【プレスリリース】オキシトシン経鼻剤連日投与による自閉スペクトラム症中核症状の改善を世界で初めて実証
2015年09月04日研究
~新しい治療法の確立をめざして~
東京大学医学部附属病院 精神神経科 山末英典准教授らは自閉スペクトラム症と診断がつく20名の成人男性を対象にランダム化二重盲検試験を探索的に行い、オキシトシン経鼻剤の6週間連続投与によって対人相互作用の障害と呼ばれる自閉スペクトラム症の中核症状が改善することを発見しました。この症状の改善は内側前頭前野という脳領域での安静時機能的結合の改善と相関していました。今回の連続投与において、1回の投与時の効果と同様に、表情や声色を重視した他者理解の頻度の増加やその際の内側前頭前野の脳活動改善が認められましたが、6週間投与を続けても1回の投与と概ね同等の効果を得ました。
これまでに、実験室内における自閉スペクトラム症の方へのオキシトシン経鼻剤の1回投与による心理検査の成績や脳機能の改善は繰り返し報告されており、同剤が自閉スペクトラム症中核症状に対する初の治療薬となることが期待されていました。しかし、自閉スペクトラム症中核症状そのものに対するオキシトシン連日投与のランダム化比較試験では、いずれも主要評価項目への有意な効果を見出すことに失敗していました。本研究では、対人場面でのコミュニケーションが困難という自閉スペクトラム症中核症状そのものに対して改善効果があること、さらにはこの自閉スペクトラム症中核症状そのものの改善が脳機能の改善と相関することを世界で初めて実証しました。
自閉スペクトラム症中核症状の治療薬として、オキシトシン経鼻剤の臨床開発を更に進める根拠となりうるこれらの結果は、日本時間9月4日に英国科学誌Brain(電子版)にて発表されます。なお、すでに現在、東京大学で先行して行った本臨床試験の結果を114名の新たな参加者で確認するために、東京大学、名古屋大学、金沢大学、福井大学の4大学が連携し、臨床試験Japanese Oxytocin Independent Trial (JOIN-Trial)を行っています。
JOIN-Trial は、日本医療研究開発機構「脳科学研究戦略推進プログラム」の「精神・神経疾患の克服を目指す脳科学研究(課題F):発達障害研究チーム(拠点長:名古屋大学・尾崎紀夫)」(平成27年度に文部科学省より移管)の一環として行なっています。
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