【プレスリリース】脳動脈瘤発生に重要な体細胞遺伝子変異を発見

2023年06月15日研究


―遺伝子変異に基づく分子標的薬開発の可能性―

理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター神経動態医科学連携研究チームの島康之上級研究員(研究当時)、中冨浩文チームリーダー(杏林大学医学部脳神経外科学教授)、太田仲郎客員研究員、脳神経医科学連携部門岡部繁男部門長(東京大学大学院医学系研究科神経細胞生物学分野教授)、生命医科学研究センターがんゲノム研究チームの笹川翔太研究員、中川英刀チームリーダー、東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻脳神経外科学分野の齊藤延人教授、山梨大学医学部生化学講座第一教室の金然正特任助教、大塚稔久教授らの国際共同研究グループは、ヒトの脳動脈瘤検体から脳動脈瘤の発生に重要な体細胞遺伝子変異を同定し、遺伝子導入によるマウス脳動脈瘤新生・抑制モデルを初めて樹立しました。

本研究成果は、開頭手術か血管内カテーテル治療しかない脳動脈瘤治療の現状に、薬物療法という第三の選択肢の可能性を開くと期待できます。

今回、国際共同研究グループは、外科手術時に摘出された脳動脈瘤の遺伝子を解析し、405個の遺伝子に体細胞遺伝子変異を同定しました。このうち90%以上の検体で変異が確認された16個の遺伝子は、炎症反応や腫瘍形成に関わる「NF-κBシグナル伝達経路」に関連しており、そのうちの6個の遺伝子の変異が嚢状動脈瘤と紡錘状動脈瘤の両方に共通することを発見しました。さらに、この6遺伝子の中で最も頻度の高かった「血小板由来成長因子受容体β(PDGFRβ)」の遺伝子変異をマウスに導入し、PDGFRβ遺伝子の変異によって実際に紡錘状動脈瘤様の拡張が起こること、その動脈瘤化をチロシンキナーゼ阻害剤の全身投与で抑制できることを証明しました。

本研究は、科学雑誌『Science Translational Medicine』オンライン版(6月14日付:日本時間6月15日)に掲載されました。

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