【プレスリリース】注意欠如多動性障害の薬物治療効果を予測するための客観的な指標の開発へ

2015年05月04日研究

小児の注意欠如多動性障害(ADHD)の薬物治療のひとつとして、塩酸メチルフェニデート(MPH)の内服があり、ADHDを患う約70%の小児ではその症状を改善する効果があるといわれています。しかし、副作用として食欲低下や睡眠への影響があり、小児の成長に影響をもたらす場合があるといわれているため、効果のない患児の内服はできるだけ減らしたいという考えもあります。一方、MPH が有効であるにもかかわらず、依存性や副作用を懸念するあまり使用を避けることで、症状の改善が図られないという問題も生じています。そのため、継続的な内服の前に薬物治療の効果を予測するための客観的な指標があればこれらの課題が解決できる可能性があります。

東京大学大学院医学系研究科こころの発達医学分野の石井礼花助教、金生由紀子准教授、同精神医学分野の笠井清登教授らの研究グループは、安全で簡便な脳機能検査法である光トポグラフィー(NIRS)を用いてADHD患児に対して行ったランダム化比較試験にて、内服前に比べてMPH を1回内服した後の光トポグラフィーの信号が高くなるほど、MPHを1か月継続して内服した後の治療効果が高いという結果を見出しました。さらに、1年間内服した後のMPHの治療効果についても同様の結果を得ました。内服前、および1回の内服後の光トポグラフィーの信号変化により、長期的なMPHの効果を予測できる可能性を示しました。

本研究の成果によって、MPHの継続的な内服前に行った光トポグラフィー検査が、ADHDの薬物治療の効果予測に役立つ可能性を示したことにより、今後ADHDの患児や家族に負担をかけない治療の選択ができる可能性が期待されます。

これらの成果は、日本時間 5 月4 日にNeuropsychopharmacology 誌にて発表されました。

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