【プレスリリース】ビタミンKの肝臓での作用不足は出血と寿命短縮に至る

2014年02月11日研究


― ビタミンKの肝臓内外への多面的な作用解明に道筋 ―

ビタミンKは緑黄色野菜や納豆に多く含まれ、臨床的には新生児の頭蓋内出血の予防や、加齢や医薬品等に使われるステロイドによる骨粗鬆症の治療に用いられています。また、疫学研究によりビタミンK不足が動脈硬化や認知症、悪性腫瘍の危険性を上げる可能性も報告されています。

ビタミンKは主としてγグルタミルカルボキシラーゼという酵素の作用を助け、タンパク質の修飾にかかわるメカニズムが示されており、肝臓での血液凝固因子の活性化に必要です。ビタミンKとγグルタミルカルボキシラーゼの作用を受ける分子は血液凝固因子以外にも10種類以上知られ、全身に分布しており、ビタミンKは上記の疾患やさまざまな生理作用にかかわる多様な働きが推測されています。しかし、ビタミンKの作用は不明な点が多いほか、γグルタミルカルボキシラーゼを全身で欠損するマウスは激しい出血傾向により生存できないため、多面的なビタミンKの作用を動物モデルにて解明することは困難でした。

このたび、東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター抗加齢医学講座特任教授の井上聡、老年病科特任講師(研究当時)の東浩太郎、埼玉医科大学ゲノム医学研究センター 講師の池田和博らは、大阪大学、神戸薬科大学との共同研究により、γグルタミルカルボキシラーゼを肝臓のみで欠損するマウスの作製に成功し、そのマウスが出血傾向を示すことを示しました。また、この遺伝子改変マウスは寿命が短縮するものの、オスよりもメス(妊娠していない)の方が長生きであるという興味深い結果を得ました。
本研究の技術を用いることにより、肝臓をはじめ、特定の臓器のみでビタミンKの作用を欠損したマウスを作製することが可能となり、今後、全身における多彩なビタミンKの作用が解明されると期待されます。

本研究成果は、日本時間2月11日にPLOS ONEオンライン版に掲載されました。

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