【プレスリリース】統合失調症の進行を反映する脳内マーカーの開発につながる成果

2013年09月10日研究


―脳内の生化学物質の濃度を統合失調症の3 つの異なる段階で比較して同定―

統合失調症は、一般人口の100人に1人に近い頻度で認められ、思春期や青年期早期に出現して慢性的に進行し、日常生活や社会生活を深刻に制限します。この病気の進行を防ぐことができれば、世界中の当事者や家族、さらには社会全体に多大な利益をもたらします。その第一歩として、この病気が進行するしくみの解明やこの病気の生化学的な脳内マーカーを開発することが重要です。

東京大学大学院医学系研究科精神医学分野 准教授 山末英典、同研究科 博士課程 夏堀龍暢、同研究科 教授 笠井清登らは、プロトン核磁気共鳴スペクトロスコピーという方法を用いて、統合失調症にかかる危険が高い状態にある群、発症後まもない時期にある群、慢性化している群の、脳内化学物質の濃度を調べました。その結果、慢性化している群についてのみ、内側前頭前野とよばれる脳部位のグルタミン酸−グルタミン総和とN-アセチルアスパラギン酸という物質の濃度低下が認められるという新たな知見を示しました。この結果は、プロトン核磁気共鳴スペクトロスコピーの所見が統合失調症の進行を反映する新たな脳内マーカーとして役に立つ可能性を示しています。

これらの成果は、日本時間 9月10日にSchizophrenia Bulletin誌(電子版)にて発表されます。なお、本研究は、文部科学省「脳科学研究戦略推進プログラム」の一環として、また科学研究費補助金 若手研究(A)(22689034)の支援を受けて行われました。

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