東大病院の目指す方向
「東大病院の目指す方向2011~2012年度版」最終評価
東京大学医学部附属病院は、「臨床医学の発展と医療人の育成に努め、個々の患者に最適な医療を提供する」という理念の実現を目指し、日本の医学・医療の拠点として社会の期待に応えてきました。
東大病院への期待は、高度な診療の実践、国際的に評価される医学研究、全人的医療人の育成という三位一体のバランスのとれたミッションの達成、とりわけ明日の医療・医学を切り拓く国際的に評価される臨床医学研究・先端医療開発とその実践にあると考えます。これらの課題の実現に向け、東大病院をさらに発展させるためには、教職員増員とその戦略的配置や研究・開発の活性化支援を最優先課題とした大胆かつ迅速な改革が必要と考えました。「東大病院の目指す方向2011~2012年度版」はそのための指針として、2011年度に策定したものです。
今般、「東大病院の目指す方向2011~2012年度版」の最終評価を行いました。100名規模での戦略的人員増、外科系・麻酔科の活性化支援、早期・探索的臨床試験拠点事業整備をはじめとする臨床研究や高度先端医療開発の支援体制の整備、医療安全対策・感染対策のさらなる強化、災害医療マネジメント部や国際診療部の設置、クリニカルリサーチセンターや入院棟Ⅱ期などの将来構想の実現と具体化、資源を最大限活用した病院運営・経営の実践などを達成することが出来ました。これはひとえに、東大病院の教職員が一丸となって取組んだ結果であるとともに、医学部・大学本部、そして社会全体のご支援の賜であると考え、深く感謝致します。東大病院にとって懸案であった三位一体のバランスのとれたミッションの達成の方向に、確かな歩みを開始出来たと考えます。
来年度以降も引き続き、未だ達成していない目標の実現を図るとともに、1. あらゆる医療ニーズに対応する超高機能病院・インテグラルホスピタルに向けた東大病院の発展、2. 世界トップレベルの臨床医学研究の拠点に向けた東大病院の発展、3. 明日の臨床医学・次世代医療を担う研究マインドを持ったグローバル人材の育成成、というミッションの達成に向けて、より一層の改革を推進することが必要です。そのためには、東大病院の教職員が、診療・研究・教育とその支援にそれぞれの目標を持ち、さらなる発展を目指していくことが不可欠です。
現在、東大病院は、大きく変革しつつありますが、果たすべき使命に対する社会からの大きな期待に応えるために、「東大病院の目指す方向2011-2012年度版」の最終評価を道しるべとし、これからも着実に歩んで参ります。
2013年3月13日
東京大学医学部附属病院
病院長 門脇 孝
1. 診療機能のさらなる向上と入院棟Ⅱ期構想の実現
高度急性期医療実践の体制をさらに整備し、医療安全・感染対策の強化などにより、高い病床稼働率を維持した。国際診療部を設置し、グローバル化へのより相応しい対応の整備を開始した。院内横断的な診療体制の強化を図り、医療の質のさらなる向上に向けて継続的な取り組みを行っている。入院棟Ⅱ期開設に向けて人員確保と養成の計画を立案した。
2. 臨床研究と先端医療開発のさらなる活性化とクリニカルリサーチセンター構想の実現
臨床研究と先端医療開発のさらなる活性化のために、早期・探索的臨床試験拠点、および橋渡し研究加速ネットワーク研究支援拠点に応募し採択された。シーズ探索から臨床試験まで充実した拠点体制を構築するため、橋渡し研究センターの運営体制を強化し、早期・探索開発推進室とPhase 1ユニットを新設して、これらの部署や臨床研究支援センターに教職員の配置を強化した。また、先端医療開発支援管理委員会を設置し、臨床研究部門の連携を促進した。クリニカルリサーチセンター構想は具体化し、事業者選定と設計作業を行い、建築に着手した。これらの結果、発表論文数や研究費獲得件数・額などが増加した。
3. 診療・研究・教育のバランスのとれたミッション達成に向けた教職員の増員と戦略的配置
医療プロセス指標、残業時間、休暇取得などの勤務状況により評価した上で、教職員の増員と戦略的配置を行った。対前年度で比較すると診療実績はおおむね向上し増収に結びついた。また、他科からのコンサルテーション件数などの診療連携も進み、外科系においては手術件数の増加にもつながった。その他、病院教授称号付与制度の創設や新たな手当の設置、保育園開園時間の延長など、勤務環境の充実を図った。
4. 東大病院の将来を支える人材養成
総合研修センターでは、当院の医療職の人材養成の観点から、研修医および指導医の実地指導のDVDを作成して供覧した。研修プログラムではeラーニングやビデオを用いた医療安全・感染対策研修、新規・中途採用者に対する講習会、病院長と研修医の意見交換会、研修医へのアンケート調査などを行った。また、高度医療クラーク養成プログラム講座の修了者を雇用した。さらに、センターの機能強化を引き続き行って人材養成の充実を図ること、女性医師・看護師の復職時の再教育、教職員のキャリア構築支援体制の強化、研究部門を支える人材の養成などの充実を図ることについては継続課題である。
5. 機動性の高い組織運営体制のさらなる確立
病院の運営に関しては、予算執行において設備の配分決定の迅速化を図り、新年度における早期稼働、それによる早期の収入確保を図る体制を整備した。人的資源の活用に関し、大学本部との情報交換を通じ、大学病院に欠くことの出来ない人材の雇用を確保する必要があることから、協議の上、助教から講師への振替(2名)の承認をとるなど、病院経営を支える大学本部の理解を得ることが出来た。災害時の危機管理を確立させるため災害医療マネジメント部を設置し、院内体制の整備はもとより、関係省庁との連携体制を構築しつつある。