思春期の脳とこころの不調の予防にいじめの防止が重要
2024年01月24日患者・一般
東京大学 国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)の岡田直大特任准教授、東京大学 大学院医学系研究科精神医学分野/医学部附属病院精神神経科の笠井清登教授(WPI-IRCN 主任研究者)、東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センターの西田淳志センター長らの研究グループは、思春期児を対象としたコホート研究である東京ティーンコホート調査(注1)に参加した約3,000名のうち200名強を対象として、磁気共鳴画像法(MRI、注2)による磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS、注3)の撮像を実施し、思春期早期の2時点(時点1:平均11.5歳、時点2:13.6歳)において、前部帯状回(注4)のグルタミン酸機能(注5)が低いと、精神病体験(注6)が多いことを明らかにしました。また2時点の変化(差)として前部帯状回のグルタミン酸機能がより低くなると、精神病体験がより多くなることを見出しました。さらに前部帯状回のグルタミン酸機能は、いじめ被害があると低く、いじめ被害を受けた児においては援助を求める傾向がある場合に高いことを明らかにしました。
思春期の複数時点における精神病体験の多さと脳内のグルタミン酸機能の低下との関連を明らかにし、さらに、一般的に経験される環境による感情・社会的ストレスと脳内のグルタミン酸機能の低下との関係を解明した、はじめての研究です。思春期のこころの不調の背景に脳機能変化があり、その変化にいじめ被害という社会的ストレスが関与することから、予防的ないじめ対策や精神保健支援の重要性が示唆されます。
なお本研究の成果は、2024年1月5日(金)(英国時間)に、英国科学誌「Molecular Psychiatry」オンライン版に掲載されました。
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