着床外来

着床外来は、生殖補助医療(ART)で胚移植を行ってもなかなか妊娠に至らない方を対象に、子宮の状態に関して検査を行い、原因を調べたり治療をご提案したりする外来です。通常、ホルモン製剤を使用して胚移植の際と同じような子宮の状態に調節して検査を行い、ご妊娠のためにできる治療をご提案させていただいています。

着床不全とは

卵と精子が出会って受精し受精卵として発育した後(胚と呼びます)、胚が子宮内で子宮と接着し一体となることを着床と呼びます。無事着床すると、胎児の発育に不可欠な胎盤が形成され、胎児の発育が進んでいきます。
生殖補助医療(ART)で複数回胚を移植してもなかなか妊娠に至らない状態を着床不全と呼びます。
一見特に目立った子宮や卵巣の病気のない方でも着床不全に至ることがあり、難治性不妊とされています。

着床外来での診療

着床不全の原因は、胚の問題・子宮の問題・両者の相互作用の問題に分けられます。
当外来は子宮の問題・両者の相互作用の問題についての外来となります。
ご妊娠いただけるよう、有効であると考えられている子宮に関する各種検査を幅広く行い、できる治療をご提案させていただいています。
着床外来での診療が終わった後は、胚移植による妊娠を目指す形となります。

【外来日】 木曜日 午前 に行っております。(初診、再診)

【着床外来でのスケジュール】

● 初診時に各種検査をご紹介し日程の調整とホルモン製剤の処方を行います。
● 検査の周期においては避妊をしてください。
● 詳細は外来にてご案内いたします。

検査

1.MRI検査(cine MRI検査)

子宮や卵巣の全体像を撮影する画像検査です。子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮奇形などの病変がないか確認します。また、子宮では月経期や排卵期に小さな蠕動運動が観察され、着床期にはその頻度が減弱します。cine MRI検査という撮影方法により、着床期の蠕動運動の様子を確認します。
提携先の画像健診クリニックにて、子宮内膜組織診などの検査を行う日の前日(水曜日)に行っています。当日、検査前4時間程度は食事をお控えください。また、体内に金属・電子機器が入っている場合や閉所恐怖症の場合は検査を受けられないことがあります。

2.子宮内膜の検査

(1)子宮内膜組織診
子宮内膜組織を採取し、顕微鏡で状態を観察する病理学的検査です。
着床期に検査を行い、子宮内膜の状態の観察や炎症の有無(CD138検査)を確認します。
子宮内膜にCD138というタンパク質が認められた場合、慢性子宮内膜炎の可能性が考えられます。
CD138が陽性だった場合、抗生剤治療を行っています。

(2)子宮内フローラ検査
子宮内腔に存在する微小な細菌のバランスの状態(細菌叢、フローラ)を調べます。
フローラとは、身体にいる細菌の分布・集合体のことで、腸内や皮膚、口の中など身体の中の様々な部位に存在します。子宮内はこれまで無菌だと考えられてきましたが、近年細菌叢(フローラ)が存在することが判明しました。この子宮内フローラが異常を来すことで、妊娠率が低下することが、報告されております。
子宮内腔の細菌のうち90%以上を乳酸菌が占める状態を、良い状態と判断しています。
子宮内フローラが悪い状態だった場合、抗生剤治療や乳酸菌製剤の使用が選択肢となります。
自由診療もしくは先進医療として行っています。

(3)子宮内膜受容能検査(ERA)
子宮内膜が胚の着床に最も適した状態となる時期(受容期)を評価する検査です。
本検査では、着床に関与する約230個の遺伝子の子宮内膜における発現を解析し、子宮内膜が受容期となるタイミングを判定します。得られた検査結果に基づき、必要に応じて胚移植の時期を調整します。
自由診療もしくは先進医療として行っています。

3.血液検査

(1)ネオセルフ抗体検査
ネオセルフ抗体は自分を攻撃してしまう自己抗体というタイプの抗体で、これにより血が固まりやすくなり、血栓症や不妊症、不育症(流産を繰り返す状態)の原因になるのではないかと研究が進められています。
抗体陽性の場合は低用量アスピリン(血液をサラサラにするお薬)を使用することで妊娠率が上昇する可能性があるとされています。
自由診療として行っています。

(2)その他
着床期におけるホルモンの状態や貧血の有無などを確認します。

4.子宮鏡検査

子宮内に子宮鏡という内視鏡を使用し、子宮内腔に病変がないか視覚的に観察する検査です。
子宮内膜ポリープや子宮筋腫、慢性子宮内膜炎などの着床不全の原因となる所見がないか確認します。
検査前に感染症検査(B型肝炎・C型肝炎・梅毒)を行います。
基本的に月経後から排卵までの間に検査を行います。月曜日の午後に行います。

【検査当日の流れ(血液検査/子宮内膜の検査)】
● 子宮内や骨盤内の感染を引き起こす可能性があるため、抗生剤の内服をしていただきます。
● 外来再診受付機にて再診手続き後、血液検査がある場合は血液検査を行った後、女性診療科の外来までお越しください。問診を行った後、内診台で検査を行い(数分程度)、診察は終了となります。なお、診察後よりホルモン補充は終了となり、2-3日後に生理が来ます。

【検査当日の流れ(子宮鏡)】
● 検査は中央診療棟2「⑭内視鏡」でおこないます。通常の女性診療科の外来ではありません。
● 外来再診受付機にて再診手続き後、⑭内視鏡受付までお越しください。検査の都合上、予約時間より遅れての開始となることがありますのでご了承ください。
● 子宮内や骨盤内の感染を引き起こす可能性があるため、抗生剤の内服をしていただきます。
● ご不明な点がございましたら、内視鏡受付(Tel:03-3815-5411 内線34140)まで御連絡ください。

【検査後の注意点(子宮内膜の検査/子宮鏡)】
● 検査後に出血やおりものが増えますので、ナプキンを持参してください。
● 当日の入浴はおやめください。
● 帰宅後より強い腹痛、38℃以上の発熱、多量の出血、悪寒や気分不良がある場合にはご連絡下さい。
 Tel:03-3815-5411〈東京大学医学部附属病院 代表〉
 (9-17時:女性診療科外来、17-9時:救急外来)

受診にあたり、必要なもの

● 当院を初めて受診される方
かかりつけの不妊治療を行っている病院・クリニックからの紹介状が必要になります。下記の紹介状のフォーマットをプリントし、かかりつけのご担当医にご記入いただいて着床外来の初診時にご持参いただくことをお勧めいたします。

● 当院着床外来へおかかりの方
IVF外来の担当医に着床外来の受診希望の旨をお伝えください。担当医が予約をお取りいたします。

外来担当医師

廣田 泰
松尾 光徳
平岡 毅大
平塚 大輝
大嶋 幸太郎
加藤 興風
木下 真由
土井 裕美子

研究へのご協力のお願い

着床に関しては未だわかっていないことが多く、着床不全の検査や治療は発展途上にあります。そのため、当院では複数の医療機関と協力しながら研究も行っています。研究においては、患者様の診療を最優先とし、追加で負担がかかることがないよう、診療の検査で採取した検体の残余を用いるなど最大限配慮致しております。患者様ご自身の治療にすぐに役立てることは難しいのですが、将来不妊症に悩む方を少しでも減らすべく、ご協力いただけますと幸いです。なお、研究へ参加されない場合でも、同じように通常の診療をお受けいただくことができ、不利益を被るということはございません。

【研究1】生殖の生理と病理に関する包括的後方視的研究

  • 対象:1999年以降に東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科・女性外科を受診された患者さん。
  • 方法:後ろ向きカルテ調査で、その後の予後(不妊検査・治療内容、妊娠の有無、妊娠の転機など)を解析します。

【研究2】ヒト着床障害の分子生物学的異常に関する網羅的研究

  • 対象:東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科を受診され、研究の説明を受け研究に参加することに同意いただいた不妊患者さん。
  • 方法:子宮内膜組織診・子宮頸部細胞診・子宮鏡検査・血液検査・手術の際に、その検体の一部を研究に使用します。通常診療で必要な検査や治療で得られた検体の残余や同時に採取した血液を研究に使用するため、診断や治療に影響することはありません。
  • 目的:子宮の組織・細胞、血液からDNAやRNAを抽出して遺伝学的情報を解析し、着床に必要な物質や重要な遺伝子について解明することを目指しています。

【研究3】ヒト子宮組織および細胞を用いた着床マーカーの研究

  • 対象:東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科を受診され、研究の説明を受け研究に参加することに同意いただいた不妊患者さん。
  • 方法:子宮内膜組織診・子宮頸部細胞診・子宮鏡検査・血液検査・手術の際に、その検体の一部を研究に使用します。通常診療で必要な検査や治療で得られた検体の残余同時に採取した血液を研究に使用するため、診断や治療に影響することはありません。
  • 目的:子宮の組織・細胞、血液を用いて、たんぱく質や脂質、細菌叢などを解析し、着床に必要な物質や調節機構について解明することを目指しています。

【研究4】子宮内膜受容能検査(ERA)、子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE)、子宮内細菌叢検査(子宮内フローラ検査)、子宮内膜刺激術(SEET法)、二段階胚移植法、タイムラプスが胚移植に与える影響に関する研究

  • 対象:東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科を受診され、研究の説明を受け研究に参加することに同意いただいた不妊患者さん。
  • 方法:当院では、子宮内細菌叢検査(子宮内フローラ検査)に着目して研究を行っています。外来で子宮内フローラ検査を行い、検査結果により抗生剤治療やラクトバチルス腟錠の投与を行います。子宮内フローラ検査は、先進医療として、保険診療と併せて行うことができます。
  • 目的:ART治療(生殖補助医療技術)において、子宮内フローラ検査を用いることによって、ART治療成績がどのように変化するかを評価することを目指しています。

【研究5】着床不全に対するβ2GPIネオセルフ抗体検査の有用性の検討

  • 対象:胚移植を2回以上行っても妊娠に至らなかった方で、研究の説明を受け研究に参加することに同意いただいた不妊患者さん。
  • 方法:採血を行い(診療で採血の予定がある場合は、同じタイミングで採血を行います)、ネオセルフ抗体価を測定します。
  • 目的:β2GPIネオセルフ抗体と着床不全の関連性を明らかにすることを目指しています。

【研究6】妊娠分娩予後予測システム構築を目指した生体試料・臨床データの統合的解析

  • 方法:腟・子宮・腸内細菌叢と代謝産物を測定し、超音波所見などの臨床データと統合して妊娠分娩予後との関連を調べます。

【研究7】不妊症患者における子宮内細菌叢に関する観察研究

  • 対象:不妊症のため2018年4月以降に受診された18歳以上46歳未満の女性(研究責任者または研究分担者が不適切と判断した方を除く)
  • 方法:通常の着床外来における診療の一環として行われる子宮内フローラ検査の結果と、カルテに記録された治療内容・検査結果・妊娠・出産の経過などの診療情報を用いて、追加の検査や治療を伴わない観察研究として解析します。
  • 目的:子宮内細菌叢の状態と不妊治療成績や妊娠転帰との関連を明らかにし、子宮内フローラ検査の有用性を検証することで、不妊症・着床不全の治療戦略の確立に役立てることを目的としています。
  • オプトアウトについて:本研究の対象となる可能性のある方で、ご自身の診療情報等が研究に利用されることを希望されない場合は、2026年1月31日までに、外来担当医または情報公開文書(PDF)に記載の連絡先までお申し出ください。
    研究に協力されない場合でも、現在および今後の診療において不利益を受けることはありません。

研究の目的・方法や個人情報の取り扱いなどの詳細については、以下の情報公開文書をご覧ください。

【研究8】子宮内細菌叢検査が有効な患者集団の同定と最適な治療戦略の検討に関する後方視的研究

  • 対象:2020年8月〜2025年12月に研究実施機関を受診し、不妊症と診断された18歳以上49歳以下の女性のうち、子宮内フローラ検査を行った方、または不妊治療中に子宮内フローラ検査を施行しなかったものの、先進医療における適応病名である反復着床不全、反復流産、慢性子宮内膜炎疑い、難治性細菌性腟症と診断された方(研究責任者または研究分担者が不適切と判断した方を除く)
  • 方法:診療録に記録された治療内容、子宮内フローラ検査結果、妊娠・出産の経過などの既存の診療情報を用い、研究のために追加の検査や治療を伴わない多施設共同の観察研究として解析します。
  • 目的:子宮内細菌叢の状態と不妊治療成績や妊娠転帰との関連を明らかにし、子宮内フローラ検査の有用性や、検査結果に基づく治療戦略の有効性を検証し、不妊症・着床不全に対する治療戦略の確立に役立てることを目指しています。また、妊娠成立後の周産期予後との関連についても検討し、子宮内細菌叢評価が周産期管理にどのように寄与し得るかを明らかにします。
  • オプトアウトについて:本研究の対象となる可能性のある方で、ご自身の診療情報等が研究に利用されることを希望されない場合は、 2027年3月末日 までに、外来担当医または下記の情報公開文書(PDF)に記載の連絡先までお申し出ください。
    なお研究に協力されない場合でも、現在および今後の診療において不利益を受けることはありません。

研究の目的・方法や個人情報の取り扱いなどの詳細については、以下の情報公開文書をご覧ください。

着床外来のご案内(PDF版)

最後に着床外来の案内については以下の簡易版と詳細版の2つのリンクからもご確認いただけます。

受診予約のご案内

【予約センター】10時00分~17時00分(平日)

TEL:03-5800-8630