんには、手術の前から言語聴覚士による定期的な検査を受けていただき、必要に応じて発音の練習を行います(言語訓練、図6)。訓練を開始する時期は4歳半から5歳くらいを目安としています。また、幼児期に適切な訓練を受けられなかった大人方の訓練も行っています。鼻に抜けるような発声(開鼻声)が残るようであれば、のどの奥を狭くするような手術(咽頭弁形成術)を追加することもあります。

    図6:言語訓練
  • 【歯ぐきの手術(顎裂部骨移植)】
    唇からつながる裂が歯ぐきへと及んでいる場合(顎裂)、顎裂の部分には歯が生えてきません。また、歯ぐきの裂が残ったままでは、歯を連続して並ばせることができません。そのため、当科では、小学校に入る前を目安に、腰骨からとってきた骨を、歯ぐきの裂に移植し、歯ぐきをつなげる手術を行います(顎裂部骨移植)。小学校に入る前の時期を目安にしているのは、前歯の永久歯は生えてくる直前の時期でもあり、歯が生えてくる道筋を作ることが出来ることと、前歯の歯並びを整えることが出来るからです。体重によっては、腰骨を取る部位を検討することもあります。
  • 【歯科矯正による治療】
    口唇口蓋裂の患者さんは、裂の影響で歯並びが乱れていることが多く、また、下あごに比べて上あごが小さく、下の歯が上の歯の前にある反対咬合(受け口)となる傾向があります。そのため、多くの患者さんが歯科矯正治療を行います。顎裂部骨移植を行ったお子さんは、術後に永久歯の前歯に対して矯正治療を開始することがあります。全ての永久歯に器具をつけておこなう本格的な矯正治療は、永久歯が生えそろう12~14歳頃から行い、骨の成長が落ち着く16~18歳頃には終了しているのが一般的です(歯列矯正)。上下のあごのバランスが大きくずれている場合には、骨の成長が終わるころを見計らって、手術を併用した矯正治療によりあごの骨のバランスを整えます。
  • 【あごの形の手術(顎矯正手術)】
    上あごと下あごの骨の成長にアンバランスがある患者さんに対しては、骨の成長がおわる16歳~20歳頃に、上あご、下あご、あるいは両方の骨切り手術(顎矯正手術)を行います。手術の前には、準備のための矯正治療を行い、手術後は、微調整のための矯正を行います。上あごと下あごのアンバランスが大きい時には、上あごに延長器をつけて、上あごの位置を2週間ぐらいかけて徐々に変えてゆくこともあります(上顎骨延長器、図7)。あごの変形の状態により、顎角(えらの部分)やオトガイの形を修正する手術を加えることがあります。

    図7:上顎骨延長器
  • 【唇や鼻の修正(青年期)】
    口唇口蓋裂による鼻の変形がとても気になる場合は、小学校に入学する前などに鼻の形を直す手術を行うこともあります。しかし、多くの場合は、体の成長が落ち着くのを待って、修正手術を行います。女性の患者さんは15~16歳以降、男性では17~18歳以降です。口唇口蓋裂の患者さんでは鼻中隔弯曲を伴います。鼻の変形が強い場合には、弯曲している鼻中隔軟骨を一旦切除して、形を整えて再度移植します(鼻中隔軟骨移植、図8)。鼻変形が強い場合には、肋軟骨や腸骨(腰の骨)を用いて鼻の形態を整えることもあります(カンチレバー腸骨移植)。また、上唇に対して下唇が出ている感じが強い場合には、下唇の一部を上唇に移植する手術を同時に行うことがあります(下唇反転皮弁術、図9)最近では、少量の耳介軟骨を採取して再生軟骨を作製することができるようになりました。肋軟骨や腸骨の代わりに再生軟骨使用して、患者さんの負担を少なくする試みを行っています(再生軟骨、図10、11)。

    図8:鼻中隔軟骨移植


    図9:下唇反転皮弁術


    図10:再生軟骨


    図11:再生軟骨の治療の流れ

対象疾患

口唇口蓋裂のほか、鰓弓症候群(トリチャー・コリンズ症候群、ピエール・ロバン症候群など)、頭蓋縫合早期癒合症、巨舌症、血管奇形(血管腫・リンパ管腫)・腫瘍、などです。生まれつき、口や歯、あご、顔面に形の異常がある病気全般に対応しますので、お気軽にご相談ください。

先進・特殊医療

実物大の頭蓋骨モデルによる手術計画

術前にCT画像から3次元立体モデルを作り、骨切りをしたり、骨を移植する手術のシミュレーションを行ないます。

再生軟骨による鼻修正

私たちは、鼻の修正に使える、3次元再生軟骨を世界に先がけて開発しました。これまでは、腰骨から採ってきた骨を5cmぐらいのこん棒型に削って移植し、治療してきましたが、腰にできた手術の創が目立ってしまう、硬い鼻になってしまう、などといった課題がありました。われわれは、耳の裏を1-2cm切開して耳の軟骨を少量採り、培養して再生軟骨を作製することに成功しました(再生軟骨の治療の流れ、図11)。手術の創が小さくて済む、柔軟な鼻になる、などといった効果が期待されます。現在、臨床試験(治験)を行っています。国から承認が下りれば、多くの患者さんに使っていただくことが可能となります。

主な検査と説明

患者さんの状態によって、以下の検査を行っていただくことがあります。

  • レントゲン撮影
    歯やかみ合わせ、あごの骨、などの異常を判定します。1回の撮影は1分以内に終わります。
  • CT撮影
    あごや顔面の骨の形や状態を判定します。1回の撮影は10分以内で終わります。
  • MRI撮影
    骨のほか、皮膚や軟骨、舌、唾液腺や筋肉、血管などの状態も評価できます。1回の撮影に60分程度かかります。
  • 歯型印象模型
    歯型をとって、歯の並び方やかみ合わせを評価します。
  • 鼻咽腔ファイバー検査
    鼻の奥にファイバーを入れて、喉の入り口の部分を検査します。これにより、発音の状態などをチェックすることができます。検査の際には、鼻から局所麻酔をして、患者さんのご負担を和らげます。

診療実績

当センターは2016年11月より顎口腔外科・歯科矯正歯科の中に新設されました。以下の診療実績は当センターが設置される前の顎口腔外科・歯科矯正歯科における2015年度の治療実績です。

  • 口腔顎先天異常 入院患者 79人 外来患者 50人
  • 顎変形症 入院患者40人 外来患者33人
  • 口唇形成術 39件
  • 口蓋形成術 15件
  • 顎裂部骨移植 26件
  • 顎骨骨切術 27件

センター長

西條 英人(さいじょう ひでと)

西條 英人(さいじょう ひでと)

プロフィール

受診予約のご案内

【予約センター】10時00分~17時00分(平日)

TEL:03-5800-8630