【プレスリリース】肥満症の治療標的として期待される「褐色脂肪組織」の新規制御因子を同定

2017年08月15日研究


肥満症とそれに起因するメタボリックシンドロームや肥満2型糖尿病は、心血管疾患、腎疾患や悪性腫瘍のリスクを高めることから、健康寿命の延伸を目指す上で大きな障害です。近年、エネルギーの貯蔵を担う「白色脂肪組織」以外に、熱産生を介してエネルギーを消費する「褐色脂肪組織」がヒト成人にも存在することが分かり、褐色脂肪組織の数や働きを高めることが肥満症の新しい治療法につながり得るとして期待されています。

このたび東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 門脇孝教授、山内敏正准教授、脇裕典特任准教授、平池勇雄特任研究員及び東京大学先端科学技術研究センター ゲノムサイエンス分野 油谷浩幸教授、堤修一特任准教授らの研究グループは、褐色脂肪組織に特異的なDNA上のオープンクロマチン領域の解析から、褐色脂肪組織の新規の主要制御因子としてNFIAを同定しました。NFIAを欠損させたマウスでは褐色脂肪の遺伝子プログラムが著しく障害されていた一方、NFIAを導入した場合には、筋芽細胞や白色脂肪細胞においても褐色脂肪の遺伝子プログラムが活性化されました。更に、ヒト成人の褐色脂肪組織でも白色脂肪組織と比較してNFIA遺伝子が高発現していました。この結果は、NFIAの働きを高めることで「エネルギー摂取の抑制」ではなく「エネルギー消費の促進」に基づく肥満症、メタボリックシンドローム、肥満2型糖尿病の新しい治療につながる可能性があると期待されます。

本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構の革新的先端研究開発支援事業(AMED‐CREST)「エピゲノム研究に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出」研究開発領域における研究開発課題「2型糖尿病・肥満における代謝制御機構とその破綻のエピゲノム解析」(研究開発代表者:山内敏正)の一環で行われました。なお、本研究開発領域は、2015年4月の日本医療研究開発機構の発足に伴い、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)より移管されたものです。その成果は日本時間2017年8月15日午前0時(英国時間 2017年8月14日16時)に英国科学雑誌 Nature Cell Biology オンライン版に掲載されました。


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