【プレスリリース】人工透析下の腎臓がんの前がん病変および発症機構を解明
2025年11月21日研究
国立研究開発法人国立がん研究センター(東京都中央区、理事長:間野 博行)研究所(所長:間野博行)細胞情報学分野の田中 庸介研究員、高橋 潤任意研修生、間野 博行特別研究員らは東京大学医学部附属病院泌尿器科・男性科(久米 春喜教授)との協力体制のもと、人工透析(血液透析)患者さんに特有に発症する腎臓がんの分子メカニズムを明らかにしました。一般に、慢性腎臓病が進行して末期腎不全に至ると人工透析療法が必要となりますが、長期の透析により腎臓には多発性の嚢胞(後天性嚢胞腎:ACKD)が形成され、その後の腎臓がん発症リスクが一般人口の15倍に上昇することが知られています。
本研究では、空間的マルチオミックス解析により、後天性嚢胞腎およびそこから発生する腎臓がんが、腎臓の構成要素である近位尿細管細胞を起源としていることを明らかにしました。特に、長期透析により腎臓の多くの組織が傷害・萎縮していく一方で、一部の近位尿細管が周囲微小環境から分泌されるHGF(hepatocyte growth factor:肝細胞増殖因子)によってMETチロシンキナーゼを活性化し、さらに遺伝子変異の蓄積を伴いながらクローン性に増殖することで嚢胞化し、最終的に腎臓がんへと進展する過程を解明しました。また、発症した透析特有の腎臓がんは、一般的な腎臓がんと比べて遺伝子異常などの分子プロファイルが大きく異なることが分かり、透析腎特有の発がん経路が示唆されました。本研究で明らかになった発がん機構を基盤として、今後は透析患者さんにおける腎臓がん発症リスクの層別化や、新しい診断・治療戦略の開発が期待され、長期透析患者さんの予後改善に向けた新たな一歩となることが見込まれます。本研究成果は、米国時間2025年11月20日(日本時間11月21日)付で、国際学術誌「Cancer Discovery」に掲載されました。
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