東大病院の目指す方向

「東大病院の目指す方向2017~2018年度版」の最終評価にあたって

東京大学医学部附属病院には、「臨床医学の発展と医療人の育成に努め、個々の患者に最適な医療を提供する」という理念があります。この理念を達成し、東大病院が社会から求められている日本の医学・医療の拠点としての機能を果たすために、当院では2年毎に「東大病院の目指す方向」と題するアクションプランを立て行動してきました。最新のプランは、「東大病院の目指す方向2017~2018年度版」として、2017年に作成し、診療、研究、教育、運営の4章に、合計20 項目のアクションプランを掲げ実現化を進めて来ました。 この最終評価は、この 2 年間のアクションプランの達成度を自己評価して、東大病院の活動をまとめたものです。1)達成した事項、2)新たな課題として次期執行部へ 引き継ぐべき事項に分けてまとめています。

この間の大きな成果として新入院棟Bの開院がありました。救急病棟や高度心不全治療センター、予防医学センターなど、充実した設備で稼働しています。救急部は改組し、救急科と救命救急センター・ERを設置しました。また、電子カルテシステムを更新し、ニュークックチルの新しい給食システムも導入しました。現在、改修工事中の入院棟A2,3階では、PICU、NICU、MFICU、GCUなどが拡大し、次年度当初には移転できる見こみです。新たな設備で大きく飛躍することを期待しています。研究面では、既に2016年度末に臨床研究中核病院に承認されていましたが、その責務を果たすため、臨床研究支援センターと臨床研究ガバナンス部の体制強化を行い、医師主導治験などの実施件数を伸ばしました。2018年には、がんゲノム医療中核拠点病院に指定され、病院にゲノム診療部を新設して「遺伝子パネル検査(Todai OncoPanel)」の先進医療を開始しました。また、2018年度から施行された臨床研究法への対応も着々と進めました。教育面では、新入院棟Bの中に総合研修センターを拡大し、シミュレーションセンターや研修医のための施設を充実させました。また、2018年度に始まった新専門医制度への対応を行いました。運営面では、経営戦略会議を立ち上げ、病院の診療機能を強化しつつ安定した経営基盤を確保する体制を整備しました。臨床研究棟A-Ⅱ期もいよいよ完成するところで、次年度は移転があります。新たなにクローズアップされた最も大きな課題は、医師の働き方改革への対応です。医療の質向上ばかりでなく、医療従事者の健康を守るための新たな対応が求められています。

これらの課題を達成するためにご尽力いただいた教職員の方々にあらためて感謝いたします。東大病院がその理念を達成し、ますます飛躍するためには、教職員が一体となって誠心誠意努力を続けて行くことが必要です。次年度の新体制においても、引き続きのご支援をお願いいたします。

2019年3月吉日
東京大学医学部附属病院
病院長   齊藤 延人

1. 個々の患者へ最適な医療を安全に提供するために、難度の高い急性期医療を中心とした診療機能の強化と体制強化を目指した取り組みを行う。

入院棟Bが開院し、高度心不全治療センターや消化器センターを開設、救命救急センター・ERを充実させた。また、診療科内センターの設置を推進し、診療機能の強化を実現するとともに、未病対策を推進するために予防医学センターの拡充を行った。

また、がんゲノム医療中核拠点病院の指定を受けて先進医療を開始するとともに、クリニカルパスの活用をより一層推進した。さらに、総合患者サービス部を設置し、個々の患者へ最適な医療を提供するための体制強化を行うとともに、特定機能病院の新しい承認要件に対応し、高度で新規性の高い診療が倫理的かつ安全に実施できる体制整備を行った。

2. 研究の支援・ガバナンス体制を強化し、様々な研究を幅広く活性化し、橋渡し研究、産学連携、国際共同研究を推進することで、グローバルなプレゼンスを向上させる。また、法改正等に適切に対応し研究倫理を遵守し、臨床研究中核病院としての役割を果たす。

臨床研究支援センターの体制を強化するとともに事務部研究支援課を新たに設置し、臨床研究と基礎研究の活性化を促進した。また、継続して第3期橋渡し研究拠点に採択される等、東大病院の強みを活かした橋渡し研究、産学連携、国際共同研究を推進した。さらに、ゲノム医療と研究を推進するとともに、がんゲノム医療中核拠点病院の指定を受け、先進医療「遺伝子パネル検査(Todai OncoPanel)」を開始した。

臨床試験専門病棟であるPhase1ユニットを30床へ拡張し、民間施設等では困難な臨床試験に対応可能となり、被験者の利便性及び試験の効率が向上した。一方で、臨床研究法に関連する院内での総則・規則を制定し、法改正等に適切に対応し研究倫理を遵守する体制を整えた。

3. 多職種の連携推進と専門性強化、教育機能の拡充、業務負担の軽減を目的として、適切な人材配置と体制整備、労務管理を行う。

多職種参加型研修の充実、新専門医制度に対応した専門研修プログラムの整備・運用、入院棟Bへの移転による総合研修センターの機能拡充により、多職種の連携と専門性の強化を図るとともに、教育機能を向上させた。高度医療クラークや医師事務作業補助者をはじめとするメディカルスタッフの増員、就労管理システムの改善と裁量労働制を含めた教職員による利用拡大、安全衛生教育の推進により、働きやすい勤務環境の仕組みと労務管理を強化した。

4. 経営基盤の安定化、院内組織の活性化を図るとともに、法令改正に適切に対応する。また、再開発計画を検討・遂行し、入院棟B(工事名称:入院棟Ⅱ期)への移転を実行する。

経営基盤の安定化に向けて経営戦略会議を設置し、KPIを設定し継続的にフォローアップを行い、経営的課題に定常的に取り組む体制を強化した。全ての診療科に対してヒアリングを行い情報共有することで、経営基盤の安定化への意識が向上するとともに、病院全体で経営改善に取り組んだ。

また、会議資料の電子化や院内規程の整理に着手し院内組織の効率化、活性化を推進するとともに、医療安全や法令改正に対応した規則整備を行った。

さらに、再開発計画見直しWGを中心として、再開発計画の課題の整理と具体策を策定し、新入院棟Bへのスムーズな移転を実行した。

「東大病院の目指す方向2017~2018年度版」