脳腫瘍は他の腫瘍や癌と同様、腫瘍を栄養する血管(腫瘍新生血管)ができることによって腫瘍が増大します。東京大学脳神経外科では輸血部と共同で、再発脳腫瘍の方を対象に、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をワクチンとして用いる抗血管新生療法を臨床研究として行っています。この治療は、腫瘍細胞そのものを攻撃対象とするのではなく、腫瘍が大きくなる際に必要な新生血管が作られるのを抑えて、腫瘍が大きくなることを防ぐのが狙いです。ヒト臍帯静脈内皮細胞は、腫瘍新生血管と共通の抗原(免疫細胞による攻撃の目印となるタンパク質)を持っていることが判っています。この抗原は普通の血管には存在しません。従って、ヒト臍帯静脈内皮細胞をワクチンとして用いると、普通の血管に影響することなく、腫瘍新生血管のみを標的とする免疫を誘導することができます。本治療は通常外来で行います。最初の4回は毎週1回、5回目以降は2週間毎に皮内注射を行います。この治療は臨床研究であり、有効性が確立された治療法ではありません。ヒトに対して理論通り有効であるかどうかを確かめることが臨床研究の目的の1つです。これまでのところ重篤な副作用はみつかっていません。脳腫瘍の方は、手術、放射線治療、化学療法など有効性が確立された治療法をまず先に行うことを原則とします。この治療は東大病院の倫理委員会の審査を受け承認されています。