○動作停止、一点凝視で開始
○口部自動症、衣服まさぐり等の自動症
○手指自動症は同側焦点、
四肢緊張異常肢位は対側焦点に多い
○発作の記憶を欠く
○発作後昏迷状態、緩徐な意識回復
○発作頻度は週、月の単位
脳波
MRI
脳梁は、全般性のてんかん発作の伝搬経路として重要な役割を有し、短時間で対側へ伝搬する異常波や、全般性の両側同期性棘徐波の主要な経路と考えられている。脳梁離断により、二次性全般化発作、全般性強直間代発作、全般性強直発作、非定型欠神発作などの発作頻度や発作重症度の減少効果が得られるが、特に良好な適応は転倒発作である。
転倒発作の本態は、強直発作、脱力発作、ミオクローヌス発作など様々だが、部分発作における崩れ落ちるような転倒と異なり、瞬間的に激しく転倒するので患者は生傷が絶えない。発達遅滞により立位保持が障害されている患者でも、坐位から頭部を激しく前屈させてテーブルに額を打ちつけるような発作も含まれる。転倒発作の患者は他の複数の発作型を併せ持つことが多いが、最も高頻度で生活上の支障となる発作は転倒発作であり、本人のみならず家族にとっても負担が大きい。このような発作に、脳波検査で広汎な両側同期性の突発性異常波が認められれば最も良い手術適応となる。
転倒発作に対する効果は初期の部分脳梁離断の報告では50-80%の症例で改善が得られたというが、全脳梁離断では90% 以上の症例で転倒発作が殆ど消失する。部分脳梁離断でも有効とする報告もあるが、特に小児では6ヶ月以内に発作の再発をみることが多く、長期的効果は全脳梁離断の方が明らかに高い。全脳梁離断では、発語減少、構音障害、失行などの症状が出現しうるが、思春期前の小児ではこれらの症状は出現しにくい。むしろ、多動の消失、認知機能の上昇など大脳機能の改善を認めることが多く、更に広汎な両側同期性脳波異常が大脳発達に与える悪影響を考慮すると、小児患者では脳梁離断により得られる利益が大きく、家族の総合的な満足度も非常に高い。
もともとは悪性脳腫瘍に対して導入された手術法であるが、片側大脳の広汎な焦点を有するてんかん発作に対して強力な発作抑制効果を発揮する。文字通りの半球切除hemipherectomyが行われることは今日では少なく、脳実質切除を少なくした機能的半球切除や線維離断を主とした半球離断hemispherotomyなどの術式が用いられる。
Hemiconvulsion-hemiplegia-epilepsy syndrome, Sturge-Weber syndrome, Rasmussen脳炎、片側巨脳症、片側大脳半球の広汎な皮質形成障害の他、外傷や血管障害による片側大脳の広汎な瘢痕回に伴う難治性てんかんが適応となる。患側半球の機能が廃絶している場合には適応判断に迷うことは少ない。対側の片麻痺と同名半盲、言語・記憶機能の健側支配を確認すれば良い。なお、運動機能については手指の巧緻運動を除いて健側脳からの同側支配が既に確立していることが多く、その場合、下肢は跛行ながら歩行可能で、肩関節はほぼ水平まで挙上することができる。患側半球の機能が廃絶していれば術後に新たな神経脱落症状が出現したり、既存の症状が悪化したりすることはない。
相対的適応として症例ごとに慎重な適応判断が必要なのは、患側半球に何らかの残存機能がある場合と、健側半球にもてんかん原性がある場合である。半盲がない症例では、発作によるdisabilityが高ければ、視野障害の出現を許容せざるを得ないこともあり、一般に除外項目とはみなされない。乳幼児の運動機能は、術後に健側脳からの同側支配の進展がある程度期待できるが、形成異常などで既に発達早期から健側支配が確立している例に比べると劣るようである。言語機能については側方性の確立は遅いので、乳幼児では問題になることは少ない。健側から独立したてんかん性異常波が出現する場合は発作抑制・精神運動発達とも手術成績がやや劣る。片側巨脳症に多い。ただし、このような場合でも術後発作が完全に消失することもあり、脳波のみで手術適応を完全に決定することはできない。また、広汎な皮質形成異常や片側巨脳症の乳幼児で発作重積状態に陥った場合には、準救急手術として半球切除が行われることもある。
VNSは、2010年に保険適用となった、てんかんに対する緩和的外科治療である。根治的な治療ではないが、侵襲性の低さや適応の広さから、近年国内でも急速に普及してきている。部分てんかん・全般てんかん、小児・成人を問わず行うことが可能である。焦点不明、広範焦点、多焦点、てんかん焦点切除後の発作残存、その他諸々の理由で開頭手術が困難なケースに対して有効な治療法である。ただし、明らかに根治可能なてんかん焦点が同定されている場合には、開頭手術が優先される。埋込手術においては、左の頚部と腋窩前方に小切開を行い、頚部の迷走神経に電極を巻き付け、前胸部に4cm程の刺激装置(パルスジェネレータ)を埋め込む。開頭手術ではないので手術時間は短く(1〜1.5時間)、術後の回復も早いという利点がある(入院期間は3日)。平均すると、約60%の患者さんで発作が半分以下に減る効果が得られる。特に前兆を伴うような二次性全般化発作に顕著な効果を示し、QOLの改善に大きく貢献する。発作抑制効果には即効性はないが、埋め込みから1〜2年かけて効果が現れ、それが長期的に維持されていく。発作頻度の減少以外にも、発作症状が軽くなり、発作後の回復が早くなる。迷走神経への刺激は、予め設定しておいた一定の時間(数分)毎に行われる。これに加えて付属のマグネットを使用することで、任意のタイミングで刺激を出すことができるため、1回毎の発作に対して対処することも可能である。外来の度に少しずつ設定を変更していき、最適な条件に設定していく。設定条件は、電流の強さ、周波数、刺激時間などいくつかの項目がある。経過中に嗄声、咳嗽、頚部の違和感が見られることがあるが、時間を置くことで和らいでいき、日常生活に支障が出ることはほとんどない。刺激条件やマグネットの使用状況にもよるが、ジェネレータのバッテリーは3-5年で使い切ることが多く、その度に交換が必要となる。脳梁離断同様、発作減少以外の附随的な効果として、情緒の安定化や認知機能の改善効果がある。