【プレスリリース】印刷業で多発した職業性胆管がんと関連する、発がん性候補物質の胆汁排泄を発見

2016年04月18日研究


平成24年、塩素系有機洗浄剤を大量に使用してきた印刷工場の従業員がきわめて高頻度で胆管がんを発症していることが報告され、大きな社会問題となりました。労働環境の調査結果などから、塩素系有機洗浄剤の主成分であったジクロロプロパンという工業用化学物質が原因物質として強く疑われています。しかしながら、ジクロロプロパンへの大量ばく露と胆管がん発症とをつなぐ分子機序は未解明でした。

東京大学医学部附属病院薬剤部の豊田優 特任助教、高田龍平 講師、鈴木洋史 教授は、質量分析装置を駆使した胆汁の網羅的成分分析や肝臓の大部分がヒト肝細胞に置換されたマウスを用いた実験などから、ジクロロプロパンから生じた発がん性候補物質が胆汁排泄されることを見出しました(図1)。本成果は、塩素系有機溶剤への大量ばく露と職業性胆管がんの発症とを結びつける重要な発見です。胆管がんの発がん機序が解明されたわけではありませんが、肝臓で生じた反応性代謝物が胆汁中に排泄される結果、胆管での発がんリスクが高まる可能性を新たに提唱するという点で、本報告は将来のがん研究の発展に貢献する重要な成果であると考えられます。

なお、本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の「革新的がん医療実用化研究事業」、ならびに、日本学術振興会・科学研究費補助金などの支援によって行われたものであり、日本時間4月18日に英国科学雑誌Scientific Reportsにて発表されました。

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