【プレスリリース】反復配列RNAの異常発現が膵癌発生を促進するメカニズムをマウスで確認

2018年05月10日研究


膵癌は抗癌治療の発展した現在においても予後不良であり、難治癌の代表的存在として知られています。この発癌の過程において、単純な塩基配列の繰り返しで構成される「反復配列RNA」と呼ばれるタンパク質情報を持たないRNA(ノンコーディングRNA)が、癌になる前段階から異常に発現していることが明らかになってきました。

東京大学医学部附属病院 消化器内科の岸川孝弘(留学中)、大塚基之 講師、小池和彦 教授らの研究グループは、以前、マウスの膵臓の良性腫瘍から樹立した細胞を用いて研究を行い、これまで機能を持たないと考えられてきた反復配列RNAの一種であるMajSAT RNAと呼ばれる「サテライト配列由来のRNA」がYBX1というタンパク質と結合すると、YBX1のもつDNAダメージ修復機能を阻害して、突然変異の蓄積を促進、細胞を癌化させることを見出しました(Kishikawa et al. Nat Commun 2016;7:13006)。

今回は、新たにMajSAT RNAを恒常的に発現するマウスを作製し、このマウスで膵臓に炎症を惹起したところ、膵組織内のDNAダメージが増え、さらに膵特異的Kras遺伝子変異マウスとの交配で膵臓の前癌病態の形成が促進されることを確認しました。これらの結果は、以前に、細胞レベルの検討で見いだした、反復配列RNAが「細胞内変異原」として機能し、発癌プロセスを進める重大な働きをしていることを生体でも確認したことになり、発癌機序の解明、発癌予防という観点からも重要な成果であるといえます。

本研究成果は、日本時間5月10日にMolecular Cancer Research(Online First)にて発表されます。なお、本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)次世代がん医療創生研究事業「次世代の診断・治療・予防法の創生をめざした膵がん特異的リピートRNAの新規探索と応用」、「血中反復配列RNAの高感度測定による癌の早期診断と囲い込み法の開発」および文部科学省科学研究費補助金等の支援により行われました。

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