東京大学医学部脳神経外科

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脳の病気と治療

パーキンソン病や振戦などの不随意運動疾患

パーキンソン病や手の振えに対する外科治療

近年の治療技術の進歩により、パーキンソン病は健康な人とほぼ天寿を全うできる病気となっています。これに伴い現時点での治療の中心は、その進行を抑えることもさることながら、いかにうまく症状をコントロールしていくかということが重要となっています。DBS療法を行うことで、パーキンソン病の患者様でドパミン製剤の内服を減らすことが可能です。その上で、薬物治療の副作用による運動障害や症状の日内変動を著しく改善することが期待できます。

当科では、神経内科との協力により、適切な薬物治療にもかかわらず症状が充分コントロールされない方や、薬物の長期服用により症状の日内変動や不随意運動などの副作用でお困りの方にDBS療法と呼ばれる外科的治療を提供しております。DBS療法に関し、国内外で多くの治療経験を積んだ脳神経外科、神経内科の専門医が、共同で様々な症状でお悩みの患者さま、ひとりひとりに合った、最適の治療プロトコールを提供しています。

パーキンソン病や振戦に対するDBS療法

・DBS療法とは?

DBS療法とは、深部脳刺激療法(deep brain stimulation)のことです。脳の深部にある神経核に正確に電極を挿入し、神経核の働きをコントロールすることで、身体の動きに関する様々な問題を解決する治療法です。具体的には、手の振え(振戦)や、パーキンソン病患者でみられる筋肉のこわばり、体の動かし辛さや薬物治療の副作用に伴う運動障害を改善させる効果があります。治療成績では、視床下核という部分のDBS療法では、手術前と比べ内服しているドパミン製剤の量を平均55%減らすことができ、その上で薬が効いているときの症状を20%程度、薬が効いていないときの症状を60%程度改善させることが可能です。

・DBS療法がパーキンソン病の症状に効くメカニズム

脳の中心部は神経細胞の集合である大脳基底核といわれる部分が存在します。これは、周辺との神経線維結合によって尾状核、被殻、淡蒼球、視床下核などに区別され、運動機能の調節を行っています。この大脳基底核では、他の神経核の活動を興奮させたり、抑制させたりする神経伝達物質を含んだ様々な神経が複雑に連結して、回路が形成されています。黒質緻密部から放出されるドパミンという物質についても伝達される神経によって興奮性と抑制性の相反する働きがあり、これによって、運動を行う際の動作の微妙な調節を行っているのです。パーキンソン病の患者では、このドパミンが欠乏するため、淡蒼球内節や視床下核で、神経核の異常な過剰活動が観察されます。こうして、視床-大脳皮質投射が過剰抑制されることで、運動野の活動低下により動作が緩慢となり、さらに、淡蒼球から視床への出力の病的増大に加え、バースト発射などの異常活動の増加が、振戦や筋固縮などの症状に関与しているといわれています。

DBS療法が有効な症状と脳内のターゲット

DBS療法で電極を挿入するターゲットは、患者さまそれぞれの症状により異なります。それぞれのターゲットにより期待される効果は以下の通りです。

・視床下核に対する手術

視床下核をターゲットとしたDBS療法は、パーキンソン病の運動症状全般(筋固縮・振戦・寡動・姿勢反応障害)に有効であり、日内変動を軽減する効果もあります。又、最大の利点は、この手術の後はL-ドパ製剤の量を減らす事もできるため、症状の改善とともに薬物治療の副作用を抑えることにも有効です。パーキンソン病に対する深部脳刺激療法のターゲットとして最も選択されることが多い部位で、手術は左右両側性に電極を埋め込むことが一般的です。

・淡蒼球内節に対する手術

L-ドパ製剤の長期服用で誘発される不随意運動(ジスキネジア、ジストニアなど)を抑制する効果があります。又、筋固縮の強い症例に対しても効果的で、L-ドパ内服時のoff-periodの状態をon-periodの状態まで改善し、日内変動に効果的です。この手術でも、左右両側性に電極を埋め込むことが多いです。

・視床に対する手術

パーキンソン病の主症状である振戦に対して特に効果があります。振戦の他に筋固縮にも有効であり、これらが主な症状である患者では、視床腹中間核(Vim核)や外側核(VL核)がDBS療法のターゲットとなります。通常は、振るえのある側と対側の脳の一側性に電極を埋め込みます。両側に振るえのある患者や頚部などに認められる例では、視床下核や淡蒼球と同様に両側の手術が必要になることもあります。

担当医による詳しい説明・外来受診を希望される方へ

担当医による詳しい説明は、以下のホームページも御参照ください。http://www.nouproblem.jp/DBS/index.html

疾患・治療に関するご相談につきましては、東京大学病院の、担当医の外来を受診してください。その際、過去におとりになられた画像(MRI・CTなど)や検査結果、現在かかりつけの医師からの紹介状などがありますと、病状の判断に大変役立ちますので、お持ちください。一人一人の患者様をしっかりと診察させていただくため、「機能脳疾患外来」は完全予約制とさせていただいております。お手数ですが、東京大学医学部附属病院の外来予約センター(03-5800-8630、12:30-17:00)に電話をして予約をお取りください。

担当医師

脳神経外科 辛 正廣 (しん まさひろ)

神経内科  花島律子(はなじま りつこ)

連絡先

外来受診

東京大学医学部附属病院
〒 113-8655  東京都文京区本郷 7-3-1
電話 03-3815-5411(代表)

脳神経外科 機能脳疾患外来(毎週月曜日午後)

神経内科   DBS外来(毎月第4週目の水曜日午後)

完全予約制です。外来受診につきましては、東京大学医学部附属病院のホームページ(http://www.h.u-tokyo.ac.jp/)を、御参照ください。

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