平成27年度 東京大学医学部附属病院 病院指標

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位3位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞のICD10別患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位3位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)
年齢階級別退院患者数ファイルをダウンロード
年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 1,644 572 816 1,539 2,342 3,073 5,392 5,565 2,533 172
 10歳ごとの年齢階級別に退院患者数を集計いたしました。年齢は入院日の満年齢で示しています。
 当院は高度急性期医療を中心に最新の医療に取り組むとともに、地域の医療を担う拠点としての役割を果たしてきました。
 データを見ると0-9歳に小さなピークが、そして60-69歳、70-79歳に大きなピークが存在することがわかります。0-9歳のピークは、当院の周産期医療センターや小児医療センターが中心となって、内科系・外科系にとどまらず心の問題まで、幅広い小児診療に取り組んでいることを示しています。また高齢者のピークは、当院が地域医療の拠点として高齢者の慢性疾患や救急医療に積極的に取り組んでいることを示しています。
診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位3位まで)ファイルをダウンロード
循環器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050050xx0200xx 狭心症、慢性虚血性心疾患 経皮的冠動脈形成術等 処置1なし 処置2なし 374 7.77 4.87 0.53% 69.73
050050xx99100x 狭心症、慢性虚血性心疾患 手術なし 処置1:心臓カテーテル法による諸検査 処置2なし 副傷病なし 328 3.89 3.07 0.30% 70.42
050070xx01x0xx 頻脈性不整脈 経皮的カテーテル心筋焼灼術 処置2なし 226 6.22 5.68 0.00% 61.01
 循環器内科で入院数が多いのは、第一に、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患に対する検査や治療(経皮的冠動脈ステント留置術や経皮的冠動脈形成術)を目的としたものです。平均入院期間は、検査であれば3.9日、治療の場合は7.8日となっています。
 第二に多い入院は、経皮的カテーテル心筋焼灼術で、血管から心臓にカテーテルを挿入して心筋を焼灼することで、不整脈を治療します。
 ペースメーカーや植込型除細動器の移植や交換での入院も多くなっています。平均入院期間は6.2日です。また、心移植を含む重症心不全の治療を積極的に行っており、心臓外科と協力して、チーム医療で診療にあたっています。
呼吸器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx9904xx 肺の悪性腫瘍 手術なし 処置1なし 処置2:化学療法ありかつ放射線療法なし(4) 121 16.37 13.38 1.65% 66.26
040040xx99100x 肺の悪性腫瘍 手術なし 処置1:気管支鏡検査、気管支カメラ等 処置2なし 副傷病なし 59 4.80 3.29 1.69% 69.76
040110xxxxx0xx 間質性肺炎 処置2なし 42 17.67 20.63 4.76% 72.55
 呼吸器内科では、肺がんを中心とした悪性腫瘍の検査と治療のための入院が最多となっています。気管支鏡検査などによる精査の後に、病期や患者さんの状態に応じて、呼吸器外科や放射線科の協力のもとに治療を行います。主に呼吸器内科で行う肺がんの化学療法は、2~3週間程度の入院を繰り返して行います。使用する薬剤や患者さんの状態によっては、外来で化学療法を継続することもあります。積極的な治療が困難な場合には、地域医療連携部を介して在宅や転院先での緩和治療をお願いしています。
 その他では、間質性肺炎の治療ための入院が多く、ステロイド剤や免疫抑制剤の導入が必要となる場合には、比較的長期間の入院を要します。(臓器移植関連の入院は集計対象外となっています。)
消化器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060050xx0300xx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む) 肝悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法(一連として)等 処置1なし 処置2なし 383 7.98 9.02 0.00% 71.96
060340xx03x00x 胆管(肝内外)結石、胆管炎 限局性腹腔膿瘍手術等 処置2なし 副傷病なし 195 9.55 10.93 4.10% 65.48
060050xx97x0xx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む) その他の手術 処置2なし 187 9.19 11.98 1.07% 72.60
 消化器内科において最も多い入院症例は、原発性あるいは転移性の肝癌に対する「ラジオ波焼灼療法」を行う症例です。肝臓内の癌(腫瘍)に針型の電極を穿刺して電流を流し、電極先端に生じた熱によって腫瘍を凝固壊死させる治療で、世界屈指の実績を誇ります。
 2番目に多いのは、胆管結石や胆管炎の治療を行う症例です。胆管結石は、内視鏡を用いて十二指腸乳頭(胆管の出口)を電気メスで切開、あるいはバルーン(風船)で広げてから、内視鏡処置具を用いて除去します。胆管炎は胆管結石や腫瘍などで胆管がつまることにより起きますが、胆管にプラスチックや金属の管(ステント)を挿入して胆汁の流れを良くし、抗生剤などの薬物療法と合わせて治療します。
 3番目に多いのは、原発性肝癌に対する肝動脈化学塞栓術(その他の手術)の治療症例です。肝癌に栄養を供給している動脈を塞栓することによって、肝癌を壊死させる治療法です。
腎臓・内分泌内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110280xx99000x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 処置1なし 処置2なし 副傷病なし 62 11.63 13.64 3.23% 70.21
100180xx99000x 副腎皮質機能亢進症、非機能性副腎皮質腫瘍 手術なし 処置1なし 処置2なし 副傷病なし 52 6.83 6.55 0.00% 58.31
180040xx02x0xx 手術・処置等の合併症 内シャント血栓除去術等 処置2なし 43 3.53 3.40 0.00% 71.00
 腎臓・内分泌内科で最も多いのは、慢性腎炎・慢性腎不全の入院で、全体の約40%を占めます。糸球体腎炎・ネフローゼの他、糖尿病や自己免疫疾患に続発する腎臓病の検査・治療も行っています。また、全国で1300万人が罹患する慢性腎臓病に対して、包括的治療の提供を目的とする教育入院を行っています。
 症例数が2番目に多いのは、副腎皮質機能亢進症や副腎腫瘍患者さんの検査入院です。画像診断の進歩により偶然発見され、ご紹介いただく患者さんが増えています。副腎腫瘍が、高血圧や糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症の隠れた原因となっている可能性があり、外科的治療の必要性を含め、泌尿器科などと連携しながら診療しております。
 3番目に多いのは、血液透析患者さんの内シャント血栓除去術です。血液透析に使用する内シャントはしばしば狭窄や閉塞を起こします。当院では、上記のような不具合を呈する患者さんを他院よりご紹介いただき、超音波ガイドによるカテーテル治療を行っています。
糖尿病・代謝内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
100070xxxxxxxx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く) 329 15.81 15.35 0.61% 64.00
100120xxxxxxxx 肥満症 28 18.39 20.84 0.00% 44.11
100080xxxxxx0x その他の糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く) 副傷病なし 22 17.45 18.13 4.55% 66.32
 わが国では高脂肪食・運動不足などの生活習慣の欧米化に伴い、「2型糖尿病」や「肥満症」の患者さんが増加しています。糖尿病・代謝内科の入院症例で最も多いのは、「2型糖尿病」の血糖管理・教育入院や糖尿病合併症・併存疾患の精査加療を目的としたものです。外科などの他診療科で手術を受ける前あるいは受けた後の血糖管理の症例も含まれます。
 次に多いのが、「肥満症」に対する精査と減量目的の入院です。若年の患者さんも多いため平均年齢は「2型糖尿病」と比べて低くなります。最新の知見に基づいた食事療法・運動療法を実践し、入院期間中の着実な減量と退院後も継続可能な体重管理を目指した治療を行います。
 「その他の糖尿病」としては、1型糖尿病に加えて、膵臓手術や他疾患の治療薬に伴う糖尿病、特定の遺伝子異常による糖尿病、妊娠糖尿病などが含まれます。成因と病態に応じた適切な治療法を選択して血糖管理を行います。
血液・腫瘍内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
130030xx99x40x 非ホジキンリンパ腫 手術なし 処置2:リツキサン(4) 副傷病なし 89 23.49 17.69 1.12% 65.48
130010xx97x2xx 急性白血病 手術あり 処置2:化学療法(2) 62 41.35 43.59 4.84% 60.66
130030xx97x40x 非ホジキンリンパ腫 手術あり 処置2:リツキサン(4) 副傷病なし 40 47.10 36.93 5.00% 70.13
 血液・腫瘍内科では、悪性リンパ腫に対する化学療法目的の入院が最も多くなっています。近年は分子標的薬の登場により、悪性リンパ腫の治療成績が向上しました。初回化学療法は入院で行いますが、2回目以降は通院治療が可能な場合が多いです。
 2番目に多いのは、急性白血病に対する化学療法目的の入院です。悪性リンパ腫や急性白血病といった造血器悪性腫瘍は、必要に応じて造血幹細胞移植(自家・同種)を組み合わせることにより、さらなる治療成績の改善を目指します。造血幹細胞移植は、無菌治療部・輸血部・手術部などの関連部署と連携しながら行っています。
アレルギー・リウマチ内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
070560xx99x0xx 全身性臓器障害を伴う自己免疫性疾患 手術なし 処置2なし 114 26.25 18.15 0.00% 57.93
070470xx99x0xx 関節リウマチ 手術なし 処置2なし 28 22.46 14.90 3.57% 64.43
070560xx99x6xx 全身性臓器障害を伴う自己免疫性疾患 手術なし 処置2:ガンマグロブリン(6) 19 15.68 32.56 0.00% 60.16
 アレルギー・リウマチ内科では、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎・多発性筋炎、全身性強皮症を含む膠原病、血管炎症候群、ベーチェット病、IgG4関連疾患、サルコイドーシス、リウマチ性多発筋痛症のような、全身性自己免疫性疾患、炎症性疾患、関節炎を伴う全身性疾患など幅広い疾患の診断、治療を行っており、これらが「全身性臓器障害を伴う自己免疫性疾患」に含まれています。治療の一環として、または、ステロイド薬などの免疫抑制療法に伴う低ガンマグロブリン血症への対応として、ガンマグロブリンを投与することがあり、「全身性臓器障害を伴う自己免疫性疾患 処置:ガンマグロブリン」として示されています。関節リウマチは外来で診断、治療を行うことが多いのですが、全身精査を要する場合や治療内容によっては入院で診療を行っています。また、DPC病名の関節リウマチには成人発症スティル病も含まれています。
神経内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
010155xxxxx00x 運動ニューロン疾患等 処置2なし 副傷病なし 32 24.19 15.23 6.25% 69.03
010060x099000x 脳梗塞 JCS10未満 手術なし 処置1なし 処置2なし 副傷病なし 27 13.59 15.80 18.52% 71.44
010170xx99x10x 基底核等の変性疾患 手術なし 処置2:SPECT等(1) 副傷病なし 25 25.80 18.04 4.00% 59.76
 神経内科の入院では、運動ニューロン疾患や基底核等の変性疾患で計57人と上位を占めています。基底核等の変性疾患には、パーキンソン症候群を呈するもの(進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症や多系統萎縮症など)、脊髄小脳変性症、ハンチントン病などの神経難病が含まれます。他院においても診断が困難であった患者さんも多くいらっしゃいます。放射線科との連携での画像検査、眼症状、排尿障害や嚥下障害などに対して眼科、泌尿器科、耳鼻咽喉科との連携を行いつつ、信頼度の高い診断、及び最適な治療計画を立案した上でご提供しております。大半が病状早期での精査入院であるため、自宅退院となっており転院率が極めて低くなっています。一方、特に合併症が多い急性期の脳卒中患者さんの急性期の治療目的の入院も多く、必要に応じて脳神経外科、放射線科、リハビリテーション科と連携しながら血栓溶解療法などを含めた最適な治療法を選択しています。
老年内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
01021xxxxx1x0x 認知症 処置1:SPECT 副傷病なし 63 17.79 18.71 7.94% 80.22
040080x099x0xx 肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎 15歳以上 手術なし 処置2なし 16 19.06 14.34 12.50% 86.94
040081xx99x00x 誤嚥性肺炎 手術なし 処置2なし 副傷病なし 13 49.08 21.69 23.08% 84.31
 老年病科では認知症精査入院が最も多くなっています。認知症精査入院では臨床心理士が詳細な認知機能ならびに心理状態を検査します。必要に応じて脳血流シンチグラムやMRIなどの画像検査も行います。また、生活機能、生活環境などを高齢者総合機能評価(CGA: comprehensive geriatric assessment)の手法により評価し、すべての検査所見と合わせて診断、治療介入、合併症の管理と服薬調整、環境調整を行い、退院後のより良い生活をサポートします。
 次いで、肺炎治療が多くなっています。肺炎は高齢になるほど、認知症や慢性心不全など合併症をもつ症例が多くなり、全身の管理が重要になります。また高齢者に特徴的な肺炎である誤嚥性肺炎が三番目に多いです。誤嚥性肺炎が疑われる患者さんには嚥下機能検査を行い、嚥下機能が低下している患者さんには嚥下リハビリを行い、さらには誤嚥を予防するための食形態を検討し、退院後に誤嚥性肺炎を再発しないためのより良い生活指導を行っております。
心療内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
100270xxxxx0xx 間脳下垂体疾患(その他) 処置2なし 50 27.56 28.78 2.00% 29.08
170040xxxxxxxx 気分[感情]障害 - - 21.79 - -
100330xxxxx1xx 栄養障害(その他) 処置2:中心静脈注射等(1) - - 38.67 - -
 心療内科で最も入院症例数が多いのは摂食障害になります。摂食障害の中でも、低体重による身体合併症の重篤な神経性やせ症の症例が多く、比較的若い患者さんが入院しています。栄養状態改善のための入院となることから入院期間が比較的長くなります。近年のトレンドとして栄養改善のために中心静脈注射などの処置を行うことはほとんどありません。
 気分障害は精神疾患ですが、心身症や身体疾患に合併している場合には、心療内科でも身体面の治療と並行して、入院加療を行うことがあります。
胃・食道外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060020xx99x30x 胃の悪性腫瘍 手術なし 処置2:化学療法ありかつ放射線療法なし(3) 副傷病なし 117 5.81 6.67 0.00% 62.04
060010xx99x40x 食道の悪性腫瘍(頸部を含む) 手術なし 処置2:化学療法ありかつ放射線療法なし(4) 副傷病なし 93 12.68 9.95 0.00% 63.61
060020xx01x0xx 胃の悪性腫瘍 胃全摘術 悪性腫瘍手術等 処置2なし 66 19.70 20.63 1.52% 68.79
 胃・食道外科では、手術のみならず集学的治療の一環として、化学療法も積極的に行っています。化学療法の基本は外来での施行ですが、胃癌や食道癌に対する化学療法薬剤の中には、大量輸液を必要とするものや、5日間連続の点滴注射を要するものがあり、どうしても入院加療が必要になっております。それぞれの平均入院期間は6日、13日となっております。繰り返し行っている方がいるので、患者数は多くなっています。胃悪性腫瘍手術のための入院は、手術前後含めておよそ20日となっております。
大腸・肛門外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060035xx0100xx 結腸(虫垂を含む)の悪性腫瘍 結腸切除術 全切除、亜全切除又は悪性腫瘍手術等 処置1なし 処置2なし 124 17.98 17.41 0.00% 68.23
060040xx99x00x 直腸肛門(直腸S状部から肛門)の悪性腫瘍 手術なし 処置2なし 副傷病なし 91 9.36 9.24 0.00% 63.24
060040xx02x00x 直腸肛門(直腸S状部から肛門)の悪性腫瘍 肛門悪性腫瘍手術 切除等 処置2なし 副傷病なし 85 19.60 18.36 1.18% 62.61
 本邦において大腸癌は依然として悪性疾患による死亡原因の上位を占めており、当院の大腸・肛門外科でも最も多く治療を行っている疾患です。ほとんどの手術を腹腔鏡を用いた低侵襲手術で行っており、術後は十分に回復してから退院してもらっています。また手術だけでなく、術前の検査から術後のフォローアップや化学療法まで、一貫して治療を行っていることから、「直腸肛門(直腸S状部から肛門)の悪性腫瘍 手術なし」に該当する患者も比較的多くなっています。
肝臓・胆のう・膵臓外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060050xx02x0xx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む) 肝切除術 部分切除等 処置2なし 78 15.54 16.29 0.00% 67.76
06007xxx0100xx 膵臓、脾臓の腫瘍 膵頭部腫瘍切除術 血行再建を伴う腫瘍切除術の場合等 処置1なし 処置2なし 56 27.70 25.68 1.79% 64.86
060050xx97x0xx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む) その他の手術 処置2なし 50 10.20 11.98 0.00% 72.86
 当院肝胆膵外科では過去より肝癌に対する肝切除術数が多いことが特徴でした。肝癌には肝細胞癌、肝内胆管癌、転移性肝癌(大腸癌などからの転移)が含まれます。術式は肝実質を温存する部分切除が多いですが、腫瘍の大きさや位置により、系統的切除も選択します。
 最近は膵癌患者さんに対する膵頭十二指腸切除、膵体尾部切除も多くなっています。膵癌以外にも膵のう胞性腫瘍、膵神経内分泌腫瘍に対する切除術も多く含まれます。進行膵癌には化学療法を先行させて手術を行うこともあります。肝切除も膵切除も、腫瘍に対する根治性を確保しつつ可及的安全な手術と術後管理をこころがけています。
血管外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050163xx03x0xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤 ステントグラフト内挿術 処置2なし 14 15.79 13.19 0.00% 75.07
050180xx97xx0x 静脈・リンパ管疾患 その他の手術 副傷病なし 14 3.00 3.46 0.00% 66.50
050163xx02x1xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤 大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む) 腹部大動脈(分枝血管の再建を伴うもの)等 処置2:中心静脈注射等(1) 11 32.27 22.62 0.00% 70.45
 血管外科は心臓と脳を除く全ての血管が治療対象であり多岐にわたりますが、中でも腹部大動脈瘤に対する手術症例数が多く、ハイリスク患者さんには血管内治療であるステントグラフト内挿術を、耐術可能と評価されれば開腹瘤切除術を第一選択としています。術前に十分な心リスクを中心とする全身精査を行っており、そのため前者で約10日、後者で約2週間の術前入院期間を要します。前者の手術侵襲は低く局所麻酔での治療も可能であり、術後も5日目の退院を基本としております。しかし長期成績が不明で再治療率も高い欠点もあり、術前に十分な評価を行って治療方針を決定します。当科では開腹手術の成績も良好で、特に合併症がなければ術後10~14日で退院となります。
 下肢静脈瘤はレーザーによる血管内焼灼術を第一選択としています。術前の全身状態の評価、マーキング、術翌日には焼灼後血栓の評価を行ってから退院としているため2泊3日の入院を基本としています。
乳腺・内分泌外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
090010xx03x0xx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの) 処置2なし 74 4.96 6.79 0.00% 57.08
090010xx02x0xx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 単純乳房切除術(乳腺全摘術)等 処置2なし 51 7.94 10.37 0.00% 63.61
100020xx01x0xx 甲状腺の悪性腫瘍 甲状腺悪性腫瘍手術 切除等 処置2なし 32 7.75 9.55 0.00% 53.63
 国立がん研究センターの統計によると日本人で乳癌の年間罹患数が約9万人、甲状腺癌が1.8万人である。甲状腺癌を専門に治療する施設は少ないことを考えると乳腺・内分泌外科の乳癌患者数125(74+51)人、甲状腺癌32人は想定される患者数比である。乳房部分切除術は創部が小さいため、乳腺全摘術に比較して明らかに入院期間が短くなる。乳房切除術も甲状腺手術も入院期間は約8日である。ドレーン等の創部管理のためであり、入院期間中はほぼ日常と同様の生活を送ることになる。
 なお、当科は乳癌や甲状腺癌の他に、乳腺良性腫瘍・甲状腺良性腫瘍・副甲状腺機能亢進症等の手術を実施している。
心臓外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
180040xx97x0xx 手術・処置等の合併症 その他の手術 処置2なし 24 32.54 16.51 4.17% 43.46
050050xx0111xx 狭心症、慢性虚血性心疾患 心室瘤切除術(梗塞切除を含む) 単独のもの等 処置1:心臓カテーテル法による諸検査 処置2:中心静脈注射等(1) 19 24.16 28.59 10.53% 63.58
050080xx01010x 弁膜症(連合弁膜症を含む) ロス手術(自己肺動脈弁組織による大動脈基部置換術)等 処置1なし 処置2:中心静脈注射等(1) 副傷病なし 15 19.87 25.69 6.67% 55.40
 心臓外科では、弁膜症・虚血性心疾患などの一般的な心臓手術、大動脈瘤や大動脈解離に対する手術、先天性心疾患に対する手術、重症心不全に対する補助人工心臓植込み手術・心臓移植など幅広い分野にわたる心臓血管手術を数多く実施しています。
 東大病院では、国際的なモデルとなる多職種連携による重層的な態勢で重症心不全の治療を進めており、当科がその中心を担っています。心臓移植においても2010年の臓器移植法改正後の実施数・成績ともにわが国を牽引しています。
 弁膜症では、特に、僧帽弁膜症では低侵襲手術を含めて積極的に弁形成手術を実施し、狭心症等の虚血性心疾患では人工心肺を用いないオフポンプ冠動脈バイパス手術を積極的に採用し、成績も良好です。大動脈基部大動脈瘤に対する自己弁温存手術では日本を牽引する治療成績を上げています。先天性心疾患治療においても拠点病院として多くの小児の命を救ってきています。
呼吸器外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx97x0xx 肺の悪性腫瘍 手術あり 処置2なし 170 14.16 13.03 1.18% 66.32
040040xx99100x 肺の悪性腫瘍 手術なし 処置1:気管支鏡検査、気管支カメラ等 処置2なし 副傷病なし 18 3.39 3.29 5.56% 66.11
040110xxxxx0xx 間質性肺炎 処置2なし 18 13.11 20.63 5.56% 51.33
 わが国のがん死亡原因の1位である肺がんは近年患者数が増加を続けている。呼吸器外科では根治を目指した肺がんに対する手術療法を積極的に行ってきた。肺がん患者さんは高齢者、呼吸器疾患を合併することが多く、より安全で低侵襲な胸腔鏡下手術を積極的に行っている。
 自然気胸は若年者男性に多く見られる疾患である。内科治療では再発を繰り返すことが多く、胸腔鏡下に原因となるブラの切除、胸膜癒着を行い患者さんのQOLを高めることを心掛けている。
 当院では2014年3月に東京で唯一の肺移植実施施設として認定され、2015年4月から肺移植を実施している。間質性肺炎や原発性肺高血圧症など、びまん性肺疾患を有する患者さんの肺移植治療の適応を決定するため、最近は患者さんが主に関東圏から紹介され当科で検査入院を行う場合が増加している。
脳神経外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
010030xx9910xx 未破裂脳動脈瘤 手術なし 処置1:動脈造影カテーテル法(選択的に造影撮影) 処置2なし 67 5.75 3.15 0.00% 59.93
010010xx01x00x 脳腫瘍 頭蓋内腫瘍摘出術等 処置2なし 副傷病なし 43 21.84 22.55 0.00% 56.44
010040x099x00x 非外傷性頭蓋内血腫(非外傷性硬膜下血腫以外) JCS10未満 手術なし 処置2なし 副傷病なし 37 6.05 19.32 5.41% 44.30
 脳神経外科の最も多い症例は未破裂脳動脈瘤に対する脳血管カテーテル治療のための入院、および治療前、治療後の脳血管カテーテル検査のための入院です。患者さんの平均年齢は59.9歳で、脳卒中の好発年齢に一致しています。脳血管カテーテルによる治療は未破裂脳動脈瘤だけではなく、破裂脳動脈瘤、脳動静脈奇形などの症例でも施行されます。
 また、症例数が2番目に多いのは脳腫瘍に対する頭蓋内腫瘍摘出術となります。脳腫瘍の患者さんの平均年齢は56.4歳で、脳卒中よりもやや若い年齢の患者さんが多くなっていることが分かります。脳腫瘍の手術前後の平均在院日数は、約3週間で、このような患者さんのほとんどの方は、当院での治療後ご自宅に退院されています。
泌尿器科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110080xx01x0xx 前立腺の悪性腫瘍 前立腺悪性腫瘍手術等 処置2なし 146 14.25 14.03 0.00% 66.73
110070xx0200xx 膀胱腫瘍 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 処置1なし 処置2なし 118 9.56 7.59 0.00% 72.67
11013xxx97xxxx 下部尿路疾患 その他の手術 64 7.61 9.30 0.00% 62.88
 泌尿器科ではロボット支援下根治的前立腺全摘除術が手術数の上位を占めています。本手術の指標である切除断端の陰性率、尿禁制の回復率、男性機能の温存率も国際水準にて実施しており、国内外の専門誌に発表してきています。
 膀胱悪性腫瘍手術も数多く実施しており一定の成績を収めています。膀胱悪性腫瘍の病状が進行した症例にはロボット支援下根治的膀胱全摘除術の実施(自由診療)を行い、出血量、合併症発生率の減少に努めています。
 さらに、間質性膀胱炎に対する膀胱水圧拡張術の実施数は国内トップレベルであり豊富な経験を有しています。
女性外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
12002xxx99x40x 子宮頸・体部の悪性腫瘍 手術なし 処置2:化学療法ありかつ放射線療法なし(4) 副傷病なし 211 4.10 5.33 0.00% 62.14
120010xx99x40x 卵巣・子宮附属器の悪性腫瘍 手術なし 処置2:化学療法ありかつ放射線療法なし(4) 副傷病なし 100 4.78 5.11 0.00% 58.63
120060xx02xxxx 子宮の良性腫瘍 腹腔鏡下腟式子宮全摘術等 97 7.69 6.34 0.00% 40.99
 女性外科の入院症例で最も多いのは、子宮頸部・体部及び子宮附属器(多くは卵巣)の悪性腫瘍に対する化学療法例となります。婦人科悪性腫瘍の多くは外科手術により診断・臨床進行期を確定し、必要に応じて後療法として化学療法が選択されます。近年の化学療法では抗癌剤や制吐剤の進歩により嘔気・嘔吐などの副作用が軽減され、ほとんどの場合4~5日間のみの入院でその後は外来管理となります。化学療法の多くは月に1回、約半年間にわたり入退院が繰り返されるため、入院患者数としては最も多くなっています。
 婦人科悪性腫瘍に対する化学療法に次ぐ症例として、子宮筋腫もしくは腺筋症に対する腹腔鏡下手術になります。以前は同疾患に対して開腹手術で行われていましたが、侵襲の低さ・審美性の観点から腹腔鏡下手術が主流となってきています。腹腔鏡下手術では開腹手術よりも低侵襲で回復が早いため、一般に入院期間は7~8日となります。
皮膚科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
070560xx99x0xx 全身性臓器障害を伴う自己免疫性疾患 手術なし 処置2なし 161 17.85 18.15 0.00% 53.65
080140xxxxx2xx 炎症性角化症 処置2:レミケード(2) 59 2.14 3.08 0.00% 56.29
070560xx99x6xx 全身性臓器障害を伴う自己免疫性疾患 手術なし 処置2:ガンマグロブリン(6) 48 15.77 32.56 0.00% 57.77
 皮膚科で最も多いのは全身性臓器障害を伴う自己免疫性疾患の精査目的の入院です。当科では全身性強皮症をはじめ、皮膚筋炎や全身性エリテマトーデスなど、皮膚に症状が出る膠原病の患者さんが入院精査をされるケースが多いです。全身精査を2週間程度で行い、その結果を受け個々の患者さんに合った治療法を選択していきます。
 2番目に多いのが尋常性、関節症性、そして膿疱性乾癬の生物学的製剤での入院治療になります。従来の治療でも改善が乏しい難治性の乾癬で新たな治療法が生物学的製剤です。在院日数が平均2.1日と短い点も乾癬患者さんに好まれ、治療選択されていると考えます。
 また、ステロイド治療でも難渋している皮膚筋炎やChurg-Strauss症候群の患者さんに対するガンマグロブリン療法入院が3番目になります。当科では重症な病気に対する治療にも力を入れています。
眼科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
020220xx97xxx0 緑内障 手術あり 片眼 308 10.14 9.57 0.00% 64.04
020290xx97xxxx 涙器の疾患 手術あり 104 6.73 5.18 0.00% 65.29
020160xx97xxx0 網膜剥離 手術あり 片眼 86 9.30 11.08 0.00% 53.70
 眼科の入院手術の最も多い症例は白内障ですが、DPC対象外となりましたので、次に多いのは緑内障です。緑内障の手術は術後管理が重要で、特に濾過手術という手術では傷が治る過程で処置を頻繁にする必要があるため、術後1,2週間の管理が肝心です。そのため入院が長くなっています。また、流涙の原因となる涙道の閉塞や涙嚢炎の手術、網膜剥離の手術が次に多くなっています。
 上記3疾患も含め、眼科の入院は手術であり、何れも局所麻酔が殆どで、傷口も小さく、体には負担が極めて少ないです。また患者さんのご年齢も地方より比較的若いのは東京の特徴です。しかし、術後の創部の管理や治癒過程が刻々と変わる疾患が多く、また視力が落ちていては通院が難しいため、遠方やご高齢の方には長めに入院していただきます。通院できる方は早めに退院することも可能です。
整形外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
07040xxx01xx0x 股関節骨頭壊死、股関節症(変形性を含む) 人工関節再置換術等 副傷病なし 122 22.65 24.95 4.92% 64.01
070230xx01xxxx 膝関節症(変形性を含む) 人工関節再置換術等 88 25.73 27.21 6.82% 73.43
160620xx01xxxx 肘、膝の外傷(スポーツ障害等を含む) 腱縫合術等 66 11.95 11.98 1.52% 32.67
 診断群分類別患者数については整形外科では股関節および膝関節の人工関節の手術を受ける患者さんが上位を占めています。これは人口の高齢化を反映して、変形性股関節症や変形性膝関節症の患者さんが増加しているためと考えられます。当院の整形外科では人工関節手術において、CTを用いた術前プラニングや、術中のナビゲーションシステムを用いた精度の高い手術を特徴としています。入院期間は20日強と比較的長めですが、その分十分なリハビリテーションを行ってからの退院、転院が多くなっています。
 またスポーツ整形外科にも積極的に取り組んでおり、スポーツ外傷である前十字靭帯損傷に対する関節鏡下靱帯断裂形成手術も上位を占めています。前十字靭帯再建術もナビゲーションシステムを用いた精度の高い手術が特徴です。
頭頸部・耳鼻いんこう科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
030440xx01xxxx 慢性化膿性中耳炎・中耳真珠腫 鼓室形成手術 76 7.63 10.12 0.00% 52.93
030350xxxxxxxx 慢性副鼻腔炎 70 6.07 7.76 0.00% 57.84
030150xx97xxxx 耳・鼻・口腔・咽頭・大唾液腺の腫瘍 手術あり 57 7.44 7.94 0.00% 50.23
 耳鼻咽喉科では外科手術によって治療する疾患を多数扱っています。
 慢性化膿性中耳炎・中耳真珠腫に対しては、聴力改善・感染の制御・合併症の予防を目指した鼓室形成手術を多数施行しています。
 慢性副鼻腔炎に対しても、慢性炎症の制御を目標に、内視鏡を使用した手術を行っています。解剖学的な精度が要求される困難な症例ではナビゲーションの技術を併用して安全性を追求しています。
 耳鼻咽喉の良性腫瘍・悪性腫瘍に対しても予後の改善だけでなく機能の維持を目指した低侵襲、機能再建の術式を導入しています。
形成・美容外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
070520xx97xxxx リンパ節、リンパ管の疾患 手術あり 285 11.66 10.59 0.00% 56.08
020230xx97x0xx 眼瞼下垂 手術あり 処置2なし 34 3.47 3.54 0.00% 61.24
070570xx972xxx 瘢痕拘縮 その他の手術 処置1:皮弁作成術等 31 9.10 8.92 0.00% 45.13
 形成外科では近年リンパ浮腫患者さんに対する治療が増えております。リンパ管静脈吻合術やリンパ移植などのリンパ浮腫に対する外科治療が近年進歩しており、当科はリンパ浮腫治療において世界をリードしております。
 それ以外にも四肢・頭頸部・体幹の瘢痕拘縮や変形に対する治療も得意としており、マイクロ技術を用いた各種再建を行っております。マイクロ技術による血管吻合を必要とする臓器移植関連の患者さんもいらっしゃいます。
 また眼瞼下垂などをはじめとした外見・機能共に回復する手術を得意としております。
小児科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
140010x199x00x 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害 2500g以上 手術なし 処置2なし 副傷病なし 144 5.75 6.17 1.39% 0.01
010230xx99x00x てんかん 手術なし 処置2なし 副傷病なし 58 5.78 7.03 0.00% 4.28
040080x1xxx0xx 肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎 15歳未満 処置2なし 54 7.39 5.72 0.00% 2.80
 東大病院は総合周産期母子総合医療センターの指定を受けており、小児科では産婦人科と協力をして最新の新生児医療を行っています。NICU(新生児集中治療部)では、早産低出生体重児のお子さんや、生まれつきの病気を持った新生児のお子さんの診療に特に力を入れ、そうしたお子さんの健やかな成長を支援しています。
 小児の血液腫瘍・先天性心疾患といった高度先進医療の充実にも力を入れており、小児の神経系疾患の中では、結節性硬化症などによる難治性のてんかんの診断検査治療を積極的に行っております。
 東大病院は東京都の子ども救命センターとしての指定を受けて、小児の重症児の集中治療にも力を入れており、肺炎等の急性の呼吸器疾患などについても、積極的に受け入れて治療を行っています。
小児外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
140590xx97xxxx 停留精巣 手術あり 33 3.36 3.32 0.00% 3.97
060130xx99000x 食道、胃、十二指腸、他腸の炎症(その他良性疾患) 手術なし 処置1なし 処置2なし 副傷病なし 11 4.27 7.38 18.18% 11.82
060170xx02xxxx 閉塞、壊疽のない腹腔のヘルニア ヘルニア手術 腹壁瘢痕ヘルニア等 - - 8.85 - -
 小児外科で入院数の多い疾患・病態は、鼠径ヘルニアや腹壁瘢痕ヘルニアなどのヘルニア類、停留精巣(移動性精巣)、食道・胃・十二指腸のその他良性疾患、となっております。鼠径ヘルニアや停留精巣は小児外科領域ではcommom diseaseと呼ばれ非常に多い疾患です。2泊3日の入院で手術を行い、良好な結果となっています。食道・胃・十二指腸のその他良性疾患に含まれる方の多くは、腹腔鏡下噴門形成術や胃瘻造設術など上部消化管疾患に対する手術の術前検査で入院された方と思われます。これらの手術は主に重症心身障がい児の方に対して行われるもので、患児本人とそのご家族のQOL向上に役立ちます。
 このように、当科では疾患を限定せず小児外科のあらゆる領域の手術・治療に積極的に取り組んでおります。
産婦人科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
120170xx99x0xx 早産、切迫早産 手術なし 処置2なし 76 14.47 20.87 13.16% 34.96
120200xx99xxxx 妊娠中の糖尿病 手術なし 40 8.90 6.01 0.00% 35.10
120180xx99xxxx 胎児及び胎児付属物の異常 手術なし 36 11.31 6.56 16.67% 33.53
 東大病院は総合周産期母子医療センターとして、様々な妊娠中の母体、胎児・胎盤の病気に対応する機能を有しています。早産となる危険性が高いと判断される場合(切迫早産)や、胎児、胎盤に異常が疑われる場合には他の病院からの紹介、緊急入院(母体搬送)の受け入れを行い、必要があれば入院による治療、管理を行っています。また、妊娠中には血糖値が上昇しやすくなるため妊娠糖尿病が生じる場合があります。その場合には食事管理、インスリン投与の指導のため入院を行っています。
放射線科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
100020xx99x2xx 甲状腺の悪性腫瘍 手術なし 処置2:I131内用療法(2) 54 4.87 6.82 0.00% 59.69
060010xx99x30x 食道の悪性腫瘍(頸部を含む) 手術なし 処置2:化学療法ありかつ放射線療法あり(3) 副傷病なし 18 2.67 23.57 0.00% 66.22
12002xxx99x30x 子宮頸・体部の悪性腫瘍 手術なし 処置2:化学療法ありかつ放射線療法あり(3) 副傷病なし 18 2.72 22.61 0.00% 55.28
 放射線科で患者数が一番多いのは、甲状腺がんの全摘手術を受けられた方に対する放射性ヨウ素内用療法です。カプセルのお薬を飲むだけの簡単な治療ですが、他の人に余計な被ばくをさせないために、一定期間の入院が必要となります。甲状腺癌の転移や再発予防に他に類のない治療法ですが、国内では実施できる施設が少なく当科では全国から患者さんを受け入れています。入院期間は約1週間です。
 続く二、三番目は食道がんと子宮頸がんに対する根治目的の化学放射線治療です。いずれも外来での治療が原則となりますが、初回の抗がん剤投与のみ安全確保のため入院で実施しています。使用する抗がん剤の種類にもよりますが、1泊2日の入院がほとんどです。
救急科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
161070xxxxx00x 薬物中毒(その他の中毒) 処置2なし 副傷病なし 49 1.84 3.58 4.08% 41.45
050030xx99000x 急性心筋梗塞、再発性心筋梗塞 手術なし 処置1なし 処置2なし 副傷病なし 31 1.90 10.19 0.00% 73.65
161060xx99x0xx 詳細不明の損傷等 手術なし 処置2なし 29 1.79 3.71 0.00% 46.00
 当院では救命救急センターが設置されており、救急部では二次救急から三次救急患者まで広く対応しています。
 その中で症例数が最も多いのは重篤な合併症を伴わない、薬物過量服用などによる薬物中毒です。多くは入院翌日または数日で退院可能ですが、意識障害が重く誤嚥性肺炎などの合併症を伴う場合は、救命救急センター集中治療室での治療を要することもあります。 
 2番目に多いのは、失神、気分不快などを呈し来院し、急性冠症候群が疑われる症例です。入院の上、心電図モニター下での観察、採血・12誘導心電図で経過を厳重に観察します。 
 3番目は屋内転倒、交通事故など様々な原因による一般負傷です。重症でないように見えても受傷機転により、頭部CTや超音波検査、採血などの再検査やモニター下での厳重な経過観察を要します。
初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数ファイルをダウンロード
初発 再発 病期分類
基準(※)
版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌 202 32 25 184 20 131 1 7
大腸癌 204 127 120 122 120 192 1 7
乳癌 121 83 12 - 10 38 1 7
肺癌 113 45 93 76 66 112 1 7
肝癌 37 41 22 21 45 617 1 7
※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約
 5大癌(胃癌、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌)について、「初発」は国際対がん連合(UICC)の病期分類による退院患者数を、「再発」は期間内の実患者数を示しています。
 「初発」とは、当院において、当該腫瘍の診断、診断と初回治療、あるいは初回治療を実施した患者さん、「再発」とは、自施設・他施設を問わずに初回治療が完了した後、当院にて診療した患者さんや、寛解後に局所再発・再燃または新たな遠隔転移をきたした患者さんを表しています。
 当院ではI期やII期などの早期患者さんだけではなく、III期やIV期の患者さんや再発例も数多く入院しています。これはがん拠点病院として、治療困難例も積極的に受け入れているためと考えられます。
 当院の特徴のある治療としては、治療ガイドラインに基づいた標準治療のほか、必要に応じてキャンサーボードなど科の枠を超えた連携による集学的治療などが挙げられます。また早期消化管癌の内視鏡的粘膜下層剥離術、悪性狭窄に対するステント治療、肝癌のラジオ波治療、肝移植、胸腔鏡・腹腔鏡を用いた低侵襲手術、腹腔鏡・内視鏡合同手術、ロボット支援下手術などの先進的な治療にも積極的に取り組んでいます。
成人市中肺炎の重症度別患者数等ファイルをダウンロード
患者数 平均
在院日数
平均年齢
重症度 0 17 12.18 59.94
重症度 1 39 15.72 70.79
重症度 2 43 16.28 72.47
重症度 3 21 20.86 79.29
重症度 4 - - -
重症度 5 - - -
不明 10 18.70 75.50
 成人の市中肺炎について、重症度別に患者数、平均在院日数、平均年齢を示しています。
 入院契機病名および最も医療資源を投入した傷病名が、肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎のうちのいずれかであるものについて集計し、入院後発症の肺炎、一般病棟外からの転入、他院からの転院は除外しています(施設からの入院は対象としています)。インフルエンザ等、ウィルス性肺炎や誤嚥性肺炎も除外しています。
 軽症の場合は外来治療が基本ですが、当院では治療中の疾患をお持ちの患者さんが多いため、状態によっては入院が必要になる場合があります。当院の入院患者さんは中等症の方が多いですが、超重症の患者さんも数名いらっしゃいました。概して重症な患者さんほど入院期間は長くなります。
脳梗塞のICD10別患者数等ファイルをダウンロード
ICD10 傷病名 発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
G45$ 一過性脳虚血発作及び関連症候群 3日以内 - - - -
その他 - - - -
G46$ 脳血管疾患における脳の血管(性)症候群 3日以内 - - - -
その他 - - - -
I63$ 脳梗塞 3日以内 75 22.48 69.93 36.00%
その他 15 28.60 68.47 33.33%
I65$ 脳実質外動脈の閉塞及び狭窄,脳梗塞に至らなかったもの 3日以内 - - - -
その他 - - - -
I66$ 脳動脈の閉塞及び狭窄,脳梗塞に至らなかったもの 3日以内 - - - -
その他 - - - -
I675 もやもや病<ウイリス動脈輪閉塞症> 3日以内 - - - -
その他 16 14.44 27.81 0.00%
I679 脳血管疾患,詳細不明 3日以内 - - - -
その他 - - - -
 脳梗塞患者の83%が発症から3日以内の入院で、平均して1カ月弱の入院期間で治療とリハビリを行い、約1/3の患者さんが他院(主としてリハビリテーションを専門とする病院)に転院されています。
 当院では急性期の患者さんに対しては緊急MRIなどの検査を行い、超急性期と判断される場合にはt-PA血栓溶解療法を検討し、それが難しい場合でも脳外科と連携して血管内治療なども行っています。また、院内他科にて治療中の患者さんのような合併症の多い脳梗塞患者さんに対しても適切に対応しており、このような患者さんの平均入院日数が延びる傾向が認められます。さらに、脳の血管(性)症候群、脳実質外動脈の閉塞及び狭窄、もやもや病など複雑な血管疾患を背景とした血管障害の患者さんが多く入院しているのが特徴です。
診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位3位まで)ファイルをダウンロード
循環器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5493 経皮的冠動脈ステント留置術(その他) 329 3.35 4.16 0.91% 69.94
K5951 経皮的カテーテル心筋焼灼術(心房中隔穿刺、心外膜アプローチ) 163 2.91 3.92 0.00% 63.66
K5952 経皮的カテーテル心筋焼灼術(その他) 73 2.70 2.88 0.00% 55.89
 循環器内科で手術数が多いのは、第1に、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患に対する経皮的冠動脈ステント留置術や経皮的冠動脈形成術です。エキシマレーザーや、高速回転式経皮経管アテレクトミーカテーテルといった特殊な器具を使用した治療にも取り組んでいます。
 第2に多い手術が、経皮的カテーテル心筋焼灼術で、血管から心臓にカテーテルを挿入して心筋を焼灼することで、不整脈を治療します。
 ペースメーカーや植込型除細動器の移植や交換も多数例が行われており、逆に感染などでペースメーカーなどのリード抜去が必要な場合には、レーザーシースを用いた経静脈電極抜去術も施行可能です。また、心臓外科と協力して、心移植を含む重症心不全の治療を積極的に行っておりますが、これは当科の大きな特徴です。
消化器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K697-31ロ 肝悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法(2cm以内)(その他) 261 1.77 4.74 0.00% 72.57
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 187 3.31 9.79 6.95% 68.62
K6152 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等)(選択的動脈化学塞栓術) 174 1.42 5.84 0.00% 72.75
 消化器内科において最も多い入院症例は、原発性あるいは転移性の肝癌に対する「ラジオ波焼灼療法」を行う症例です。肝臓内の癌(腫瘍)に針型の電極を穿刺して電流を流し、電極先端に生じた熱によって腫瘍を凝固壊死させる治療で、世界屈指の実績を誇ります。
 2番目に多いのは、胆管結石や胆管炎の治療を行う症例です。胆管結石は、内視鏡を用いて十二指腸乳頭(胆管の出口)を電気メスで切開、あるいはバルーン(風船)で広げてから、内視鏡処置具を用いて除去します。胆管炎は胆管結石や腫瘍などで胆管がつまることにより起きますが、胆管にプラスチックや金属の管(ステント)を挿入して胆汁の流れを良くし、抗生剤などの薬物療法と合わせて治療します。
 3番目に多いのは、原発性肝癌に対する肝動脈化学塞栓術(その他の手術)の治療症例です。肝癌に栄養を供給している動脈を塞栓することによって、肝癌を壊死させる治療法です。
腎臓・内分泌内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K610-3 内シャント設置術 60 10.73 10.75 3.33% 67.58
K616-4 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 45 2.31 3.07 2.22% 70.84
K635-3 連続携行式腹膜灌流用カテーテル腹腔内留置術 - - - - -
 腎臓・内分泌内科では、血液透析関連手術が上位を占めておりますが、これは日本では95%以上が血液透析を選択していることを反映していると考えられます。
 血液透析では、一般的に内シャントなどのバスキュラーアクセス(VA)造設が必要不可欠です。当科は血管外科、泌尿器科と密な連携の上、状態に応じて可及的に手術日を決定し、手術日のみ転科の上でVA造設術を行っております。
 また、内シャントはしばしば狭窄や閉塞を起こすことが知られています。このような場合、当科では血液浄化療法部と連携し、超音波ガイドによるカテーテル治療を行い、再手術については、血管外科、泌尿器科と連携して行っております。また、VA造設術が困難な場合には、泌尿器科と連携し、長期留置カテーテル留置術を行っております。
血液・腫瘍内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K9212ロ 造血幹細胞採取(末梢血幹細胞採取)(自家移植) 13 17.08 6.69 0.00% 57.31
K6262 リンパ節摘出術(長径3cm以上) 等 - - - - -
K6261 リンパ節摘出術(長径3cm未満) 等 - - - - -
 血液・腫瘍内科では無菌治療部・輸血部・手術部などの関連部署と連携しつつ、急性白血病・悪性リンパ腫・再生不良性貧血などの血液疾患や先天性免疫不全症などを対象として造血幹細胞移植(自家・同種)を行っています。その際に、骨髄や末梢血幹細胞などの造血幹細胞を採取する必要があります。近年は血液疾患の患者さんも高齢化が進んでおりますが、当科では倫理委員会の承認を得て高齢者の同種造血幹細胞移植を積極的に推進しています。
 リンパ節摘出術は、おもに悪性リンパ腫の診断を目的としたリンパ節生検を指します。外科や耳鼻咽喉科などで実施しますが、生検部位によっては2泊3日程度の短期入院が必要となります。
アレルギー・リウマチ内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K7211 内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満) 11 29.00 16.27 0.00% 72.91
K721-21 内視鏡的大腸ポリープ切除術(長径2cm未満) - - - - -
K6261 リンパ節摘出術(長径3㎝未満) 等 - - - - -
 アレルギー・リウマチ内科の疾患を入院にて診断、治療する過程で全身精査を要することがあり、偶発的に大腸ポリープが発見された場合には、内視鏡的ポリープ切除術を行います。内視鏡による検査・手術は消化器内科に依頼しています。また、当科通院中で抗凝固療法を継続している方など、内視鏡検査・手術を行う際に特別な対応が必要な場合にも、消化器内科と協力して当科入院での検査・手術を行っています。
 少数ながら、血管炎、血栓症、動脈硬化、強皮症などにより手足末端の血流が悪くなって壊疽を起こしたり、感染による手足末端の骨髄炎を合併することがあり、外科に依頼して指の切断術を行うことがあります。
神経内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K664 胃瘻造設術(経皮的内視鏡下胃瘻造設術、腹腔鏡下胃瘻造設術を含む) 18 24.67 22.06 38.89% 67.83
K403-23 嚥下機能手術(喉頭気管分離術) - - - - -
K502-4 拡大胸腺摘出術 - - - - -
 神経内科の症例で最も多いは胃瘻造設術です。当科では神経難病患者が多く、経過の中で嚥下障害が出現する頻度が高く、他の運動機能が比較的保たれていても十分な栄養摂取が病態の進行を促進し得ると判断される場合、誤嚥性肺炎を繰り返しており、希望される場合、胃食道外科と連携して行われます。また、構音障害が高度で発語が殆ど認められない場合、胃瘻でも高度の誤嚥を繰り返す場合は、耳鼻科と協議のうえ喉頭気管分離術が施行されることもあります。
 一方、拡大胸腺摘出術は、重症筋無力症においては、治療上の効果が期待されると判断される場合、診断早期に呼吸器外科に依頼して行われます。
胃・食道外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6335 ヘルニア手術(鼠径ヘルニア) 等 54 1.81 2.39 0.00% 71.80
K655-22 腹腔鏡下胃切除術(悪性腫瘍) 等 44 2.84 14.50 2.27% 62.48
K6552 胃切除術(悪性腫瘍) 等 34 5.59 19.68 0.00% 70.29
 胃・食道外科では一般外科領域疾患であるヘルニア手術も積極的に行っています。ご高齢あるいは、余病をあわせ持っている方も多いのですが、患者さん個人個人にあわせた麻酔法、術式で行っています。
 胃がんの手術では、主として早期胃がんの方々を対象に腹腔鏡下手術を行っております。傷が小さくてすみ、患者さんにやさしい手術法です。術後在院日数も平均で開腹手術に比較すると約5日程度短くなっています。
大腸・肛門外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K719-3 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 138 8.02 13.08 1.45% 68.00
K740-22 腹腔鏡下直腸切除・切断術(低位前方切除術) 55 6.05 18.73 1.82% 62.16
K7322 人工肛門閉鎖術(腸管切除を伴う) 55 3.62 12.27 0.00% 60.87
 大腸・肛門外科で最も多く手術を行っている疾患は大腸癌です。大腸癌は悪性疾患による死亡原因の中で上位を占める疾患です。当院の大腸・肛門外科では、ほとんどの大腸癌に対して腹腔鏡を用いた低侵襲手術による治療を行っています。進行直腸癌に対しては、術前に化学放射線療法を行うことにより再発を減少させ、予後の改善を目指しています。また肛門に近い直腸癌に対しても、積極的に肛門を残す手術を行っています。肛門に近い直腸癌手術の場合、一時的な人工肛門をつくることもありますが、術後の回復を待って人工肛門を戻す手術を行います。
肝臓・胆のう・膵臓外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K672-2 腹腔鏡下胆嚢摘出術 76 2.72 5.32 0.00% 58.36
K6951 肝切除術(部分切除) 等 52 4.00 11.23 0.00% 68.08
K6152 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等)(選択的動脈化学塞栓術) 43 1.65 7.35 0.00% 74.60
 腹腔鏡下胆嚢摘出術は胆石や胆嚢ポリープなどの良性病変に対して主に行っております。
 肝切除は肝細胞癌や転移性肝癌や肝内胆管癌などに対して将来の再肝切除も視野においた肝実質温存術式を考案し行っております。
 肝細胞癌切除後の再発で多数個の場合や肝予備能が低下した場合などに放射線科医師と協力して経カテーテル的肝動脈化学塞栓術を積極的に行っております。
 肝胆膵外科では系統的切除、区域切除、片肝切除を含めた肝切除を合計180件以上、安全性に最大限の注意を払って行っております。最近では膵癌を化学療法で縮小して膵切除を行っている成果が出ており、膵頭十二指腸切除や膵体尾部切除を中心とする膵切除件数が増え、2015年は96件でありました。1990年代から取り組んでいる肝移植では、生体肝移植14件、脳死肝移植1件(2015年)を行いました。
血管外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5612 ステントグラフト内挿術(腹部大動脈) 20 9.55 7.95 5.00% 78.60
K617-4 下肢静脈瘤血管内焼灼術 15 1.00 1.00 0.00% 65.53
K5607 大動脈瘤切除術(腹部大動脈・その他のもの) 等 12 9.17 15.25 0.00% 70.75
 血管外科は心臓と脳を除く全ての血管が治療対象であり多岐にわたりますが、中でも腹部大動脈瘤に対する手術症例数が多く、ハイリスク患者さんには血管内治療であるステントグラフト内挿術を、耐術可能と評価されれば開腹瘤切除術を第一選択としています。前者の手術侵襲は低く局所麻酔での治療も可能であり、術後も5日目の退院を基本としております。しかし長期成績が不明で再治療率も高い欠点もあり、術前に十分な評価を行って治療方針を決定します。
 当科では開腹手術の成績も良好で、特に合併症がなければ術後10〜14日で退院となります。下肢静脈瘤はレーザーによる血管内焼灼術を第一選択としています。術前の全身状態の評価、マーキング、術翌日には焼灼後血栓の評価を行ってから退院としているため2泊3日の入院を基本としています。いずれにせよ患者さんの安全を第一に考えて治療をすすめています。
乳腺・内分泌外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K4762 乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除術)(腋窩部郭清を伴わないもの) 等 75 1.41 2.77 0.00% 57.29
K4763 乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術・腋窩部郭清を伴わないもの) 等 44 1.41 5.34 0.00% 64.43
K4765 乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術・胸筋切除を併施しない) 等 25 1.48 8.08 0.00% 57.60
 乳腺・内分泌外科の乳癌手術の内訳であるが、乳房部分切除術が75例、乳房切除術が44例+25例=69例であり、ほぼ半々である。これは整容性が問題になるような乳房部分切除術を極力さけるようにしているためである。希望があれば、同時再建も可能な体制となっている。また最近では、術式選択にあたり家族歴等より乳癌のなりやすさも考慮するようになってきている。
 尚、センチネルリンパ節生検術であるが、当科は色素RI法が実施可能施設である。さらに近年アメリカのガイドラインに基づき、センチネルリンパ節転移陽性であっても、乳房部分切除術であれば腋窩郭清術を省略している。加えて、乳房切除術であっても、センチネルリンパ節転移が微小転移であればやはり郭清は省略している。このように当科では積極的に郭清の省略を推進している。
臓器移植外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 46 3.26 3.91 0.00% 56.02
K686 内視鏡的胆道拡張術 19 4.00 8.00 0.00% 49.21
K6822 胆管外瘻造設術(経皮経肝) - - - - -
 人工臓器移植外科では、末期肝不全の患者さんに対する、肝移植(生体部分肝移植、脳死肝移植)術が主たる手術です。もともと末期肝不全状態で、余命数日から1年以上の患者さんを対象に肝移植を施行しますので、手術そのものも極めて困難かつ長時間に及ぶ上に、術後の入院も長期になります(平均45日)。
 また免疫抑制剤を使用するため、拒絶反応や感染症、薬剤の副作用による合併症の頻度も高率です。さらに肝移植後、長期に渡り注意を要しかつ高率に患者さんに発症するのが胆管合併症です。その中でも胆管狭窄は約20-30%の患者さんにおこり、繰り返し治療を必要とします。内視鏡的経鼻胆管ドレナージ術(ENBD)、経皮的胆管ドレナージ術、内視鏡的胆道ステント留置術、内視鏡的胆道拡張術、胆管外瘻造設術が主な治療方法となりますが、これらを組み合わせた上で、一定の間隔で複数回必要になる場合が殆どです。
心臓外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K604-24 植込型補助人工心臓(非拍動流型)(91日目以降) 28 0.00 21.57 0.00% 40.07
K5541 弁形成術(1弁) 等 23 20.87 52.39 0.00% 44.13
K552-22 冠動脈、大動脈バイパス移植術(人工心肺不使用)(2吻合以上) 等 21 20.43 15.52 28.57% 68.14
 心臓外科では植込型補助人工心臓装着手術が手術数の上位を占めています。本邦で重症心不全に対する治療の手段として補助人工心臓が一般的になってきたことと関連しますが、当科は重症心不全に対して東大病院での多職種連携による重層的な態勢で治療を進める中心を担っています。重症心不全に対する心臓移植に対しても積極的に取り組み、2010年の臓器移植法改正後の心臓移植実施数・成績ともに2016年現在全国一です。
 弁膜症や虚血性心疾患などの通常の心疾患に対する治療にも注力しています。特に、僧帽弁膜症では低侵襲手術を含めて積極的に弁形成手術を実施し、狭心症等の虚血性心疾患に対して人工心肺を用いないオフポンプ冠動脈バイパス手術を積極的に採用し、成績も良好です。大動脈基部大動脈瘤に対する自己弁温存手術では日本を牽引する治療成績を上げています。先天性心疾患治療においても拠点病院として多くの小児の命を救ってきています。
呼吸器外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K514-23 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(肺葉切除又は1肺葉を超えるもの) 等 62 3.89 10.24 0.00% 68.98
K514-21 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(部分切除) 60 3.33 7.95 1.67% 63.57
K5131 胸腔鏡下肺切除術(肺嚢胞手術(楔状部分切除)) 等 20 2.80 4.95 0.00% 30.05
 呼吸器外科では肺悪性腫瘍(原発性肺癌および転移性肺腫瘍)に対する手術治療が最も多く行われている。肺悪性腫瘍の手術の約90%を胸腔鏡下に行っている。当科の特徴としては、完全鏡視下に手術を遂行することにより、手術創部の大きさを最小限とし、より安全・低侵襲な治療を行っている。肺切除範囲については、原発性肺癌に対しては標準的な肺葉切除・リンパ節廓清を完全鏡視下で行っている。転移性肺腫瘍に対してはなるべく肺切除量を減らし術後呼吸機能の温存を図っている。一方、局所進行肺癌に対しては胸壁などの隣接臓器合併切除や気管支形成を併せ行い、根治を目指している。
 気胸などの良性疾患に対しては当科は1992年から胸腔鏡手術をいち早く取り入れ、術後の創部疼痛を軽減させQOLの回復を早める工夫を続けている。
 2015年からは東京で唯一の肺移植治療(生体肺移植および脳死肺移植)を開始した。
脳神経外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K1692 頭蓋内腫瘍摘出術(その他) 78 6.87 37.58 12.82% 52.31
K171-2 内視鏡下経鼻的下垂体腫瘍摘出術 58 2.72 12.38 0.00% 52.86
K1781 脳血管内手術(1箇所) 26 3.96 21.46 19.23% 58.62
 悪性脳腫瘍には、最新の画像診断技術を駆使した病態評価ののち、ナビゲーション、モニタリング、蛍光腫瘍標識などの最新手術支援技術を駆使して、安全な最大限の腫瘍摘出手術を行っています。言語障害などを防ぐため、必要時には覚醒下手術にて患者さんが起きた状態での摘出も行っています。
 内視鏡下経鼻的頭蓋底手術では、内視鏡下に鼻腔を経由し、頭蓋底部に到達する新しい手術方法です。脳神経を巻き込み脳深部に浸潤する脊索腫や軟骨肉腫、鞍上部の頭蓋咽頭腫や髄膜腫など、切除が困難な様々な病変に対し、安全かつ有効な切除を達成し、国内でも有数の治療件数を有しています。
 血管の病気を「カテーテル」を用いて治療するのが、血管内治療です。とくに脳の血管に対する治療は、高度な知識と技術が要求されるため、「脳血管内手術」と呼ばれています。カテーテルとは「医療に用いられる中空の細長い管」のことです。脳動脈瘤・硬膜動静脈瘻・頚動脈狭窄などの病気のほとんどはカテーテルでうまく治すことができます。
 当院では、治療の難しい病変に対しては、ガンマナイフや内視鏡手術・開頭手術とうまく組み合わせて治療を行っています。このような、国内有数の専門家が協力して行うハイブリッド治療は、歴史のある東大病院のならではの治療であります。
泌尿器科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K843 前立腺悪性腫瘍手術 等 148 2.00 11.53 0.00% 66.82
K8036イ 膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術)(電解質溶液利用) 等 122 2.50 6.22 0.00% 73.01
K800-3 膀胱水圧拡張術 57 1.47 5.23 0.00% 63.25
 泌尿器科ではロボット支援下根治的前立腺全摘除術が手術数の上位を占めています。本手術の指標である切除断端の陰性率、尿禁制の回復率、男性機能の温存率も国際水準にて実施しており、国内外の専門誌に発表してきています。
 膀胱悪性腫瘍手術も数多く実施しており一定の成績を収めています。膀胱悪性腫瘍の病状が進行した症例にはロボット支援下根治的膀胱全摘除術の実施(自由診療)を行い、出血量、合併症発生率の減少に努めています。
 さらに、間質性膀胱炎に対する膀胱水圧拡張術の実施数は国内トップレベルであり豊富な経験を有しています。
女性外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K879 子宮悪性腫瘍手術 90 3.49 15.49 0.00% 50.57
K877-2 腹腔鏡下腟式子宮全摘術 71 1.41 5.93 0.00% 47.61
K8882 子宮附属器腫瘍摘出術(両側,腹腔鏡) 等 69 1.22 5.29 0.00% 41.32
 女性外科における手術症例は大きく開腹悪性腫瘍手術と腹腔鏡下手術の2つに別れます。
 悪性腫瘍では主に子宮頸癌・子宮体癌・卵巣癌の3つがほぼ全てを占めております。子宮頸癌では罹病年齢の低下及び晩産化を反映し妊孕性温存目的の腹式広汎子宮頸部摘出術を施行しています。また初期の子宮体癌では手術の低侵襲化のため腹腔鏡下子宮全摘術も行われます。
 良性と考えられる卵巣腫瘍摘出や子宮筋腫核出では基本的に腹腔鏡下手術となります。また中等度までの大きさの子宮全摘症例でも低侵襲化目的に腹腔鏡下子宮全摘術が行われます。当科では腹腔鏡下手術を中心とした低侵襲手術の適応が年々拡大しており、開腹手術に比べて患者さんの侵襲が小さいことはもちろんのこと、傷も小さく、入院期間も短くなってきているのが特徴です。なお、臓器移植は集計対象外です。
皮膚科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0072 皮膚悪性腫瘍切除術(単純切除) 46 0.96 9.76 0.00% 71.65
K0063 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外)(長径6cm以上) 等 18 1.72 8.94 0.00% 47.06
K0052 皮下腫瘍摘出術(露出部)(長径2㎝以上4㎝未満) 等 - - - - -
 皮膚科では、皮膚腫瘍全般の手術を行っています。
 皮膚がんは希少がんではありますが、人口の高齢化により近年増加傾向です。その影響もあり、皮膚科では皮膚悪性腫瘍切除術が手術数の多くを占めています。また他の科の診療体制も充実しているため、当院の皮膚科に合併症への慎重な対応が必要な皮膚がんの患者さんが、がん専門病院からも紹介されてきます。小児から高齢者まで幅広い年齢層での良性腫瘍の切除も行っており、整容面にも配慮しながら局所皮弁での再建も行っています。遊離皮弁による再建が必要な場合は、形成外科と合同で手術を行っています。
 高齢者の手術では入院による体力低下が起こらないよう、可能な限り局所麻酔で短期入院とし、植皮で長期入院が予想される場合は、床上での早期リハビリの介入を行うなどの配慮もしています。
眼科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K2821ロ 水晶体再建術(眼内レンズを挿入する場合)(その他) 等 929 0.92 2.14 0.00% 70.90
K2801 硝子体茎顕微鏡下離断術(網膜付着組織を含む) 242 1.47 7.47 0.00% 65.88
K2683 緑内障手術(濾過手術) 179 0.99 9.02 0.00% 62.91
 眼科では他病院と同様に高齢化社会を反映して白内障が上位を占めていますが、白内障はぶどう膜炎疾患、緑内障、網膜硝子体疾患などから二次的に起こる合併症でもあるため、難治例を多く抱えているのが特徴です。そのため日帰り手術でも行える軽度の白内障より入院して術後管理を行うことが必要となり、術後入院日数が長くなっています。
 また、高度な技術を擁する増殖性硝子体網膜症、増殖性糖尿病網膜症などの網膜硝子体疾患に対する手術を多く行っています。手術前に数日早く入院して頂き、綿密な検査の元、手術計画を立てて手術を行い、術後は体位制限もあるため長めに入院して退院となります。さらに緑内障手術を多く行っていますが、その中でも濾過手術は毎日のきめ細やかな術後管理が必須であるため長期入院が必要です。
整形外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0821 人工関節置換術(股) 等 231 2.24 20.94 7.36% 67.95
K0461 骨折観血的手術(大腿) 等 42 4.67 17.74 42.86% 61.38
K079-21 関節鏡下靱帯断裂形成手術(十字靱帯) 37 1.05 11.65 0.00% 29.97
 整形外科では人工関節置換術が手術数の上位を占めています。これは人口の高齢化を反映して、変形性股関節症や変形性膝関節症の患者さんが増加しているためと考えられます。当院の整形外科では人工関節手術において、CTを用いた術前プラニングや、術中のナビゲーションを用いた精度の高い手術を特徴としています。入院期間は20日前後と比較的長めですが、その分十分なリハビリテーションを行ってからの退院、転院が多くなっています。骨折の手術が多いのは、やはり高齢者の大腿骨近位部骨折が多いためと考えられます。
 またスポーツ整形外科にも積極的に取り組んでおり、スポーツ外傷である前十字靭帯再建術も上位を占めています。前十字靭帯再建術もナビゲーションシステムを用いた精度の高い手術が特徴です。
頭頸部・耳鼻いんこう科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K319 鼓室形成手術 100 2.14 4.50 0.00% 46.06
K328 人工内耳植込術 46 2.61 6.96 0.00% 16.70
K340-5 内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅲ型(選択的(複数洞)副鼻腔手術) 等 41 1.02 3.85 0.00% 58.17
 耳鼻咽喉科では慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎・耳小骨奇形などに対する鼓室形成術や耳硬化症に対するアブミ骨手術など伝音難聴を改善する手術が手術数の上位を占めています。当科の例数が多いのは良好な聴力改善成績を反映していると考えられます。
 重度感音難聴に対する人工内耳植込術は本邦では年間約600例(半数が小児)に施行されており、当院ではその1割弱を占め、小児例が約8割と多数を占めるのが特徴です。当科では重度難聴の乳幼児に対する治療を療育施設と連携して行っており、東京のほか、千葉、埼玉、神奈川などの関東一円から紹介されています。
 また重度の内耳奇形や髄膜炎後の骨化症例など極めて難しい症例の手術を成功させていることも特徴です。内視鏡下鼻・副鼻腔手術は術中のナビゲーションを用いた精度の高い手術を特徴としており、乳頭腫などの良性腫瘍も確実に摘出しています。これらの手術の入院期間は7日前後と他院に比べ短いのが特徴です。
 このほか頭頸部悪性腫瘍に対する再建術や頸部郭清術および内視鏡下の低侵襲な腫瘍摘出術も数多く行っており、高齢者や合併症を持つ症例はがんセンターから紹介されるなど積極的に取り組んでいます。
形成・美容外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K628 リンパ管吻合術 252 1.63 8.29 0.00% 55.23
K0172 遊離皮弁術(顕微鏡下血管柄付きのもの)(その他の場合) 等 54 1.74 14.65 0.00% 51.85
K2191 眼瞼下垂症手術(眼瞼挙筋前転法) 28 1.00 1.39 0.00% 64.11
 形成外科ではリンパ浮腫に対する治療に積極的に取り組んでおります。これまで根本的治療法がなかったリンパ浮腫に対し、当科の特色であるスーパーマイクロ技術を活かしたリンパ管静脈吻合術を行っており、世界中から注目を集めております。リンパ管吻合術は浮腫に対する治療のみならず乳糜胸腹水や血管肉腫などの治療に応用される可能性があり今後更なる発展が期待されます。
 また顕微鏡下での精細な血管吻合術を必要とする遊離皮弁術により外傷・熱傷・悪性腫瘍切除後、先天性の四肢や顔面や体幹の変形に対し各種再建を行っております。顔面神経麻痺や四肢の神経性の疼痛・麻痺に対する血管付筋移植・神経移植なども行っております。同様にこれらの血管吻合術を用いて肝移植などの臓器移植術における顕微鏡下での血管吻合も行っております。
 他にも眼瞼下垂症手術をはじめとする外見・機能を回復する再建手術も多数行っております。
小児科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K9131 新生児仮死蘇生術(仮死第1度) 59 0.00 20.47 1.69% 0.00
K6113 抗悪性腫瘍剤静脈内持続注入用植込型カテーテル設置(頭頸部その他) 17 7.71 102.18 0.00% 4.59
K9132 新生児仮死蘇生術(仮死第2度) 15 0.00 47.87 13.33% 0.00
 東大病院は総合周産期母子医療センターの指定を受けており、産婦人科と協力をして最新の新生児医療を行っています。予定日よりも早く分娩となる場合や、母体あるいは胎児の状況から何等かのリスクのあると判断されて母児が当院に搬送を受け、当院にて分娩をするケースが多数あります。生まれてきた新生児の状態に少しでも問題がある場合には新生児小児医療の専門家がその場で直ちに蘇生術を施行しています。必要があればその後、新生児集中治療室にてさらに適切な治療を行っています。
 小児の血液腫瘍・先天性心疾患といった高度先進医療の充実にも力を入れており、小児がんの患児には痛みを伴う処置の回数や負担を少しでも減らすとともに、安全な医療を提供するために、中心静脈カテーテルを麻酔下で留置するようにしています。留置されたカテーテルから抗がん剤等の重要な薬剤を安定して投与することにより、患児には最低限となる負担で、良好な治療結果を上げることができています。
小児外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6335 ヘルニア手術(鼠径ヘルニア) 等 33 1.00 1.00 0.00% 3.03
K836 停留精巣固定術 31 1.16 1.29 0.00% 3.39
K664 胃瘻造設術(経皮的内視鏡下胃瘻造設術、腹腔鏡下胃瘻造設術を含む) - - - - -
 小児外科では鼠径ヘルニア根治術、停留精巣(移動性精巣)に対する精巣固定術が手術数の上位を占めています。小児の鼠径ヘルニアや停留精巣(移動性精巣)は小児外科分野で非常に多い疾患で、commom diseaseと呼ばれています。当科ではこれらの手術は2泊3日入院で行い、ほぼすべての方が合併症などを経験することなく順調な経過をたどっています。また、近日中に鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術を導入予定です。
 胃瘻造設術は重症心身障がい児の方など経管栄養に依存している方に行われることが多い手術です。当科では胃瘻造設術や腹腔鏡下噴門形成術、気管切開術、喉頭気管分離術など重症身障がい児の方やそのご家族の方のQOL向上の手助けとなる手術にも積極的に取り組んでおります。
産婦人科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8981 帝王切開術(緊急切開) 等 34 8.71 6.56 0.00% 33.32
K8983 帝王切開術(前置胎盤を合併又は32週未満の早産) 等 16 18.75 6.44 0.00% 33.13
K9062 子宮頸管縫縮術(シロッカー法) - - - - -
 東大病院は総合周産期母子医療センターとして東京都の中央ブロックにおける中核病院の役割を担っています。NICU、GCUを有し、小児外科、小児心臓手術への対応が可能で、妊娠異常、胎児異常のあらゆる状況に対応できる体制にあります。また、正常経過の妊婦さんのニーズに対応した院内助産、無痛分娩も導入しており、年間1000件を超える妊婦さんに分娩をいただいています。
 帝王切開術は産科において最も多く行われる手術です。出産で母児に危険な状態が急に生じた場合には緊急の帝王切開を行います。また胎盤が子宮口を覆っている前置胎盤に対する帝王切開では、大量の出血により母体の生命の危機的状態を生じる場合があります。そうした状況に対応すべく他科と連携した集学的治療が可能な体制にあります。
 子宮頸管縫縮術は妊娠中に感染の徴候がないにも関わらず子宮口が開く異常(子宮頸管無力症)に対して子宮口を縫縮糸で縫い閉じる手術です。それにより流産、早産の危険を低下させます。
その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)ファイルをダウンロード
DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一 - -
異なる - -
180010 敗血症 同一 36 0.15%
異なる 17 0.07%
180035 その他の真菌感染症 同一 - -
異なる - -
180040 手術・処置等の合併症 同一 239 1.01%
異なる 12 0.05%
 医療の質の改善に資するため、臨床上ゼロにはなりえないものの少しでも改善すべきものとして、あるいは様式1の精度向上を図るため、敗血症(DPC 180010)、播種性血管内凝固(DPC 130100)、手術・術後の合併症(DPC 180040)、その他の真菌症(DPC 180035)について、入院契機病名(DPC6 桁レベル)の同一性の有無を区別して患者数と発生率を示しています。
 当院における播種性血管内凝固症候群の発生率は、入院契機と同一、異なるものを合計しても数例であり、合わせて全請求の平成26年度の全国平均(0.17%)と比較しても極めて低いものになっています。また敗血症においても入院契機と同一が36例、異なるものが17例であり、全請求の0.22%と平成26年度の全国平均(0.56%)と比較して低い請求率になっています。これらの病名についてはいわゆるアップコーディングが問題視されているものであり、当院においては適切な傷病名コーディングがなされているものと考えられます。
 手術・処置などの合併症についても、傷病名が入院契機と同一のものがほとんど(同一239例、異なるもの12例)で、発生率は合わせて1.06%でした。これは平成26年度の全国平均(0.70%)と比較して大きいものでした。合併症については「透析シャント狭窄、透析シャント閉塞など」が最も多いものでしたが、血液透析に使用する内シャントはしばしば狭窄や閉塞を起こします。当院では、上記のような不具合を呈する患者さんを他院よりご紹介いただき、超音波ガイドによるカテーテル治療を行っています。次に、「術後創部感染」が続いています。このような合併症は注意しても一定数生じるものですが、さらに減少させるべく努力する必要があると考えています。起こりうる合併症については、患者さんやご家族に施行前に十分な説明を行い、ご理解・同意いただいた上で手術や処置を施行しております。
更新履歴
2016/9/28
「病院情報」を公開しました。