【プレスリリース】臓器透明化(CUBIC)を用いて腎臓全体の交感神経系の3次元構造を可視化し、その機能障害を解析

2019年04月09日研究

腎臓は血液をろ過して尿を生成することで老廃物を排出し、体内の環境を一定に保つ働きをしています。腎臓の複雑な動きを制御するために交感神経系が重要な働きを担っていると考えられてきましたが、これまで腎臓における神経系の3次元構造を把握することは困難でした。

東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科の長谷川 頌医師・南学 正臣教授らは、大学院医学系研究科 システムズ薬理学の洲﨑 悦生講師・上田 泰己教授らが開発した臓器透明化手法「CUBIC」を用いてマウスの腎臓を透明化し、3次元免疫染色を組み合わせることで腎臓全体の交感神経の構造を把握することに成功しました。

その結果、交感神経は動脈の周囲を取り巻くように走行していることが明らかとなり、交感神経が動脈の収縮を制御していることが裏付けられました。また、腎臓の虚血再灌流障害(腎臓の血流が一時的に急激に低下することによる障害:急性腎障害)後に、交感神経の機能異常が長期間にわたって遷延していることを明らかにしました。急性腎障害が慢性腎臓病に移行するメカニズムには未解明の部分が多いですが、今回見出した腎交感神経の機能異常が病態に影響している可能性もあり、今後の研究につながる成果です。

さらに研究チームは、交感神経・動脈だけでなく、腎臓の他構造(集合管・近位尿細管・糸球体)を臓器全体で可視化することにも成功しました。この臓器透明化(CUBIC)と3次元免疫染色を組み合わせた観察法は、今までにない包括的な視点を提供することで、今後の腎臓病研究において強力なツールとなることが期待されます。

本研究成果は、日本時間2019年4月9日に、国際学術誌Kidney Internationalにオンライン掲載されました。

※詳細は添付ファイルをご覧ください。

ファイルを保存される方は、マウスの右クリックから「対象をファイルに保存」、「名前をつけて保存」などを選択して保存して下さい。