東大病院の目指す方向

「東大病院の目指す方向2013~2014年度版」の最終評価にあたって

東京大学医学部附属病院は、「臨床医学の発展と医療人の育成に努め、個々の患者に最適な医療を提供する」という理念の実現を目指し、日本の医学・医療の拠点として社会の期待に応えてきました。東大病院への期待は、高度な診療の実践、国際的に評価される医学研究、全人的医療人の育成という三位一体のバランスのとれたミッションの達成、とりわけ明日の医療・医学を切り拓く国際的に評価される臨床医学研究・先端医療開発とその実践にあると考えます。

当院のミッション達成に向けて、東大病院をさらに発展させるための指針として、2013年度に「東大病院の目指す方向2013~2014年度版」を策定しました。この中では、1. 高度急性期医療を中心に広範囲の医療を実践するための、診療機能やリスクマネジメント体制の強化、チーム医療や地域医療連携の推進を図るための取り組み、2. 世界トップレベルの臨床医学研究・先端医療開発の拠点構築に向けた取り組み、3. 明日の臨床医学・次世代医療を担う研究マインドを持った医療人の育成に向けた取り組み、4. 診療・研究・教育のバランスのとれたミッションの達成に向けた教職員の戦略的配置に向けた取り組み、5.機動性の高い組織運営体制の確立に向けた取り組み、の5つの大綱のもと25項目のアクションプランを策定し、その実現に向けて当院の全職員が心と力を合わせて取り組んでまいりました。

今般、「東大病院の目指す方向2013~2014年度版」の最終評価を行いましたので、その概要を公表いたします。概要に記載されていますように、この2年間当院は、多様なニーズに対応する診療機能のさらなる向上、高度急性期医療提供機関としての地域医療連携の強化、安全・安心・納得の医療のさらなる推進、研究倫理の徹底と臨床研究体制の整備、国際的に評価される臨床医学研究や先端医療開発の発信と実践、次世代を担う医療人育成プログラムの一層の充実、メディカルスタッフの人員増と適切な配置、クリニカルリサーチセンターや入院棟Ⅱ期などの着工と開設に向けた準備の開始、経営基盤の確立に向けた対策の推進など多くの点で、果たすべき役割の達成に向けて確かな歩みを進めることが出来ました。2014年12月受審の病院機能評価においても高い評価を得ることが出来ました。これはひとえに、当院の職員が一丸となって取り組んだ結果であるとともに、皆様のご支援の賜であると考え、深く感謝いたします。

東大病院は、果たすべき使命に対する社会からの大きな期待に一層応えるために、「東大病院の目指す方向2013-2014年度版」の最終評価を道しるべとし、皆様のご意見を承りながら、これからも着実に歩んで参りますので、引き続きご支援を宜しくお願いいたします。

2015年3月31日
東京大学医学部附属病院
病院長    門脇 孝

1. 高度急性期医療を中心とした広範囲の医療を実践するための、診療機能や体制強化のための取り組み

高度急性期医療実践のためのさらなる取り組みとして、全病棟への薬剤師配置、ハイブリッドアンギオ装置などの将来を見据えた計画的な整備、高リスク患者治療などに対する診療科間の連携促進による院内横断的な診療機能の強化を行った。あわせて、逆紹介率の飛躍的向上などによる機能分化・地域医療連携促進、救急医療、光学医療診療などの部門の強化による診療機能の向上を実施した。また、医療安全、感染対策eラーニング受講率のほぼ100%達成などリスクマネジメントを文化として根付かせる取り組みを強化した。2014年12月受審の病院機能評価においても、高い評価を得た。

2. 世界トップレベルの臨床医学研究・先端医療開発の拠点構築に向けた取り組み

トランスレーショナルリサーチ(TR)センター、早期・探索開発推進室、臨床研究支援センターなどの研究支援組織の機能を強化するために、人材確保や処遇改善、業務内容の拡大を行い、また自立化に向けた対策を講じた。クリニカルリサーチセンターやライフ・エネルギー分子技術総括棟の建設を開始し、その運営や活用の体制を整備した。研究倫理問題に対しては、倫理セミナー・eラーニングなどの教育の強化、臨床研究の適正化委員会による倫理審査や利益相反管理の改善、臨床研究を管理する部門としての臨床研究ガバナンス部の設置などを実施した。

3. 明日の臨床医学・次世代医療を担う研究マインドを持った医療人の育成に向けた取り組み

次世代を担う医療人育成のためのさらなる取り組みとして、総合研修センターのさらなる機能強化と教育担当教職員の新たな配置により、各部門・各職種の教育・研修を充実化した。また研究推進のための各部門・各職種における人材養成支援、教職員のキャリアパス支援、臨床研修プログラムの改善、高度医療クラーク育成プログラムの一層の充実を実施した。研修医教育に貢献した教員への表彰制度として優秀指導医賞を創設し、メディカルスタッフ管理者ポストとして病院長発令主任や病院長発令副看護師長を新設してキャリアパス支援を行った。また、病院長と研修医の意見交換会、研修医アンケートなどによる研修医の意見を汲み取るシステムを確立した。

4. 診療・研究・教育のバランスのとれたミッション達成に向けた教職員の戦略的配置に向けた取り組み

戦略的人員配置は、111名と大規模の配置を行った。特に病棟薬剤師20名の配置をはじめ、メディカルスタッフを中心とした増員を達成した。また、入院棟Ⅱ期開設に向け、医師・看護師・その他のメディカルスタッフの段階的増員案を策定し、これを開始した。さらに教育機能の強化のために教育研修担当助教を配置した。これら戦略的人員配置の効果を最大限に発揮させるため、高度医療クラークや研究クラークなどの充実や、病児・病後児保育などの男女共同参画のための支援制度を充実させた。

5. 機動性の高い組織運営体制の確立に向けた取り組み

機動性の高い組織体制の確立に向けて、院内横断的部門の機能強化を行うとともに災害対策マニュアルを改訂し、災害拠点病院として危機管理体制をより一層強化した。また、入院棟Ⅱ期開設に向けて移転計画や改修計画の検討を開始した。経営基盤の確立に向けた特別病棟や特別外来の整備充実、医療材料の見直しや後発医薬品のさらなる導入を行い業務サイクルへ定着させた。一方で、保険診療の総合的検証を行う体制を整えるとともに、保険診療のあり方、特に消費税に関して対外的にも発信した。さらに、メディアを通じた対外広報の充実を実施するとともに、教職員への情報共有体制強化により重要な情報を確実に伝達するための方法を構築した。

「東大病院の目指す方向2013~2014年度版」