子宮腺筋症外来
東京大学医学部附属病院・女性診療科・子宮腺筋症外来では、
『子宮腺筋症と診断されている方で、強い月経痛・月経量増加・月経時以外の出血・不妊などの症状でお困りであり、今後の妊娠希望あるいは子宮温存の希望がある方』を対象として診療を行っています。
これまで当科では、子宮腺筋症の患者さんを子宮内膜症外来という専門外来で主に診療してきました。子宮内膜症外来受診の患者さんの10~20%が子宮腺筋症をお持ちであり、子宮腺筋症の方には妊娠の希望や子宮温存の希望に合わせた個別対応が必要であることから、子宮内膜症外来と併設して子宮腺筋症外来を新たに設けました。不妊症、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症の治療を専門分野としている産婦人科医師が診療にあたります。子宮腺筋症の症状でお悩みの方で、今後の妊娠希望をお持ちの方はぜひお越しください。必要に応じて、子宮内膜症外来・不妊外来・体外受精外来・周産期外来などの他の専門外来とも連携しながら診療を行っていきます。なお当院では、厚生労働省の先進医療という制度を用いて子宮腺筋症核出術を行っています。
受診にあたり、必要なもの
東京大学医学部附属病院・女性診療科・子宮腺筋症外来の初診時には、子宮腺筋症外来あて紹介状(できる限りMRI画像のご持参をお願いいたします)が必要となります。お手数ですが、超音波のみではなく、MRIでの診断が必要であることをおかかりの担当医にご説明いただけますと幸いです。
治療に関して
治療には大きくわけて、保存的治療(薬物治療)と外科的治療があります。
保存的治療
- 疼痛・過多月経
– 鎮痛剤(内服薬)
– GnRHアゴニスト(注射薬、点鼻薬)
– 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(内服薬)
– ジエノゲスト(内服薬)
– 子宮内黄体ホルモン放出システム(小さな器具を子宮内留置します) - 不妊症
– 体外受精・胚移植
外科的治療
- 子宮腺筋症核出術
(先進医療:高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術) - 子宮内膜症灼術(マイクロ波子宮内膜アブレーション)
- 子宮全摘術(腹腔鏡下または開腹)
患者様一人ひとりに合わせた、治療法の選択をおこなってまいります。
外来担当医師
廣田 泰
原口 広史
松本 玲央奈
松尾 光徳
赤枝 俊
田中 智基
大村 恵理香
外来日
初診:火・木曜 午前
再診:木曜 午前
子宮腺筋症とは
子宮腺筋症は30代後半から50代にかけて多い疾患で、子宮内膜に類似した組織が子宮の筋層の中にできる病気です。以前より、子宮内膜症と同等の疾患として扱われており、内性子宮内膜症と扱われてきましたが、近年、子宮内膜症との薬物療法に対する反応が異なることが示唆されており、独立した疾患名として子宮腺筋症と呼称されています。子宮腺筋症の診断はMRIおよび超音波検査で診断し、最終的には摘出標本の病理診断で確定します。その発生頻度は、どのような疾患で摘出された子宮を検索したのか、どのような病理学的診断基準が用いられたかなどに依存しているため、子宮摘出標本の20~60%と報告によって大きくばらつきがあります。子宮腺筋症の病変が大きくなると、強い月経痛・月経量増加・月経時以外の出血などの自覚症状を引き起こし、不妊を合併することもしばしばあります。
子宮腺筋症核出術について
日本産科婦人科学会・産婦人科外来診療ガイドラインには、子宮全摘術が根治療法であると記されております。しかしながら実際には、子宮全摘を望まない子宮腺筋症の患者さんが多く存在しており、子宮温存を目的とした子宮腺筋症治療が必要になっています。現在の薬物療法は治療効果や副作用の点において限界があるため、症状軽減と子宮温存を目的として子宮腺筋症の病変部分だけを切除する、子宮腺筋症核出術という手術が行われるようになりました。2005年には『高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術』が厚生労働省の先進医療として認められています。当院はこの先進医療の認定施設となっており、子宮腺筋症核出術を先進医療の制度を用いて行っています。
当外来で行っている臨床研究
【研究1~3】(ここでの子宮内膜症とは、子宮腺筋症を含みます)
- 各種薬物療法が子宮内膜症の病変と子宮内膜症による症状に与える効果
- 各種薬物療法が子宮内膜症の手術療法後再発を予防する効果
- 手術療法が女性生殖機能に与える影響
- 対象:1999年以降に東大病院女性診療科・子宮内膜症外来および子宮腺筋症外来を受診した方すべて。
- 方法:後ろ向きカルテ調査で、その後の予後(病変の変化、症状の変化、生殖機能への影響)を解析します。
【研究4】月経血に着目した子宮内膜症の発生機序に関する基礎研究
- 対象:東京大学医学部附属病院・女性診療科の外来へ通院中の方で、月経を有する方。
- 方法:本研究にご参加頂ける方に、月経血のご供与をお願いしています。月経血中に含まれる細胞を用いて、その細胞の特徴や生理活性物質の発現を調べます。子宮内膜症の発生に関わる因子・細胞群を同定し、子宮内膜症への新たな治療戦略の開発を目指して行っている研究です。
【研究5】ヒト子宮組織および細胞を用いた着床マーカーの研究
- 対象:東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科を受診され、研究の説明を受け研究に参加することに同意いただいた不妊患者さん。
- 方法:子宮内膜組織診・子宮頸部細胞診の際に、その検体の一部を研究に使用します。参加いただいた方に侵襲がおよぶことはなく、診断や治療に影響することもありません。
- 目的:子宮頸部・子宮内膜の組織・細胞を用いて、細胞免疫学的特徴・遺伝子発現プロファイル・生理活性物質を調べることで、着床マーカーの同定をめざしています。