【記者発表】小児T細胞性急性リンパ性白血病における極めて高い悪性度に関連する融合遺伝子を発見

2017年07月04日研究


-PU.1/SPI1融合遺伝子-


白血病は血液中の細胞のうち、白血球になるもとの細胞から発生する悪性腫瘍です。小児期の悪性腫瘍の中では最も高頻度に発生し、T-ALLは小児白血病の約15%を占めています。薬物療法を中心とした集学的治療の強化により全体として約70%の治癒が期待できますが、小児では特に成長障害、臓器機能障害、不妊など、治療後に発生する障害(晩期障害)が大きな課題となっています。また、治療抵抗例や再発した場合の治癒は極めて難しいのが現状です。従って、分子病態に立脚した治療の最適化は、小児T-ALL患者さんの治癒率改善と重篤な副作用や晩期障害の回避に重要といえます。


東京大学医学部附属病院小児科の滝田順子准教授、関正史助教、木村俊介研究員らは京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座の小川誠司教授らと共同で、次世代シーケンサー技術を用いて小児T-ALL 123例のゲノム上にみられる遺伝子異常や融合遺伝子を含む構造変化、遺伝子発現の異常の全体像を解明しました。その結果、極めて高い悪性度に関連するSPI1融合遺伝子を約4%の例に同定しました。SPI1融合遺伝子は、T細胞の分化の停止と細胞増殖をもたらし、それが白血病化を引き起こす可能性を示しました。また遺伝子発現パターンと分子学的特徴から小児T-ALLは5群に分類されることを見出し、それぞれの群を特徴づける遺伝子発現や遺伝子異常と臨床的特性を明らかにしました。SPI1融合遺伝子を有する群は、他とは異なる特徴的な一群であることを示し、新たなT-ALLのサブグループであることを示しました。この成果は、T-ALLの予後予測、精度の高い分子診断法の開発に貢献し、治療の最適化の実現に役立つものと期待されます。


本研究は、文部科学省「次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)」の一環として行われたものであり、その成果は2017年7月4日午前0時(英国時間7月3日午後4時)にNature Geneticsのオンライン版で公開されました。


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