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アトピー性皮膚炎患者さんへの皮膚検査のおすすめ

東京大学医学部皮膚科・准教授
菅谷 誠


当教室ではアトピー性皮膚炎の専門外来、皮膚悪性リンパ腫(菌状息肉症、セザリー症候群) を専門にしたリンフォーマ外来を開設しております。私は両外来の診察を担当しており、また厚 生労働省のアトピー性皮膚炎治療に関する班会議の一員であり、皮膚悪性腫瘍ガイドライン作成 委員(皮膚リンパ腫)にもなっています。




アトピー性皮膚炎と皮膚悪性リンパ腫は、全く異なる疾患です。前者は慢性の経過をたどる良 性の疾患であり、後者は悪性の疾患で命に関わる可能性があります。しかしながら皮膚の症状が 非常に似ており、また検査データも類似しているため、両者を見分けることは困難な場合があり ます。実際に当科で皮膚悪性リンパ腫の診断となった患者さんの中にも、長年に渡ってアトピー 性皮膚炎と診断され、治療を受けていた方が多数います。正確な診断、適切な治療のために、皮 膚生検(皮膚の一部を切って病理検査をすること)を強くおすすめします。特に以下の症状があ てはまる患者さんには欠かせない検査であると考えます。
・アレルギー(喘息、鼻炎、アトピーなど)の家族歴や既往歴がない
・誘因もなく、急速に皮膚の症状が悪くなっている
・通常の治療で皮膚症状がよくならない
・ほぼ全身が赤くなっている(紅皮症といいます)
・リンパ節が腫れている
・免疫抑制薬(シクロスポリン)を使用する予定である




皮膚生検は局所麻酔で 30 分程度で終了します。アトピー性皮膚炎専門外来は毎週水曜日の午 前・午後に行っておりますが、皮膚生検は平日何曜日の初診にいらしても、その日の午後に行う ことができます(外来手術室が空いていない場合は別の日になることがあります)。当科はアト ピー性皮膚炎、皮膚リンパ腫両疾患を専門にしている医師が多く、通常の病院では施行していな い、両疾患の鑑別に有益な検査も可能です。皮膚生検の結果が出た後は、地元の病院に戻られて も、当科の専門外来に通院されても、どちらでも結構です。実際に皮膚生検をするかどうかは、 診察時に判断させていただきますが、治療に関するご相談も承りますので、ご遠慮なく受診して 下さい。