卵巣がんの新しい治療標的を同定

2022年02月07日患者・一般

-がん研究に医療ビッグデータとコンピュータ科学を活用-

 東京大学医学部附属病院の曾根献文講師、織田克利教授、大須賀穣教授、理化学研究所(理研)革新知能統合研究センター目的指向基盤技術研究グループがん探索医療研究チームの町野英徳特別研究員、浜本隆二チームリーダー、小松正明副チームリーダー、浅田健研究員、国立がん研究センター研究所の金子修三ユニット長、同中央病院婦人腫瘍科の加藤友康科長、病理診断科の吉田裕医員らの国際共同研究グループは、医療ビッグデータとコンピュータ科学を活用し、卵巣がんの新しい治療標的として、「LKB1-MARK3経路」を同定しました。

 本研究成果は、卵巣がんのうち最も死亡者数の多い「高異型度漿液性卵巣がん」の新しい治療法の開発につながると期待できます。

 今回、国際共同研究グループは、卵巣がん患者の検体から取得した遺伝子発現情報に関するビッグデータを、さまざまなアルゴリズムを用いてコンピュータで解析(ビッグデータ解析)しました。

 その結果、正常組織に比べて、がん組織ではLKB1-MARK3経路の遺伝子の発現が抑制されており、その遺伝子発現量の低下が臨床予後の悪化に関わることが分かりました。また、LKB1-MARK3経路が、タンパク質合成経路に関わる代謝性ストレスに応答して細胞周期G2/M期停止を誘導する細胞周期チェックポイントであることを明らかにしました。LKB1-MARK3経路が機能異常に陥っている卵巣がんは、代謝性ストレスに対する脆弱性が高まり、予後不良を引き起こすと考えられます。

 本研究は、科学雑誌『Communications Biology』オンライン版(1月11日付)に掲載されました。

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