【プレスリリース】 慢性の脳虚血がアルツハイマー病を加速させるメカニズムを解明

2019年02月26日研究

東京大学医学部附属病院神経内科坂内太郎登録研究員、間野達雄助教、岩田淳講師らは、高血圧や糖尿病による動脈硬化が慢性的な脳血流低下(慢性脳低灌流)を引き起こし、高齢者のアルツハイマー病(AD)を加速するメカニズムを明らかにしました。アルツハイマー病(AD)の患者さんを対象とした観察研究から、高血圧や糖尿病などが原因の動脈硬化による慢性的な脳血流の低下(慢性脳低灌流)が、ADの症状を進行させることが知られていました。特に、慢性脳低灌流は、ADの病状に大きくかかわる物質であるアミロイドβ(Aβ)によって構成された老人斑の形成も促進することが分かっていましたが、その詳細な機構は不明でした。そこで、 ADのモデルマウスに対して持続的に脳血流の低下を生じさせる処置を施し、脳内のAβの状態がどのように変化するかを検討しました。処置を受けたマウスでは、より大きな老人斑がみられるようになりましたが、Aβの総量は変わりませんでした。Aβにはお互いにくっつきやすい性質があります。処置を行ったマウスの脳でも、もともとばらばらに存在していたAβ分子が集まって、より毒性の高い高分子量Aβオリゴマーを形成していることが判明しました。これは、慢性脳低灌流によって脳の細胞と細胞の間を流れる間質液の動きがゆっくりになった結果、よどんだ間質液の中でAβ同士がよりくっつきやすくなってしまうことが原因であると考えられます。本研究成果は、アルツハイマー病の進行を遅らせるために、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の管理をすることが有用であることを示唆していると考えられます。

本研究は東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻神経病理学分野、東京医科歯科大学難治疾患研究所神経病理学分野との共同研究で行われ、日本時間の2月26日に学術誌Scientific Reports(オンライン版)にて発表されました。

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