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神経内視鏡手術による水頭症の手術

脳を中から治療する-神経内視鏡手術とは?

           内視鏡手術では、従来の皮膚を切開して直視下で観察や治療を行うといった外科手術の基本的な概念を根本的に覆し“体の中に入って治療する”、画期的な方法といえます。

           同じ概念を、脳神経外科手術にも導入するために開発されたのが、“神経内視鏡”です。脳の保護液である、髄液を産生する場所である“脳室”が水頭症の患者さまでは拡大しています。この拡大した脳室の中に入って治療を行うのが、神経内視鏡手術です。「脳を中から治療する」方法は、患者さまの体の負担を抑えた新しい治療法として、開発がすすんでいます。中でも、脳神経外科のスタンダードな手術として、効果と安全性が確立し、普及しているものの一つに水頭症に対する手術があります。

 

神経内視鏡手術の適応となる水頭症のタイプ

  脳室内では、髄液が一日に数百ml脳内で産生され、そのまま脳表から吸収されて、常に新しいものに入れ替わっています。この髄液循環が滞り、脳内に髄液が溜まってしまうのが水頭症です。髄液が脳内に貯留すれば、徐々に脳を圧迫するようになり、脳の機能に影響が出てくるのです。髄液の通路が、何らかの原因により閉塞してしまい、髄液循環が滞ることで、水頭症を呈する場合を閉塞性水頭症といいます。神経内視鏡手術では、患者さまの脳室内に入り、髄液循環路の障害物を取り除いたり、又は第三脳室の底に髄液の新しい交通路を作ったりすることで水頭症を改善させます。このため、水頭症のタイプで言えば、閉塞性水頭症が神経内視鏡手術の非常にいい適応といえるでしょう。

 

現在までの治療経験と期待される効果

  現在までに神経内視鏡手術にて治療を行った水頭症の原因疾患には、以下のようなものがあります。内視鏡手術では、水頭症を起こしている原因に腫瘍が疑われる場合には、第三脳室底開窓術と共に、腫瘍の種類や悪性度の診断のために組織の一部を採取する生検術を行うことも可能です。脳室内に発生する腫瘍では、種類によっては、放射線治療や化学療法がかなり奏功するものや、そのまま経過観察で問題を起こすことの少ないものもあります。また、腫瘍が小さく出血が少ない場合には腫瘍の切除も行います。脳動静脈奇形などの血管性病変では、内視鏡手術により水頭症の治療をまず行い、その後、ガンマナイフなどの低侵襲治療を追加することも可能です。

先天性疾患         

·   中脳水道狭窄症

·   キアリ奇形

·   くも膜嚢胞

·   先天性水頭症          

·   先天性モンロー孔閉塞症          

出血性疾患         

·   海綿状血管腫          

·   脳動静脈奇形          

腫瘍性疾患                     

·   中脳神経膠腫

·   松果体部腫瘍(胚細胞腫など)

·   脳室上衣腫

·   中枢性神経細胞腫

·   コロイド嚢胞

·   中枢性悪性リンパ腫

·   脳室内髄芽腫

·   転移性脳腫瘍

 

その他

·   髄膜炎後の孤立性第四脳室

·   原因不明の水頭症

水頭症に対する手術効果

 閉塞機転が確実な、水頭症では第三脳室底開窓術により水頭症が改善する可能性は95%以上の患者さまで効果が期待できます。生後6ヶ月未満の小児では、脳での髄液吸収能がしっかりしていないので、成功率は50%前後と若干低めで、一般に内視鏡手術の適応の決定には慎重な検討を必要とします。ところが、中脳水道狭窄症に伴った水頭症では内視鏡手術の成績は良好で、乳幼児であっても、充分な効果が期待できます。

東京大学病院における神経内視鏡手術の特色

東京大学医学部附属病院が提供している神経内視鏡手術には、いくつかの特色があります

(1)     患者さまの病態に応じた内視鏡システムを選択

         当院では、様々な種類の内視鏡を装備しています。軟性鏡では、最新のビデオシステムで高画質下での手術が可能なオリンパス社のビデオスコープや、コッドマン社の細型内視鏡など、又、硬性鏡では、町田製作所やストルツ社の内視鏡やオリンパス社などです。神経内視鏡手術の専門医が一人一人の患者さまの病態に応じて、機種を選択し最善の治療に当たります。

(2)     術前、virtual reality simulationによるイメージング

手術前に、コンピューター・グラフィックスに精通した画像担当スタッフが多重重畳画像により、術野を想定した術前仮想現実シミュレーション(virtual reality simulation)を行うことが可能である。これは、手術前に、術野では影になっていて見えない部分の血管の走行や腫瘍の存在部位をあらかじめ、確認できるため、手術の安全性の向上に貢献している。

(3)     小児科の神経専門スタッフの協力

水頭症は、一般に小児に多い疾患です。幼い患者さまを治療する上では、小児科の専門スタッフの協力が必要不可欠です。当院は、100床を超える小児医療センターにて、小児科や小児外科の医師と協力して、患児の治療にあたります。また、脳神経外科の担当医も小児疾患の治療に経験を積んだものが当たりますので、その点でも安心です。

さらに詳しい説明を希望される方へ

疾患・治療に関するご相談につきましては、東京大学病院の、担当医の外来を受診してください。その際、過去におとりになられた画像(MRI・CTなど)や検査結果、現在かかりつけの医師からの紹介状などがありますと、病状の判断に大変役立ちますので、お持ちください。一人一人の患者様をしっかりと診察させていただくため、「脳腫瘍外来(金曜日)あるいは個人外来(水曜日)」は完全予約制とさせていただいております。お手数ですが、東京大学医学部附属病院の外来予約センター(03-5800-8630、12:30-17:00)に電話をして予約をお取りください。

担当医師 脳神経外科 田中將太(たなかしょうた)
連絡先外来受診 東京大学医学部附属病院
〒 113-8655  東京都文京区本郷 7-3-1
電話 03-3815-5411(代表)
脳腫瘍外来(毎週金曜日)あるいは個人外来(毎週水曜日午前)
完全予約制です。外来受診につきましては、東京大学医学部附属病院のホームページ(http://www.h.u-tokyo.ac.jp/)を、御参照ください。

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