【プレスリリース】脳全体に広がる聴覚応答の新たなネットワークを発見

2021年04月28日研究

ガンマオシレーションは、神経細胞が発する信号のひとつで、脳の情報処理基盤に関わると考えられてきました。特に、音を聞かせた時にみられる聴覚ガンマオシレーションは、中枢性聴覚疾患や精神疾患において低下していることが知られていましたが、単純な音に対する反応であるため、長年、聞くことに特化した脳部位(側頭葉の聴覚皮質)から発生すると考えられてきました。また、通常の研究で用いられる脳波計では、頭皮上から信号を検出するため、脳内発生源の全容を知ることは困難でした。

東京大学医学部附属病院精神神経科の多田真理子助教、笠井清登教授、脳神経外科の國井尚人助教(特任講師(病院))らの研究グループは、聴覚ガンマオシレーションが認知機能に関わる前頭葉や頭頂葉にまで広がる複雑なネットワークで発生することを明らかにしました。これは、難治性てんかんの手術治療前に、てんかんの発生源を正確に診断する目的で、脳表面に多数の電極を直接設置した患者さんのご協力により実現した研究です。疾患の影響を最小限にするために、てんかん発生源が異なる患者さんの計測データを組み合わせて解析を行いました。突然起こるてんかんの異常脳波を逃さず記録するため、患者さんは入院病棟で電極を留置したまま過ごします。この研究は同大学医学部倫理委員会で審査を受け、病棟で脳波記録中の方のうち、自由意志に基づく研究参加にご協力頂いた方を対象に行いました。

この結果は、統合失調症などの精神疾患で低下している聴覚ガンマオシレーションの発生メカニズムの理解につながり、将来の診断や治療の開発に役立つことが期待されます。

なお、本研究は、革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト「候補回路型・双方向トランスレーショナルリサーチによる脳予測性障害の回路・分子病態解明(領域代表者:小池進介)」による支援を受けて行われ、米国科学誌「Cerebral Cortex」(オンライン版:日本時間4月28日)に掲載されました。

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