【記者会見】別々の3疾患に共通する原因がヒトゲノムCGG塩基の繰り返し配列の異常伸長であることを解明

2019年07月23日研究


神経核内封入体病は、近年、認知症を呈する神経変性疾患の一つとして注目されており、発症年齢は幼少期から高齢まで幅広く分布し、家族性の発症もあることが知られていましたが、その原因は不明でした。東京大学医学部附属病院の分子神経学講座 辻省次特任教授、脳神経内科 石浦浩之助教および東京大学大学院新領域創成科学研究科 森下真一教授らの研究グループは、発症者の全ゲノム配列のデータから、未知の繰り返し配列の異常伸長を効率良く検出できる解析プログラム(TRhist)を開発し、NBPF19 遺伝子の5’非翻訳領域に存在するCGG繰り返し配列の異常伸長が原因であることを発見しました。

そして、次の2疾患にも同様の異常伸長が認められました。
白質脳症を伴う眼咽頭型ミオパチーは、頭部MRI画像で神経核内封入体病に類似した大脳白質の異常を示し、加えて眼球の運動を司る筋肉、嚥下・発声を担う咽頭の筋肉、四肢の筋肉を侵す疾患です。解析の結果、LOC642361・NUTM2B-AS1という別の遺伝子に、同じCGG繰り返し配列の異常伸長が存在することを見いだしました。

眼咽頭遠位型ミオパチーは、眼球運動、咽頭、さらに四肢の遠位部の筋力低下が特徴的な筋疾患で、国が定める指定難病の一つである、遠位型ミオパチーに含まれる疾患です。前述の白質脳症を伴う眼咽頭型ミオパチーと筋の罹患部位の分布が非常に類似していることをヒントに解析した結果、LRP12遺伝子に、やはりCGG繰り返し配列の異常伸長変異が存在することを見いだしました。

上記の3疾患はこれまで別個の疾患と考えられていましたが、MRI所見や症状に重複する部分が存在し、原因遺伝子は異なっても、共通してCGG繰り返し配列の異常伸長が認められたことから、CGG繰り返し配列の異常伸長そのものが、その病態機序において中心的な役割を果たしていることが明らかとなりました。

本研究成果は、日本時間7月23日に国際科学誌Nature Geneticsにて発表されました。

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