【記者発表】てんかんの新しい発症機構の解明

2018年03月06日研究


―繰り返し配列の異常伸長によっててんかんが生じることを発見―

●てんかんの一つのタイプである、良性成人型家族性ミオクローヌスてんかんの新たな発症機構を解明しました。この疾患は、国が定める指定難病の一つである進行性ミオクローヌスてんかんに含まれる疾患です。

●51家系100名のご協力をいただき、次世代シーケンサーを駆使した研究によってその原因を突き止めました。

●タンパク質を作る情報を持たないイントロンと呼ばれる領域(非コード領域)に、元のゲノム上には存在しない、異常に伸長した新規の5塩基繰り返し配列が挿入されていることが原因となっていることを発見しました。このような配列の変化は、これまで、てんかんでは全く知られていなかった現象です。

●この5塩基の繰り返し配列の異常伸長は、49家系において、SAMD12という遺伝子のイントロン中に生じていることを見出しましたが、2家系では、TNRC6A、RAPGEF2という別の遺伝子に存在することを見出しました。繰り返し配列の繰り返し数は、おおよそ440~3,680回の範囲でした。3つの遺伝子に同じ繰り返し配列の異常伸長が認められることは、このような繰り返し配列の異常伸長そのものが重要で、存在する遺伝子の種類に依存しないことを強く示しています。

●異常伸長したTTTCAという5塩基の繰り返し配列は、RNAとして転写された後、神経細胞内に集積、凝集して、 RNA fociという凝集体を形成していることを見出しました。TTTCA繰り返し配列から転写されて生じるRNA分子が、てんかんの病態を引き起こすと考えられました。

●今までいくつかの疾患でイントロンの繰り返し配列の異常伸長が見いだされてきましたが、てんかんにおいて繰り返し配列を持った異常RNAが病態に関与していることを示した初めての例になります。

●非コード領域の繰り返し配列の異常伸長に伴う疾患は、今後さらに拡大していくと思われます。これまでは、抗てんかん薬を用いた、対症的な治療が行われていましたが、発症機構が判明したことから、その機構に直接介入するような、より効果的な治療法の開発研究が今後大きく発展することが期待されます。また、本研究の成果は、進行性ミオクローヌスてんかんはもとより、様々な原因未解明の疾患の研究に幅広く応用され、発症機構の解明研究、さらには,治療法開発研究に結びつくことが期待されます。

●本研究は日本医療研究開発機構(AMED)「難治性疾患実用化研究事業(課題名:オミックス解析に基づく希少難治性神経疾患の病態解明)」、「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業(課題名:希少・難病分野の臨床ゲノム情報統合データベース整備)」の支援により行われました。

●研究成果は、Nature Geneticsオンライン版にて3月6日(日本時間)に発表されました。

※詳細は添付ファイルをご覧下さい。

ファイルを保存される方は、マウスの右クリックから「対象をファイルに保存」、「名前をつけて保存」などを選択して保存して下さい。