成人先天性心疾患(ACHD)の治療

心臓手術の発展に伴い、先天性心疾患を持つ成人の方(成人先天性心疾患(adult congenital heart disease: ACHD))は現在40万人を超えています。今後も毎年約1万人ずつが成人に達すると考えられており、小児科医や循環器内科医のみならず心臓外科医、産婦人科医、放射線科医、麻酔科医、臨床心理士など多くの診療科に渡る総合的な診療が必要です。
東大病院では2008年4月から成人先天性心疾患専門外来(担当医:八尾厚史)を開設し、積極的に診療を行っています。心臓術後や発生異常を伴う心疾患の高度な専門性を必要とする領域ですので、診療でお困りの場合は当院に御紹介頂ければと思います。

従来、成人先天性心疾患(ACHD)の治療は心臓外科手術しか治療法がありませんでしたが、カテーテル技術や道具の進歩に伴い、患者さんの負担が少ない様々なカテーテル治療が行われています。
東大病院では、心房中隔欠損症(ASD)(右房と左房の間にある心房中隔が先天的に欠損している疾患です)の方に対して、(血管の中から)カテーテルを用いて欠損孔を閉鎖させるAmplatzer閉鎖術を積極的に行っています。
Amplatzer閉鎖術は日本では2008年に認可され、最初は小児科領域のみで開始されました。2011年より成人循環器内科医がAmplatzer閉鎖術を行えるようなり、東大病院では2013年から施設・術者認定を受けて治療を行っています(治療責任者:稲葉俊郎)。2015年度は、循環器内科施設で27病院26人の術者の限られた施設のみでAmplatzer閉鎖術を行うことが可能となっています(小児科の病院では34施設が認可)。
治療は全身麻酔下で足の付け根(鼡径部)の皮膚を介して血管(内)からカテーテルを入れ、心臓まで持っていき、(ASD)心房中隔欠損孔の閉鎖術を行います。傷口は1-2cmほどで、3泊4日で退院が可能です。当院では治療前に心臓の状態を十分に調べて、患者さんにとって最善の治療法の適応を慎重に判断するようにしています(欠損孔が大きい方など、すべての方でカテーテル閉鎖術が可能なわけではありません)。
治療後は日常生活に復帰可能ですが、術後1ヵ月は激しい運動は控えて頂いています。

ASDのAmplatzer閉鎖術以外にも、海外ではその他の成人先天性心疾患(ACHD)に対して様々なカテーテル治療が積極的に行われています。当院でも新しい治療法を積極的に導入して患者さんに貢献していければと考えています。
ご不明な点がありましたらお問い合わせください。

文責:稲葉俊郎(東京大学医学部附属病院 循環器内科 助教)
 

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