2017年6月より、東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能医学講座形成外科学分野を担当させていただくことになりました。
東京大学形成外科は、1960年にわが国初の独立診療科として附属病院に設立され、1986年に国立大学で初めて形成外科学講座が承認されたという歴史があります(
教室の沿革)。
この伝統のある教室を、着実に発展させていくことが私の使命であると考えています。
形成外科は先天性・後天性を問わず形態・機能の再建を担当する診療科で、診療範囲には全身が含まれます。これらの再建手術を通して患者さんのQOL(Quality of Life)やADL(Activity of Daily Living)を向上させることが形成外科の役割ですが、大学病院として、以下の5つを目標にしています。
①真摯な態度で患者さんと対話しながら、患者さんごとに最適な治療計画を提案できること
②提案した通りの治療結果になるように、責任をもってベストを尽くすこと
③治療前後の形態・機能を科学的に分析して、再現性のある、より良い術式を開発すること
④適切な手術を高い精度で施行できる手技と芸術的センスを持った形成外科医を育成すること
これらを実現していくためには、スタッフ全員が患者さんへの思いやりの心をもち、知力を養い、研ぎ澄まされた五感を駆使して手術や診療にあたることが重要です。さらに、既存の医療技術を用いた再建手術の限界が明らかになりつつある中で、
⑤臨床研究にとどまらず、再生医療と臨床とを融合させたトランスレーショナルリサーチを推進し、
形成外科の次なるブレイクスルーを実現させること
も、私たちが目指すべき大きな課題であると考えています。
このように、“五感と知と思いやりに基づく医療と科学と芸術の高度なインテグレーション”をメインテーマとして、患者さんの視点に立った医療を提供するとともに、研究成果を世界へ発信していきたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。
■専門分野
・陳旧性顔面変形および
顔面神経麻痺の再建:
外傷後、腫瘍切除後、先天異常形成術後などの原因を問わず、顔面変形や顔面神経麻痺を、可能なかぎり元に近い状態に再建します。
顔面神経麻痺では、完全麻痺だけでなく、軽微な不全麻痺や病的共同運動や拘縮をもつ複雑な病態にも対応しています。数十年前から続く顔面神経麻痺(脳腫瘍摘出後、Bell麻痺・Hunt症候群後の後遺症の不全麻痺)も改善させることが可能です。
生まれつきの顔の非対称(第1第2鰓弓症候群など)や顔面神経の部分麻痺(口唇変形など)をもつAYA世代の患者に対する、整容と動きの改善を目的とした再建にも力を入れています。
・その他の部位の変形・機能障害の形成:
部位や重症度を問わず、体表のあらゆる形態異常・機能障害に対して、最善の治療法を考えて対応します。
■略歴
福井県あわら市出身(県立藤島高校卒業)
1990年 東京大学医学部卒業
1990年 自治医科大学一般外科で初期研修を開始した後、
静岡県立総合病院、都立大塚病院、東京警察病院、自治医科大学、東京大学での形成外科研鑽を経て
2000年 国保旭中央病院形成外科 医長
2002年 東京大学形成外科 助手
2006年 杏林大学形成外科 助教授
2009年 東京医科歯科大学大学院 形成外科学分野 教授
2017年 東京大学大学院医学系研究科 形成外科学分野 教授