【プレスリリース】ラミニンβ2鎖の変異による腎障害メカニズムの解明

2021年03月23日研究

-遺伝的要因による蛋白尿の治療法開発に期待-

東京薬科大学・薬学部・病態生化学教室の吉川大和准教授および東京大学・大学院医学系研究科・小児医学講座の張田豊准教授、山形大学・医学部・小児科の橋本多恵子助教らの研究グループは、糸球体基底膜の構成分子であるラミニンβ2鎖の異常による腎障害のメカニズムを明らかにしました。

糸球体の基底膜は、血液をろ過して尿を生成するフィルターとして機能する膜状の構造体です。ラミニンβ2鎖は、ラミニン-521のサブユニットであり、糸球体基底膜のろ過機能に関わっています。ラミニンβ2鎖の欠損は、神経や目の異常と尿中に蛋白を多量に漏出する重症のネフローゼ症候群を合併するピアソン症候群を引き起こすことが知られています。しかしながら、日本人で同定されたLAMB2遺伝子の特定の変異では腎臓の異常(蛋白尿)だけを呈します。LAMB2の様々な変異により重症度の異なる病態が発症するメカニズムの解明が求められていました。

本研究では、腎臓にのみ異常をきたす変異がラミニンβ2鎖の一部に多いことに着目しました。まずこれらの変異(p.R469Q, p.G699R, p.R1078C)が、古典的なピアソン症候群を起こす変異と異なり、ラミニンβ2鎖を欠損させるものではないことを見出しました。さらに生化学的な解析により、その変異がヘパリン結合性およびラミニン結合性などを上昇させ、ラミニン-521によるフィルター形成を妨げることで選択的なろ過機能が失われ、血漿蛋白を漏出させる可能性を明らかにしました。

ラミニンβ2鎖の新たな機能を明らかにし、特定の変異がなぜ腎臓病を起こすのかというメカニズムの解明は、変異の種類に応じた症状の予測や、メカニズムに基づいた治療法の開発に繋がるものと期待されます。

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