研究内容Research

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近年、進展著しい背景技術開発と相まって、ウイルスベクターを用いた遺伝子治療の臨床応用が盛んに試みられ、良好な成績を上げつつあります。われわれは、ながらく取り組んできた細胞系譜の直接転換を介した皮膚潰瘍に対する新しい創傷治療法の臨床応用へ向けた開発を進めるとともに、形成外科領域の難治性疾患・病態に対する遺伝子治療の開発に着手しています。皮膚軟部組織、末梢神経組織、軟骨、顎顔面骨組織に特化した遺伝子導入方法の開発を進め、難治性皮膚潰瘍、肥厚性瘢痕、ケロイド、リンパ浮腫、末梢神経障害などの病態に対する革新的な治療法へつなげていくことを目標としています。

 顔面神経麻痺においては、眼瞼の動きが障害されます。力を込めれば、なんとか眼瞼を閉じることができても、私たちは普段、無意識に瞬きを行っているため、自然な瞬きをする際は、やはりうまく閉じられていないと考えられます。そこで、1秒間に何百枚ものスピードで高速撮影を行って、まばたきを詳しく調べており、病態の解明や治療に応用していく研究を 行っています。
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近年、骨髄だけでなく全身の様々な組織においても未分化な組織幹細胞が存在することが明らかとなってきました。このような幹細胞の性質を利用して、細胞そのものを薬として使用する「再生医療」という新しい治療法の研究が世界中で行われています。我々の研究室では主に皮膚(表皮と真皮)や皮下組織(脂肪組織)に存在する幹細胞や間葉系細胞を利用することで、喪失した皮膚組織の再生を実現するための基礎研究を行っています。
近年、骨髄だけでなく全身の様々な組織においても未分化な組織幹細胞が存在することが明らかとなってきました。このような幹細胞の性質を利用して、細胞そのものを薬として使用する「再生医療」という新しい治療法の研究が世界中で行われています。我々の研究室では主に皮膚(表皮と真皮)や皮下組織(脂肪組織)に存在する幹細胞や間葉系細胞を利用することで、喪失した皮膚組織の再生を実現するための基礎研究を行っています。 研究画像1
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現在、毛周期(ヘアサイクル)の異常を来した毛包の機能を正常化する方法(毛包賦活化)、および組織幹細胞を用いて毛包再生(毛髪再生)を誘導する方法に関する研究を進めています。毛包から分離した細胞の適切な培養方法や移植方法をマウスの実験系において検証するとともに、患者さんから提供して頂いた毛包から単離した細胞を用いて、毛包再生の臨床応用を見据えた研究を行っています。 研究画像2
  ◇◆AMED研究プロジェクト◆◇
【はじめに】
 形成外科や他外科との関連で、顕微鏡下血管吻合を用いた遊離皮弁移植は現在広く普及していますが、術後の血流障害をいち早く検知するモニタリングシステムは未だ確立していません。そのため、数時間毎に移植組織を観察することが一般的ではありますが、タイムラグや患者・スタッフ・医療経済の負担等の課題を残します。私たちはこれを解決すべく、日本医療開発機構(AMED)の研究費を受け、多機関と共同し、移植組織のモニタリングシステムを開発する研究をしています。

【研究開発の背景】
 組織血流の測定は、組織移植術後、閉塞性動脈硬化症や糖尿病性足壊疽の予後判断、褥瘡など幅広い分野において重要です。特に、悪性腫瘍切除後や種々の外傷後、QOLを高めるために機能的または整容的再建をする例は増加する一方ですが、移植組織には術後一週間程度にわたり血流不全を生じるリスク(3-5%)があり、その際は救済手術を緊急で施行しない限り移植組織が壊死し治療が成功しません。成功しなければ患者さんのドナーサイトの犠牲のみならず、多大な医療資源の損失が生じます。このため、現時点では術後一週間にわたり昼夜を問わず3時間毎に医師や看護師が移植組織を観察することが一般的です(図1)。
 これに対する患者スタッフ双方の負担は大きく、客観性に欠け、人件費もかかります。また、数時間毎のチェックでは、血流障害発生からタイムラグが生じ、血流障害発見の遅れにつながるなどの問題もあります。常時モニタリングを行うことにより血流障害を医療スタッフに対して即座に知らせ、素早い救済手術を行うことができるシステムが必要です。  血流障害を即座に発見する手段が開発されれば、早期に救済処置できるため、救済率が向上し、また従来の数時間おきの診察が不要になり、患者・医師双方の負担が軽減されることが期待できます。研究画像3

 近年の電子デバイス実装技術の急速な発達により、柔らかいフィルム状の基材上に微小なセンサーを多数実装することが可能になりました。私たちは2013年度より当大学電気工学専攻関野正樹准教授との共同研究を開始しており、この技術を活用することで組織全体を昼夜継続して血流測定できるシステムを、 “世界で初めて” 実現しようとしています。本技術を用いれば、多点において、多項目を同時・継続的に観察することができるため、血流をより高精度に、かつ面状に測定することができます(図2)。

 すでに動物と健常者における有用性は立証されました (参考文献:Multipoint Tissue Circulation Monitoring with a Flexible Optical Probe. Tomioka Y et al, Sci Rep. 2017 Aug 29;7(1):9643)。現在は自治医科大学、国立がん研究センター、静岡県立静岡がんセンター、
東京医科歯科大学と多施設共同臨床試験を開始し、信頼性の高い血流常時モニタリングシステムを確立することで、以下の事項に貢献しようとしています(図3)。
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  ✔ 患者・医療スタッフ双方の負担を減少させます。

  ✔(部分的を含む)血流障害の早期診断につなげます。

  ✔ 治療の成功率を向上させます。

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 臨床研究においては各施設倫理委員会の審査・承認を経ています。また症例登録やデータ解析にあたりましては、被験者様のご理解・ご協力並びに多方面から多数の方々のご協力をいただいて成り立っています。症例登録にあたりましては、倫理委員会で承認された同意説明文書を元に、担当医師から十分な説明を提供した上で、患者さんの自由意志に従って登録いただいています。何かお問い合わせがある際にはtatenmonitor-office@umin.ac.jpにメールをください。本研究をサポートするため、東京大学形成外科・美容外科講座においては、本研究代表者・分担者並びに専属スタッフが在籍しています。