【プレスリリース】膵臓手術で発生する「膵液の漏れ」を可視化する蛍光イメージング法を開発

2013年06月14日研究

―消化器手術の「見えざる敵」に挑む新技術―


 膵臓手術に際して、致死的な合併症につながる可能性のある「膵液漏」を予防し、安全に術後管理を行う方法を確立することは、消化器外科に残された最大の課題です。この課題を解決するためには、無色透明である膵液を可視化して、膵液漏出の有無や漏出箇所を手術中に正確に検出する技術の開発が必要です。

 東京大学医学部附属病院と医学系研究科の研究グループでは、膵液中の蛋白分解酵素(キモトリプシン)と反応して、速やかに緑色の蛍光を発するプローブを作成することに世界で初めて成功しました。このプローブを、患者さんの膵臓の断端(手術でがんを切除した際の切り口)を転写した濾紙に噴霧し、濾紙に青色光を照射しながら黄色のフィルターを通して観察して、緑色に発光している部位があるかどうかを調べることで、膵液漏出の有無や漏出箇所を手術中に同定することができました。さらに、手術後にドレーン(体液を体外に排出する管、用語解説3)から流出する体液中の蛋白分解酵素活性を測定することにより、膵液漏が重症化するリスクを評価することができました。

 このプローブを患者さんの体内に直接噴霧することはまだできませんが、上記の技術を応用することにより、手術中に膵液の漏出部位を閉鎖して膵液漏を予防することや膵液漏の重症度に応じて適切な術後管理を行うことが可能になると期待されます。

 この研究成果は、British Journal of Surgeryオンライン版にて、6月13日(英国時間)に発表されました。

 なお、このプローブの開発は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業・研究加速課題(光機能性プローブによるin vivo微小がん検出プロジェクト)として行いました。 


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