原理
血液透析は、腎機能の一部を代替する治療法で、血液と透析液とを透析膜と呼ばれる分離膜を介して間接的に接触させ、拡散 (diffusion) と限外濾過 (ultrafiltration) により物質 交換や溶質除去を行うことです。
- 1.拡散
- 拡散とは、溶液内で溶質分子が、濃度の高い方から低い方へ移動することをいいます。また浸透 (Osmosis)とは、溶液内の溶媒である 水が、溶質濃度の低い方から高い方に移動することをいいます。いずれも 溶質の濃度差を推進力として、その差がなくなるまで移動し続けます。
- 2.限外濾過
- 透析膜に圧力差を与えると限外濾過が生じ、除水できます。
拡散と限外濾過(図)
血液透析の回路(図)
ブラットアクセス
- 1.一時的ブラットアクセス
- (適応)
急性腎不全患者、慢性腎不全患者で恒久的なアクセスのないもの、腹膜透析患者で一時的に血液透析が 必要なもの、あるいは血漿交換などを必要とする患者さんに対して、数時間から数週間の一時的なアクセスとして用います。
ダブルルーメンカテーテルというチューブを用います。そして、このカテーテルを内頸静脈、大腿静脈に挿入します。
- 2.恒久的ブラットアクセス ( 内シャント)
-
(適応)慢性腎不全からの血液透析導入の患者さんに対して用いられます。
(内シャントとは)
通常きき腕でないほうの前腕部の皮下で、橈骨動脈と橈側皮静脈とを吻合します。これは局所麻酔にて、約1~2時間の手術です。しかし、糖尿病や高度の動脈硬化で動脈が不良の人、著しく肥満した人、静脈の細い人などは手術が困難なことがあります。この内シャント作製は、血管が発達するのに最低2週間かかるので、血液透析導入に先だって行う必要があります。
(予後)
糖尿病や高度の動脈硬化がなく、特別なトラブルが無かった場合、内シャントは 5~10年もちます。何らかの事故でシャントが閉塞してしまった場合は、血栓溶解療法や 血栓除去療法を行いますが、改善が見られなければ再手術になります。適切な表在の静脈が内場合,人工血管が用いられる場合もあります。
透析導入
- 1.慢性腎不全からの導入基準
- 平成3年度厚生科学研究腎不全医療研究事業研究報告書による慢性維持透析療法の導入基準により導入が検討されます。
- 2.急性腎不全における透析の必要性
- 何らかの要因 (外傷、薬物、手術後など) による急性腎不全で、透析が必要となる主な理由として、
下の図に示すような
- 1)高カリウム血症
- 2)体液過剰
- 3)アシドーシス
- 4)尿毒症の出現
が挙げられます.循環動態が不安定な場合は持続的血液濾過法が 必要となります。
維持透析
多くの維持透析の患者さんは1回3~4時間の血液透析を週3回受けます。 当院では病床数が少ないため、透析導入後の 維持透析の患者さんは最寄りの 透析施設(クリニック・病院)に紹介させていただいております。施設によっては働きながらでも夜間 透析 (P.M. 5:00 or 6:00頃から)を受けることができます。
また、維持透析導入になりますと、健康保険制度としての長期高額疾病制度の申請が必要です。さらに、身体障害者1、3級が受けられます。区役所・市役所から必要な書類を取り寄せ、担当医師に必要事項を書いてもらいます。 数ヵ月後、認定されます。透析導入された月の間に申請してください。