子宮腺筋症外来

東京大学医学部附属病院・女性診療科・子宮腺筋症外来では、子宮腺筋症と診断され、強い月経痛・月経量増加・月経時以外の出血・不妊・流産などの症状でお困りの方を対象として診療を行っています。
不妊症、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症の治療を専門分野としている産婦人科医師が診療にあたります。必要に応じて、各専門外来(子宮内膜症外来・不妊外来・体外受精外来・不育症外来・周産期外来など)とも連携しながら診療を行います。

なお当院では、厚生労働省の先進医療という制度を用いて、子宮腺筋症の病巣部分のみを切除し、子宮を温存する術式である「子宮腺筋症病巣除去術」を行っています。
この手術は保険適応がありませんが、東大病院では先進医療「子宮腺筋症病巣除去術」の認定施設として行っております(2024年8月現在)。

受診にあたり、必要なもの

東京大学医学部附属病院・女性診療科・子宮腺筋症外来の初診時には、子宮腺筋症外来あて紹介状それまでにMRI撮影をされている場合は、画像のご持参をお願いいたします)が必要となります。お手数ですが、超音波のみではなく、MRIでの診断が必要であることをおかかりの担当医にご説明いただけますと幸いです。

治療に関して

治療には大きくわけて、保存的治療(薬物治療)と外科的治療があります。

保存的治療

  • 疼痛・過多月経
      – 鎮痛剤(内服薬)
      – GnRHアゴニスト(注射薬、点鼻薬)
      – 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(内服薬)
      – ジエノゲスト(内服薬)
      – 子宮内黄体ホルモン放出システム(小さな器具を子宮内留置します)
  • 不妊症
      – 一般不妊治療
      – 体外受精・胚移植

外科的治療

  • 先進医療 子宮腺筋症病巣除去術
  • 子宮内膜症灼術(マイクロ波子宮内膜アブレーション)
  • 子宮全摘術(腹腔鏡下または開腹)

患者様一人ひとりに合わせた、治療法の選択をおこなってまいります。

外来担当医師

廣田 泰
松尾 光徳
平岡 毅大
福井 大和
平塚 大輝

外来日

初診:木曜 午前
再診:木曜 午前

子宮腺筋症とは

子宮腺筋症は30代後半から50代にかけて多い疾患で、子宮内膜に類似した組織が子宮の筋層の中にできる病気です。以前より、子宮内膜症と同等の疾患として扱われており、内性子宮内膜症と扱われてきましたが、近年、子宮内膜症との薬物療法に対する反応が異なることが示唆されており、独立した疾患名として子宮腺筋症と呼称されています。子宮腺筋症の診断はMRIおよび超音波検査で診断し、最終的には摘出標本の病理診断で確定します。その発生頻度は、どのような疾患で摘出された子宮を検索したのか、どのような病理学的診断基準が用いられたかなどに依存しているため、子宮摘出標本の20~60%と報告によって大きくばらつきがあります。子宮腺筋症の病変が大きくなると、強い月経痛・月経量増加・月経時以外の出血などの自覚症状を引き起こし、不妊を合併することもしばしばあります。

子宮腺筋症病巣除去術とは

子宮腺筋症の病巣部分のみを切除し、子宮を温存する術式です。子宮腺筋症による疼痛・出血などの症状緩和に優れた効果があります。
子宮の温存・将来的な妊娠・出産を希望する方や、薬物療法による症状のコントロールが不良な方(薬物療法の効果が不十分、副作用で治療継続が困難、など)や、挙児努力/不妊治療をしているものの流産や早産になってしまう方が対象となります。
この手術は保険適応がありませんが(2024年8月現在)、東大病院では先進医療『子宮腺筋症病巣除去術』の認定施設として行っております。また、本手術のメリットやデメリット、有効性や安全性について明らかにするための取り組みにも力を入れております。
手術を受けられた方は、術後の妊娠中の合併症の可能性があることから、高次医療機関での管理が望ましいと考えております。
東京大学附属病院では、子宮腺筋症を合併する方の不妊治療・手術療法・周産期管理・分娩に関する診療の全ての管理を一貫して行うことが可能です。また既に他院にて不妊治療等を行われている方は、病院同士で連携をしつつ手術を行うことも可能です。
子宮腺筋症の病状や経過によって本手術の適応となるかは個別に検討をする必要があります。ご興味・ご希望のある方はご相談ください。

当外来で行っている臨床研究

【研究1~3】(ここでの子宮内膜症とは、子宮腺筋症を含みます)

  1. 各種薬物療法が子宮内膜症の病変と子宮内膜症による症状に与える効果
  2. 各種薬物療法が子宮内膜症の手術療法後再発を予防する効果
  3. 手術療法が女性生殖機能に与える影響
  • 対象:1999年以降に東大病院女性診療科・子宮内膜症外来および子宮腺筋症外来を受診した方すべて。
  • 方法:後ろ向きカルテ調査で、その後の予後(病変の変化、症状の変化、生殖機能への影響)を解析します。

【研究4】月経血に着目した子宮内膜症の発生機序に関する基礎研究

  • 対象:東京大学医学部附属病院・女性診療科の外来へ通院中の方で、月経を有する方。
  • 方法:本研究にご参加頂ける方に、月経血のご供与をお願いしています。月経血中に含まれる細胞を用いて、その細胞の特徴や生理活性物質の発現を調べます。子宮内膜症の発生に関わる因子・細胞群を同定し、子宮内膜症への新たな治療戦略の開発を目指して行っている研究です。

【研究5】ヒト子宮組織および細胞を用いた着床マーカーの研究

  • 対象:東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科を受診され、研究の説明を受け研究に参加することに同意いただいた不妊患者さん。
  • 方法:子宮内膜組織診・子宮頸部細胞診の際に、その検体の一部を研究に使用します。参加いただいた方に侵襲がおよぶことはなく、診断や治療に影響することもありません。
  • 目的:子宮頸部・子宮内膜の組織・細胞を用いて、細胞免疫学的特徴・遺伝子発現プロファイル・生理活性物質を調べることで、着床マーカーの同定をめざしています。

受診予約のご案内

【予約センター】10時00分~17時00分(平日)

TEL:03-5800-8630