新型コロナウイルス感染症―病気を知って、感染対策を考える―

新型コロナウイルスの感染者が国内ではじめて報告されてから1年以上が経過しました。ワクチンの接種が段階的に開始されているものの、流行を抑えるためには、引き続き一人ひとりが感染対策を行うことが重要です。


監修/感染制御部 教授 森屋恭爾、講師 原田壮平、特任講師(病院) 佐藤信彦、 特任講師(病院) 岡本耕

東大病院だより No. 101(2021年4月15日発行)」より

新型コロナウイルス感染症はどんな病気?

どんなウイルス?

新型コロナウイルス
新型コロナウイルス

コロナウイルスは現在までに7種類確認されており、このうち3種類が重症肺炎を引き起こすSARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス、そして新型コロナウイルスです。残りの4種類はいわゆる「かぜ」のウイルスの一種です。

新型コロナウイルスの大きさは約0.1㎛(=約0.0001㎜)です。喉や肺など気道(口から肺までつながる空気の通り道 )で増殖することが知られています。また、体外に出て物などに付着した場合、さらに増殖することはありませんが、付着したウイルスの感染力が銅では4時間、段ボールでは24時間、ステンレスでは48時間、プラスチックでは72時間残っていたことを米国国立衛生研究所らの研究チームが報告しています(これよりも長いとする報告もあります)。

主な症状・合併症

主な症状は、発熱、せき、倦怠感、呼吸困難などです。発症初期では「かぜ」症状や嗅覚・味覚障害などがあらわれます。無症状の場合もあります。軽症の場合はこのまま1週間程度で治りますが、回復せずに悪化すると1週間から10日目ぐらいで、呼吸困難やせき、たんなどの肺炎症状の悪化がみられ入院が必要となります。さらに病状が悪くなると集中治療室(ICU)での管理が必要となり、場合によって人工呼吸器や人工肺(ECMO)が必要な状況に陥ります 。

気道だけでなく全身のさまざまな臓器にも合併症を起こすことも分かってきました。嗅覚・味覚障害もその一つですが、他にもめまい 、頭痛 、結膜炎、心不全、不整脈、消化管の異常、血液の異常(血球異常、凝固異常)などが知られています。また、実態や因果関係はまだ明確になっていませんが、回復後も何らかの症状が続く場合(いわゆる後遺症)もあります。

重症化リスクの高い人

65歳以上の高齢者は重症化のリスクが高いです。高齢でなくても、高血圧、心臓の病気、慢性の肺の病気、慢性腎臓病、糖尿病、肥満、悪性腫瘍(がん)、臓器移植後の免疫不全なども重症化リスクが高いとされています。一方で、このような要因がない人でも重症化することがあるので注意が必要です。

どのようにして人から人へ感染するの?

感染している人の気道分泌物(たんや唾液)にはウイルスが含まれています 。重要なことは 、この気道分泌物が感染していない別の人の粘膜(口、鼻、眼など)に達すると、この人も感染する可能性があるということです。

日常生活の中ではどのようなケースがあるでしょうか。ウイルスを含む気道分泌物がせき、くしゃみ、会話などによる飛沫として飛び散り、それを吸い込んだ人が感染する飛沫感染があります。また、飛び散った飛沫が周囲の物に付着し、それに触れた人がさらにその手で口、鼻、眼などに触れて感染する接触感染があります。飛沫が食べ物に付着した場合は、それを口に運んだ人が感染してしまうかもしれません。飛び散ったときの粒の大きさにより5㎛までのものは飛沫、それより小さいものはエアロゾルなどと呼ばれますが、飛沫は1~2mほど飛び、短時間で地面に落ちます。エアロゾルは限られた状況の中で発生しますが、飛沫よりも遠くまで飛び、長時間空気中に漂います。

飛沫感染

接触感染

要注意! 発症前から他の人に感染

WHOによると新型コロナウイルスの潜伏期間は1~14日間で、特に5日程度で発症することが多いようです。発症の2~3日前から他の人に感染させる可能性があり、感染力は発症してすぐ(発症日)に最も高くなります。発症後7~10日ぐらいまでは感染力のあるウイルスが排出されると考えられています。無症状の人(発症前の人、症状が出ないままの人)も感染力のあるウイルスを排出している可能性があるため、注意が必要です。気づかぬうちに感染を広げているかもしれないのです。

発症前から他の人に感染!

治療薬のはなし

例えばインフルエンザでは承認された抗ウイルス薬(ウイルスの増殖を抑える薬)があり、多くの場合、発症しても早期に服用すれば数日で治ります。新型コロナウイルス感染症はというと、承認されている治療薬もありますが、現時点では誰でも使えるというわけではありません。開発や臨床試験が進められていますが、軽症の段階で使用できる確立された治療薬がまだありません(2021年2月現在)。感染を広げないことは非常に重要です。

感染対策

【1】ソーシャルディスタンス

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【2】密を避け、換気を

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【4】症状がなくても... お互いにマスク

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【5】手洗い・手指消毒 のタイミング

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【6】清潔でない手で 口・鼻・眼をさわらない

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【7】よく触れるところや物を こまめに消毒

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