【プレスリリース】食道癌診断におけるDPP-IV活性検出プローブの有用性

2016年06月02日研究


東京大学大学院薬学系研究科・医学系研究科の浦野泰照教授らの研究グループは、癌細胞で活性が上昇している特定のタンパク質分解酵素によって蛍光性へと変化する試薬(蛍光プローブ)を開発し、癌モデル動物でその機能を証明してきました。しかし、ヒトの癌の性質は極めて多様であり、実際のヒト組織で真に有効であるかどうかはわかりませんでした。今回、東京大学大学院医学系研究科消化管外科学瀬戸泰之教授らと共同して、食道扁平上皮癌に対して有用な蛍光試薬の開発を行いました。まず、さまざまな酵素をターゲットとした蛍光試薬のライブラリーを作成し、ヒト生検検体を用いてスクリーニングを行ったところ、DPP-IV活性検出プローブが癌特異性を示すことを明らかにしました。そこで本プローブを、ヒト外科手術において摘出した検体や内視鏡治療において摘出した検体にスプレーしたところ、わずか数分で食道癌を選択的に光らせ、周囲の正常組織と識別できることを明らかにしました。食道癌は、通常の内視鏡観察では早期発見が困難であることが知られており、本手法の活用によって早期食道癌の診断率の向上が期待できます。現在、本蛍光試薬の臨床医薬品としての市販を目指し、プローブの有用性を更に多数の症例で実証するとともに、体内使用を目指して、東京大学エッジキャピタル(UTEC)からの投資を受けた五稜化薬株式会社と共同で臨床試験の適用に向けた準備を進めています。

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「疾患における代謝産物の解析および代謝制御に基づく革新的医療基盤技術の創出」研究開発領域(研究開発総括:清水孝雄)における研究開発課題「臨床検体を用いた疾患部位特異的な代謝活性のライブイメージング探索技法の確立と創薬への応用」(研究開発代表者:浦野泰照)の一環で行われました。なお、本研究開発領域は、平成27年4月の日本医療研究開発機構の発足に伴い、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)より移管されたものです。

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