【プレスリリース】 微弱なノイズ電流により、高齢者の体のバランスが持続的に改善する

2016年11月22日研究

内耳に存在する前庭器官は身体のバランスを保つのに重要な役割を果たしており、前庭の働きが悪くなると身体のバランスが悪くなります。高齢者の前庭障害は、従来の治療では改善しないことが多く、有効な治療法がありません。

東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・聴覚音声外科の藤本千里助教、岩﨑真一准教授、山岨達也教授らの研究グループはこれまでに、耳の後ろに装着した電極より微弱なノイズ電流を加える、経皮的ノイズ前庭電気刺激(nGVS)により、健常者と両側前庭障害を有する患者において、身体のバランスが著明に改善することを明らかにしました。ただこれまでの研究は、短い時間(30秒間)の刺激中の改善が示されただけであり、長期的な改善の有無については明らかではありませんでした。

本研究では、高齢な健常者に30分間nGVSを加えたところ、刺激を停止した後も数時間にわたり身体のバランスが安定化する、という新しい現象をとらえました。この研究成果は、常に電流の刺激をしなくても身体のバランスが持続的に改善することを示し、治療への応用に有効であると考えられます。

本研究グループは今後、nGVSの両側の前庭障害を有する患者に対する長期的なバランス改善効果を証明する試験を行う予定であり、その効果が証明できれば、nGVSが両側前庭障害によるバランス障害に対する、世界初の科学的信頼性の高い治療法となるものと期待されます。

なお、本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の「障害者対策総合研究開発事業」の支援によって行われたものであり、日本時間11月21日にScientific Reportsにて発表されました。

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