【プレスリリース】 B型肝炎ウイルスの治療薬候補「ペボネジスタット」を新たに同定

2019年01月11日研究

B型肝炎ウイルス感染者は世界中で20億人、そのうち持続感染者は2.57億人、さらに年間90万人がB型肝炎ウイルス関連疾患で死亡しています。B型肝炎の克服は日本国内のみならず世界的な重要課題です。B型肝炎の長期予後改善のために、ウイルスタンパクであるHBs抗原の陰性化「Functional cure」が治療目標として掲げられていますが、既存のB型肝炎治療薬では達成困難であり、新薬の登場が切望されています。そうした中、ウイルスタンパクHBxによる、宿主ユビキチン・プロテアソーム系を介した宿主タンパクSmc5/6の分解がもたらすウイルスの複製促進機構が明らかとなり、新たな治療標的として注目されていました。

そこで、東京大学医学部附属病院 消化器内科の關場一磨 大学院生、大塚基之 講師、小池和彦 教授らの研究グループは、Smc5/6タンパクが宿主ユビキチン・プロテアソーム系によって分解されること、また、このユビキチン化にはネディレーションによるユビキチン化酵素の活性化が必要なことに注目し、ネディレーション阻害薬であるペボネジスタット(Pevonedistat)がB型肝炎の新規治療薬となり得ると考えました。そして実際に、ペボネジスタットはネディレーションを阻害することによって、Smc5/6タンパクの分解を阻害して機能を回復し、ウイルスRNAをはじめとしたウイルス産物量を強力に抑えるという、既存のB型肝炎治療薬には無い効果を有することを、初代ヒト肝細胞を用いた検討などで明らかにしました。ペボネジスタットは白血病領域を中心とした悪性腫瘍の治療薬として開発が進められており、今後早期のB型肝炎治療薬への応用が期待されます。

本研究成果は、米国肝臓病学会誌『Hepatology』に掲載されるのに先立ち、米国東部時間12月26日にオンライン版にて公開されました。なお、本研究は日本医療研究開発機構(AMED)肝炎等克服実用化研究事業の肝炎等克服緊急対策研究事業(研究開発課題名「B型肝炎ウイルスRNAと相互作用する宿主因子の網羅的同定とその制御による病態制御法開発」研究代表者:大塚基之)および文部科学省科学研究費補助金などの支援により行われました。

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