【プレスリリース】心筋梗塞の新たな治療ターゲットを発見
2022年11月18日研究
―心筋梗塞の後に生じる時間的・空間的な遺伝子発現の変化を網羅的に解析―
心筋梗塞は、心臓に血液を供給する冠動脈が閉塞することで生じる代表的な循環器疾患の一つです。発症後の急性期にうまく救命できても、その後に慢性心不全を来すことが多く、その医療費負担は日本のみならず世界的な問題となっています。
本研究で、東京大学医学部附属病院循環器内科の候聡志特任助教、野村征太郎特任助教、山田臣太郎特任研究員、初瀬慧医師、小室一成教授、東京大学の油谷浩幸名誉教授らの研究グループは、シングルセル解析と空間的遺伝子発現解析を活用し、心筋梗塞後に心臓の中のどこにある細胞がどのような遺伝子を働かせているかを経時的に明らかにしました。そして、心筋梗塞後の急性期に梗塞領域の周辺の心筋細胞でCsrp3というメカノストレス応答遺伝子が活性化し、それが慢性期に生じる心機能の悪化を防ぐ役割を果たすことを解明しました。本研究は心筋梗塞の新しい治療法の開発に寄与するのみならず、本研究によって得られたシングルセル解析や空間遺伝子発現解析のデータは同分野の新たな研究開発に役立つと期待されます。
本研究成果は日本時間11月18日に英国科学雑誌 Nature Cardiovascular Research にて発表されました。なお、本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業「心筋梗塞における時空間的シングルセル解析による病態解明と治療法開発」(研究開発代表者:野村征太郎)、同事業「空間的シングルセル解析によるHFpEFの病態解明」(研究開発代表者:小室一成)、革新的先端研究開発支援事業(PRIME)「心臓ストレス応答における個体シングルセル四次元ダイナミクス」(研究開発代表者:野村征太郎)、ゲノム医療実現推進プラットフォーム事業「マルチオミックス連関による循環器疾患における次世代型精密医療の実現」(研究開発代表者:小室一成)、革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「心筋メカノバイオロジー機構の解明による心不全治療法の開発」(研究開発代表者:小室一成)、再生医療実現拠点ネットワークプログラム「心筋細胞を標的とした遺伝子治療・変異修復治療による心臓疾患治療法の開発」(研究代表者:野村征太郎)、日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究S「非分裂細胞である心筋細胞のDNA損傷と老化による心不全発症機序の解明と応用」(21H05045,研究代表者:小室一成)、日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究A「複合的アプローチによる心臓システム構造の統合的理解とその制御」(22H00471,研究代表者:野村征太郎)、日本学術振興会科学研究費助成事業若手研究「心筋梗塞後組織修復及びリモデリングにおける一細胞レベル病態ダイナミクスの解明」(19K17587,研究代表者:候聡志)、科学技術振興機構創発的研究支援事業「心筋細胞の可塑性に着目した心不全の層別化と治療法の開発」(JPMJFR210U, 研究代表者:野村征太郎)等の支援により行われました。
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