【プレスリリース】自己免疫疾患の制御に関わる新たな加齢関連T細胞を発見

2024年02月09日研究


―自己免疫疾患制御から健康長寿社会の実現に期待―

東京大学医学部附属病院 アレルギー・リウマチ内科 後藤 愛佳 病院診療医、高橋 秀侑 助教、吉田 良知 特任臨床医(研究当時)、同大学大学院医学系研究科 免疫疾患機能ゲノム学講座の太田 峰人 特任助教(研究当時)、岡村 僚久 特任准教授、同大学院生体防御腫瘍内科学講座 アレルギー・リウマチ学 藤尾 圭志 教授らによる研究グループは、理化学研究所 生命医科学研究センター 中野 正博 学振特別研究員、石垣 和慶 チームリーダー、山本 一彦 チームリーダーらとの共同研究において、自己免疫疾患の病態制御に関わる新たな加齢関連T細胞を発見しました。

自己免疫疾患は、免疫という本来は身体を守る仕組みに異常が起こり、自分の組織を攻撃してしまう病気です。その発症には遺伝的および環境的な要因が関与しますが、自己免疫疾患の多くが中年以降に発症のピークを迎えることから、「加齢」も重要な要因として知られています。また、免疫学的な細胞レベルでの老化が、自己免疫疾患の発症に関わっているとも考えられています。

本研究では、加齢で増加するT細胞を発見し、「ThA(Age-associated helper T/加齢関連ヘルパーT)細胞」と名付けました。ThA細胞は、若年齢の自己免疫疾患でも増加し、その細胞は健康な方のThA細胞とは性質が異なることが分かりました。

ThA細胞の機能を詳細に調べたところ、これまでは別々の細胞が担うと考えられていた、抗体産生を導く機能と、周囲の細胞を傷害する機能の2つを併せ持っていることが分かりました。加齢で増加し、かつこれら2つの機能を持つ細胞は、世界で初めての発見となります。

代表的な自己免疫疾患として、全身性エリテマトーデス(SLE)が知られています。SLEは、自分に対する抗体である様々な自己抗体が産生され、全身の臓器の障害を認める疾患であり、難病に指定されています。ThA細胞は若年齢のSLE症例でも増加しており、健康な方と比べB細胞の抗体産生を促進させる分子を非常に高く産生していることが分かりました。また、他のT細胞と比較して、ThA細胞の遺伝子発現の違いが、SLEの病気の勢いを最も強く反映していることが分かりました。

本研究では、ThA細胞の2つの機能はZEB2という遺伝子で制御されているということの特定にも成功しました。

今回の研究で得られた知見は、ThA細胞が、自己免疫応答と健康長寿の違いを知ることができる重要な細胞であることを示唆しており、自己免疫疾患の新たな治療法開発、健康長寿社会実現への展開が期待されます。この研究成果は、国際科学誌『Science Immunology(サイエンス・イムノロジー)』(オンライン版)にて、2024年2月8日(米国東部時間)に発表されました。

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