【プレスリリース】免疫の個人差をつかさどる遺伝子多型の機能カタログを作成

2021年04月30日研究

-多様な免疫細胞ごとの違いと疾患による修飾が明らかに-

免疫が病態に関わる疾患は自己免疫疾患や自己炎症性疾患など多様にあり、その多くは発症の原因が不明で、難病に分類されます。これまでゲノムワイド関連解析(GWAS)で疾患の発症と関わる多くの遺伝子多型が同定されてきました。しかし、その多型がどのように疾患発症に関わるかを解明するには、疾患と関わる細胞の遺伝子発現とゲノム配列を組み合わせた大規模なデータベースが必要でした。

この度、東京大学の太田峰人特任助教、藤尾圭志教授、理化学研究所の山本一彦センター長、中外製薬株式会社の角田浩行創薬基盤研究部長らの研究グループは、免疫疾患患者および健常人、計416例の末梢血(血管の中を流れる血液)から分取した28種類の免疫細胞9,852サンプルを解析し、過去の報告を大きく上回る規模の遺伝子発現データベースを構築しました。さらに、ゲノム配列との関連を解析し、これらの免疫細胞における遺伝子多型の機能についてのカタログを作成しました。このデータを既報のGWASデータと組み合わせて解析することで、さまざまな免疫疾患と関連する細胞種や遺伝子を明らかにしました。

今回作成したカタログは、免疫が関連する疾患・形質の原因解明に役立つものと考えられます。また、ゲノム機能のデータベースは、これまで欧米人主体に作成されてきましたが、アジア人とのゲノム構造の違いが課題となっていました。本研究により日本発のカタログを作成したことで、アジア人を対象としたゲノム研究の発展や、欧米人のデータとの統合解析によるゲノム機能の詳細な解明に役立つことが期待されます。

なお本研究は、中外製薬株式会社との共同研究費、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究成果展開事業 共創の場形成支援(センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業、免疫アレルギー疾患実用化研究事業の支援により行われ、日本時間4月30日に米国科学誌『Cell 』(オンライン版)に掲載されました。



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