不妊外来

東京大学医学部附属病院・女性診療科・不妊外来では不妊症で治療を希望される方を対象に診療を行っています。不妊治療として始めから体外受精を御希望される患者さんはIVF外来の受診をお願いいたします。この項では、不妊外来での診療につきご説明します。

当院不妊外来の特徴

1. 当外来では、まず患者さんに不妊症について十分に理解していただいたうえで、最新のエビデンスに基づいた治療方法を示しながら個々の患者さんの希望も考えて方針決定していきます。年齢、不妊期間、個人的な事情などにより治療方針は変わります。

2. 検査や治療の区切り、また重要な方針決定などの際には不妊専門チームのミーティングで検討します。複数の目で多角的に個々の症例を検討することにより患者さんによりよい治療の選択肢を示すことができると考えています。

3. 当科には数多くの専門外来があります。不妊症に関連していると考えられるものだけでも以下にあげるような外来がありますが、同一科内の外来ですので密接なつながりがあり、不妊外来で必要があると判断した場合簡単に受診することができます。予約もこちらでいたします。

子宮内膜症外来
子宮内膜症の方のための専門外来です。 子宮内膜症と不妊には密接な関係があります。
子宮腺筋症外来
子宮腺筋症と診断され、今後の妊娠希望あるいは子宮温存機能のある方を対象に診療を行っています。
内視鏡手術外来
当科には腹腔鏡手術、子宮鏡手術の長い実績があります。不妊の原因が子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、卵管障害、子宮奇形、子宮内膜症、卵巣のう腫、多のう胞性卵巣症候群などにあり、手術により状態の改善が期待できる場合には積極的に考慮します。当科における手術に関しては、別項をご参照ください。
不育症外来
妊娠は成立するけれども流産を繰り返してしまう習慣流産、不育症の方のための専門外来ですが不妊外来と一緒に受診される例も多数あります。
子宮鏡外来
通常の外来診療で子宮内腔をファイバースコープで観察できます。不妊の原因となりえる子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮奇形、卵管閉塞などの検査が可能です。検査の所要時間は通常5~10分程度です。
妊婦外来
当院での出産をご希望される方は、産科専門医を中心に構成されている妊婦外来で慎重に経過を観察いたします。
超音波外来
最新の超音波検査装置により熟練した医師が丁寧に診察いたします。
遺伝外来
遺伝的な要因で不妊である場合もあります。また高齢出産にともなう染色体異常の不安などにも専門外来で対応可能です。
IVF(体外受精)外来
不妊外来で検査、治療を行い、体外受精治療が望ましいと考えられる方には、IVF外来への移行をお勧めしています。また、不妊治療として始めから体外受精を御希望される患者さんはIVF外来の受診をお願いいたします。詳細は別項をご参照ください。
着床外来
体外受精を行っていて、良好な受精卵を何度か胚移植しても妊娠しない方のための着床の検査の外来です。詳細は別項をご参照ください。

4. 体外受精(IVF-ET)、顕微授精(ICSI)、受精卵凍結、融解胚移植など最先端の治療もできる一方で、可能な症例に関しては腹腔鏡下癒着剥離術などにより自然妊娠を目指すこともできます。

5. 女性因子の不妊症はもちろん、男性不妊の検査に関しても通常の精液検査などは当科で検査しています。ご主人の来院は不要ですが、一緒に説明などが聞きたい場合は常に歓迎いたします。射出精液内に精子が存在せず、精巣精子採取術(TESE)などの治療が必要な男性不妊に関しては当院泌尿器科にて対応いたします。

6. 当院他科との連携システムがあるので、全身疾患合併症をお持ちの方に対しても他科と十分連携のうえで診療を進めることができます。

7. 不妊治療には月経周期などによりタイミングが重要になる場合がしばしばあります。当外来では仕事などでなかなか思うように来院できない患者さんもいらっしゃることに考慮しています。待ち時間の低減を図るため基本的には予約制ですが他外来とくらべて直前の予約、当日受診などがしやすくなっています。

8. 精神的負担に加え経済的な負担も大きくなりがちな不妊治療ですが、当科ではできるだけ保険診療で検査・治療を行うなどして費用を低く設定できるよう努力しています。

受診にあたり、必要なもの

現在他院で不妊治療中である、もしくは既にスクリーニング検査を施行済という方は、紹介状もしくは検査結果を持参の上、御来院お願いいたします。重複する検査を省略できます。また基礎体温表を既につけている方は御持参をお願いします。

診療の流れ

不妊外来の受診を希望される場合、まず火曜日午前中の不妊初診外来を受診してください。
同日当科の診療の流れなどを説明いたします。
まず不妊症の原因を探るべく、スクリーニング検査を開始します。通常1-2か月で終了します。
スクリーニング検査が一通り終わった後、その結果に基づいて治療方針を検討します。
以降は患者さんと相談しながら治療を進めます。

スクリーニング検査項目

当科不妊外来では、不妊の訴えで受診された患者さんに対し、通常全ての因子について検査を行って原因となりうる因子を見いだした後に、治療方針を決めていきます。なお、これまでに他のクリニック・病院において既に検査を行っている場合は、検査結果を持参して頂ければ省略することもできます。

具体的には下記の項目の検査を行います。

排卵因子: 月経期の脳下垂体ホルモン(FSH, LH, プロラクチン)測定
卵管因子: クラミジア抗体検査、子宮卵管造影
頸管因子: 排卵前の頸管粘液検査、性交後検査(ヒューナーテスト)
子宮因子: 超音波による子宮形状の検査、必要に応じて子宮鏡による子宮内腔の検査
男性因子: 精液検査

他にも甲状腺機能検査、卵巣予備能検査(AMH検査)、血糖値測定などを行います。

治療に関して

不妊の原因因子、年齢、治療歴を考慮し、以下のような治療を行います。

排卵因子: 
排卵障害に対しては排卵誘発剤(クロミフェン、rFSH製剤hMG製剤)を使用します。黄体機能不全に対しては、排卵誘発剤により良好な卵胞を発育させホルモン状態を安定させるか、もしくは高温期における黄体ホルモン補助を行います。高プロラクチン血症に対しては、ドーパミンアゴニスト(カバサールなど)を用います。
卵管因子: 
卵管周囲の癒着が強く疑われる場合や、卵管の通過性が不良である場合は、腹腔鏡手術を行い、癒着剥離などの治療を行います。ただし、手術によって機能回復がみこめない重度の卵管性不妊症に対しては、体外受精をお勧めします。
頸管因子: 
頸管粘液が少ない場合は、人工授精を行います。また、ヒューナーテスト陰性の場合は、体外受精をお勧めします。
子宮因子: 
不妊の原因と考えられる場合は積極的に手術を行います。子宮粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープに対しては子宮鏡下切除術を、筋層内筋腫に対しては腹腔鏡(補助)下あるいは開腹下の子宮筋腫核出術を行います。
男性因子: 
軽度の精子所見不良の場合は人工授精を行います。重度の男性不妊の場合には体外受精、顕微授精を行います。
原因不明不妊: 
明らかな原因を認めない不妊や、不妊原因に対して上記の治療を行っても妊娠に至らない場合には、既に述べた治療を組み合わせることになります。具体的には、排卵誘発剤の使用、人工授精、また腹腔鏡下手術による不妊原因の検索等を行います。原因不明不妊の場合にもこういった治療の組み合わせにより妊娠成立が期待されます。これらの治療によっても妊娠に至らない場合は、最終手段として体外受精・顕微授精をお勧めします。

外来担当医師

当科はグループ診療です。主に以下の医師が担当します。

原田美由紀
堤亮
高村将司
泉玄太郎
浦田陽子
山本直子
金谷真由子
平野茉来
中澤明里

外来日

基本的には以下の日程で行われますが、学会・研修等により外来枠を閉じる場合もありますのであらかじめ御了承ください。火曜日午前以外は再診枠となっています。

月曜日  午前10時から12時      午後13時から15時
火曜日  午前10時から12時(初診枠) 午後13時から15時
水曜日  午前10時から12時
木曜日  午前10時から12時      午後13時から15時
金曜日  午前10時から12時      午後13時から15時

不妊症とは

夫婦が避妊せずに通常の性生活を続けた場合に、1年以上たっても妊娠に至らない状態をいいます。女性の年齢が高かったり(35歳以上)、卵管や子宮に対する手術の経験があったりする場合には、不妊である可能性が高いと考えて早期の検査・治療を開始することもあります。生殖年齢にあり通常の性生活を行う夫婦のうち、不妊症となる可能性は約10%とされています。ただし、この可能性は特に女性側の年齢により大きく変わります。女性の妊娠しやすさは20歳代をピークとして、30歳代半ばにかけては緩やかに低下しますが、35歳以降は急速に低下し、40歳代半ばまでにほぼ0となります。妊娠を希望した時点で女性が35歳以上である場合、不妊症となる可能性は約30%ともいわれており、早期の検査や治療の開始が望ましいと思われます。

不妊症の原因には以下のようなものがあります。

排卵因子
女性の卵巣において卵胞が発育し排卵に至る過程で、脳下垂体から分泌されるホルモン(性腺刺激ホルモンFSH, LHおよびプロラクチンPRL)が重要な働きをします。この3つのホルモンのバランスがくずれることにより、排卵障害がおき、不妊となります。また、排卵した後の卵胞からは、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌され子宮内膜を妊娠に適した状態に保ちます。さらに、排卵後に基礎体温が高温となるのもこのホルモンの作用です。黄体ホルモンが充分に分泌されない場合には、高温期が短くなり妊娠の成立が困難となります。
卵管因子
排卵された卵子は卵管末端の卵管采とよばれるひだの中に取り込まれて、受精の場所である卵管膨大部へと運ばれます。子宮内膜症やクラミジアをはじめとする卵管内外の炎症、また子宮筋腫や卵巣嚢腫に対する手術あるいは虫垂炎など腸管などに対する手術の後に卵管の閉塞や癒着が生じることにより、卵管が正常に機能しなくなり、不妊の原因となります。
頸管因子
排卵期に性交渉により腟内に射精された精子は、子宮頸管の粘液中を泳いで子宮内に入りますここで、頸管粘液が少ない場合や、また抗精子抗体など精子運動を妨げる因子がある場合、精子は子宮内に入ることができず不妊の原因となります。
子宮因子
排卵後に卵管内で受精してから5-7日を経て、子宮内に輸送されてきた卵は、分裂を繰り返して胚盤胞と呼ばれる段階に至り、子宮内膜に着床します。この過程で子宮筋腫・子宮内膜ポリープ・子宮腺筋症などにより、着床が障害されると不妊となります。
男性因子
性交渉によって腟内に射精される精子は通常約2-3億ですが、このうち子宮~卵管を通って受精の場である卵管膨大部に達することができる精子は、数10-数100程度と考えられています。最初の射出精子の数が極端に少ない場合や運動性が悪い場合は、卵管膨大部に達する精子はほとんどいないことになり、受精に至りません。