【プレスリリース】2型糖尿病に関わる新たな遺伝子領域を発見

2016年01月28日研究


-新たな治療薬開発の一助に-

理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センター腎・代謝・内分泌疾患研究チームの前田士郎チームリーダー(琉球大学医学研究科教授)、今村美菜子客員研究員(琉球大学医学研究科准教授)と東京大学大学院医学系研究科/東京大学医学部附属病院の門脇孝教授らの共同研究チームは、日本人4万人以上を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、日本人の2型糖尿病の発症に関わる7つの疾患感受性遺伝子領域を新たに同定しました。また、疾患感受性遺伝子領域内の遺伝子と、2型糖尿病治療薬のターゲット遺伝子とのつながりを調べることで、新規治療薬候補を同定しました。

2型糖尿病は、生活習慣などの環境要因とともに遺伝要因が発症に関与することが知られています。これまでに国内外の研究グループによって精力的にGWASが実施され、2型糖尿病の発症に関与する疾患感受性遺伝子領域が数多く報告されています。しかし、日本人における遺伝要因を解明するためには、日本人を対象としたGWASを行う必要があります。

共同研究チームは日本人集団のみを用いた2型糖尿病GWASとしては最大規模となる約4万人のゲノムの一塩基多型(SNP)を網羅的に解析し、別の日本人集団約1万3千人のゲノムを用いた検証解析を経て、疾患感受性との関連が認められる7つの遺伝子領域を同定しました。また、約22万人の外国人のゲノムを用いて関連を検証した結果、日本人集団で同定された7領域のうち5領域で、外国人においても疾患感受性との関連が再現されました。さらに、今回同定した7領域と既知の疾患感受性遺伝子領域内の遺伝子について多様な生物学的データベースとの網羅的な照合を行い、疾患感受性遺伝子と創薬データベース上のターゲット遺伝子とのつながりを調べたところ、既存の2型糖尿病治療薬に加えて、その他の病気の治療薬として開発されている薬の中にも2型糖尿病の疾患感受性遺伝子領域をターゲットとしているものが複数存在することがわかりました。これらの薬は2型糖尿病治療に適応できる可能性があり、新たな治療薬開発の一助となることが期待できます。

本研究は、文部科学省が推進するオーダーメイド医療の実現プログラムの支援のもと行われました。成果は、英国のオンライン科学雑誌『Nature Communications』(1月28日付:日本時間1月28日)に掲載されました。

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