看護部の理念・目標

 150年を超える年月、東大病院は新しい医療を開発し、医療人を育成し、患者へよりよい医療を提供することを使命としてきました。

 全国から集まった職員の力を合わせて、目の前の患者に、そして、いまと未来の医療に貢献したいと願っています。

東大病院が目指す看護

看護部の理念

  1. 患者に最適な看護を提供します
  2. 優れた専門職業人を育成します
  3. 医学と看護の発展を目指します

私達の基本姿勢

  1. 学び続ける姿勢
  2. チャレンジする精神
  3. 誇りと喜びを持って働く姿

私達の看護

「みて、触れて、考える看護」


期待する看護職像

  1. 患者の参加を促し、患者の意思を尊重しながら、確かな知識・技術・判断に基づいて、患者の生命力を引き出す看護を提供する。
  2. 組織の一員としての自覚をもち、医療チームにおいて互いの能力を最大限発揮できる関係を築き、主体的に責任を持って自らの役割を果たす。
  3. 仕事に対する誇りをもち、医療の進歩、社会の変化に対応する高度な専門的能力を身に付けるために自己研鑽に努める。

 平成21年度から看護部は新しい理念を掲げました。
 小見山智恵子看護部長のメッセージを紹介いたします。

(メッセージを表示する)

I.東京大学医学部附属病院の理念

「本院は臨床医学の発展と医療人の育成に努め、個々の患者に最適な医療を提供する」

 この理念には、大学病院の3つの役割、「教育」「研究」「診療」が表現されています。

 医師・看護師だけでなく、コ・メディカル全体を含めた医療人を育成(教育)し、臨床医学の発展(研究)に努めること、そして「最新な」や「最高の」医療ではなく、それらも含めて「個々の患者に最適な」医療(診療)を提供することが表されています。

II.看護部の理念

1.患者に最適な看護を提供します(診療)
2.優れた専門職業人を育成します(教育)
3.医学と看護の発展を目指します(研究)

 看護部は東京大学医学部附属病院の部門の一つです。

 大学病院が「教育」「研究」「診療」の役割を担っているのであれば、看護部も、その3つの役割を担わなければなりません。

 その上で、それぞれの役割について、看護部がどのような形で取り組むのかを理念として表現しました。私たち看護職員は、診療を支援する職員として位置づけられており、患者さんへのケアの提供が第一義ですので、最初に掲げる理念は、診療に関するものと考えました。

1.患者に最適な看護を提供します(診療)

 患者によって、また置かれた状況によって、最適な看護は異なります。それは患者ひとりひとりの「個別性」という一面と、同じ患者でもそのときそのときという一面があります。

 患者の状況を、現状で、また近い未来の状況を予測して、あるいは長期的な視野に立って判断しなければなりません。患者や家族が求めている援助を把握すること、明確化されていないニーズを引き出すことが必要です。そして、把握したニーズに適した援助を、適したタイミングで提供することです。

 それは排泄の援助かもしれませんし、侵襲的処置に対する緊張や疼痛に配慮した処置介助かもしれません。自立を促す訓練かもしれませんし、退院後の生活を見据えた指導かもしれません。生命の終焉を穏やかに迎えるための準備かもしれません。

 患者の背景や人生観を受け入れ、長期的視点にたつ継続した取り組み、ひとつひとつの看護実践が最適な看護につながります。看護師ひとりひとりの、チーム全体での関わりの総体として、最適な看護が実現できるのだと思います。

 最適な看護が、患者によってまた置かれた状況によって異なるとしても、看護師として担保しなければならないことがあります。それは、ケアが根拠に基づいて選択され、安全に実施されること、患者が「自分が尊重されている」と感じられる態度で提供されることです。

 患者の立場に立って考え、専門職にふさわしい知識と技術、態度に裏付けられてこそ、より最適な看護の提供に近づくと考えています。

2.優れた専門職業人を育成します(教育)

 大学病院は医学教育を行うための役割をもつ施設ですから、医療に関わる専門職業人を育成することは大学病院本来の役割です。専門職業人の育成は、病院内の職員すべてがかかわって行われているといっても過言ではありません。

 例えば、私たち看護職は、看護師や看護学生を育成する責務があります。しかし、看護師は看護師による教育だけで成長するわけではありません。患者はもちろんですが、医師や薬剤師、放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士等、まだまだ書ききれない職種の方々との連携や協働の過程によって、対象の捉え方や介入方法の違いを知ります。それぞれの役割を知り、看護の専門性について考えを深め、さらに成長します。

 他職種も同様です。

 医師や他職種の育成に関わると言っても、私たちが直接、医学教育や技術を教えるわけではありません。「患者に最適な医療を提供する」ために、職種を越えて考え、どのようにチームとして協働するのかを共有し実践することが、お互いの育成につながるのだと思います。また、後輩や新人、学生という立場は、育成される立場と考えられがちですが、自らの学習の過程や成長の過程を先輩と共有することで、教育を役割としている病院で働く職員を育成しているということも自覚する必要があります。

 大学病院は、医師・看護師をはじめとする多くの職種の、実習病院としても機能しています。彼らが初めて出会う看護職として、どのような姿を示せるか、大学病院の看護師の果たす役割は大きいと思います。

3.医学と看護の発展を目指します(研究)

 大学病院は新しい診断法や治療法を開発する役割があります。

 その開発の過程や開発された内容に対応できるように、看護も発展しなければなりません。

 私たちはどのような患者を目の前にしても、その都度考え、よりよいと考える看護を提供しますが、その看護を検証、評価し、良いことを定着させていく取り組みが必要です。

 また、大学病院には、一般の病院では治療が困難な状態の患者、治療法が確立されていない疾患の患者、極めて稀な疾患・病態の患者も来院します。その方々への看護の経過を蓄積する役割も担っていると思います。

 今まで私たちは、研究的取り組みや事例の蓄積を、積極的に行ってきたとは言えません。今後は、新たな試みや看護研究、事例の蓄積を行い、外に向けて発信する役割も積極的に担わなければならないと思います。

III.私達の基本姿勢

 「生命や健康を尊重する」「人間としての尊厳を守る」は、私達の最も大切な侵すことのできない基本姿勢です。また、病院で働く職員に対して、チームの一員として協調・協働することも同様です。これらは私たちが看護師として当然持っていなければならない基本姿勢であり、医療人としての基盤です。

 この基盤の上に立ち、看護部の理念を実現するために、またこの基盤をゆるぎないものにするために、自分たち自身がどのような基本姿勢であるべきかを考えました。

1.学び続ける姿勢
2.チャレンジする精神
3.誇りと喜びを持って働く姿

1.学び続ける姿勢

 私たちは、よりよい看護を提供するため、日々進歩する医療に対応するために学ばなければなりません。それは、患者や社会に対する看護師の責務です。

 医療や看護について、知識や技術を学ぶことも重要な学びです。患者の気持ちを察することができるように自分の感性を磨くことも学びです。患者を理解するために、人を理解するために、生命や健康について深く考えるために、そして自分自身が成長するために、学ぶべきことはたくさんあります。

 教科書を読み、研修を受けることも学びの方法です。日々の実践の中にも、同僚や先輩との語らいの中にも学びがあります。美しいものを見る、よい音楽を聞く、読書する、日常の中のいろいろなことにも学びがあります。

 それぞれがそれぞれの方法で、看護師として、人として学び成長しましょう。

 自ら欲して、学ぶという姿勢を持ち続けることと、自分が体験していることに学びを感じる気持ちを持ち続けることが大切だと思います。

2.チャレンジする精神

 「取り組んでみる」と「このまま」の2つの選択肢があるときに、無理とあきらめずに取り組むつもりで考え、やってみる、これがチャレンジする精神だと思います。

 私たちの仕事にもたくさんのチャレンジがあります。例えば、初めて重症患者さんを受け持つこと、経験したことのない処置につくこと。これも看護師が必ず経験するチャレンジです。「できない」ではなく、準備し支援を受け、やってみましょう。周りの人は、「当たり前」ではなく、その人のチャレンジを支援しましょう。リーダー、委員会、プリセプター等どれもチャレンジです。やってみましょう。

 「看護研究に取り組もう」「学会で発表しよう」「大学院を受験しよう」も、「他施設や他部署の方法を取り入れよう」「長期入院患者さんの外泊プロジェクト」こんなこともチャレンジです。

 個人により、部署によりチャレンジする内容は異なると思いますが、チャレンジのないところに変化や成長はありません。チャレンジの種を見つけて、いろいろなことにチャレンジして下さい。

 看護師は、社会や患者の変化に応じた看護を行わなければなりません。周囲が変化する中での「このまま」は後退を意味します。「チャレンジ」は患者や社会への適応です。

 自ら取り組むことがチャレンジです。そして与えられた機会に取り組むのがチャレンジです。

3.誇りと喜びを持って働く姿

 患者は看護師という職業、あるいはその職業に就いているわれわれを信頼し、さまざまなことを委ねています。私たちはそれを受け、看護師の誇りをかけて、患者によい看護を提供しようとしているはずです。よい看護と感じてもらうように看護を提供することが、看護師の誇りと喜びではないでしょうか。

 誇りと喜びは、仕事に臨む姿勢でもありますが、仕事の結果、感じることのできる達成感でもあります。

 患者から、「ありがとう」や「楽になった」などの言葉をいただけたら嬉しいと感じますが、その言葉がなくても、患者の安心した表情に触れたときや、看護者自身がよい看護ができたと思えたときに、誇りと喜びが深まり、自信へとつながっていくのだと思います。

 東大病院の看護師として、最適な看護の提供・職員育成・看護の発展に取り組み、誇りと喜びを深めたいと思います。

IV.私達の看護

「みて、触れて、考える看護」

「みて、触れて、考える看護」

 私たちは、患者に最適な看護を提供するということを理念の一番に掲げています。

 そして、最適な看護の一面を「生命力を引き出す看護」と表現して、取り組んでいます。

 消耗を少なくすること、自然治癒力や回復への意欲を高めること、患者の持てる力を活かすことなどを大切に考えています。

 このことを実現するために、看護師が実践すべきことを、日々の看護業務のレベルで考えてみると、「ベッドサイドに行って、自分の目でみて、耳で聴いて、手で触わって、状態やニーズをアセスメントして、どんなケアが必要かを考え、声をかけ実践する」ことの積み重ねである、という基本にたどり着きました。

 「みて、触れて、考える看護」。五感をフルに活用する看護です。

 「みる」はその時々の状況で見る、診る、観る、看る、視る等いろいろな「みる」がありますので、あえて平仮名にしました。最近の傾向として、モニターや医療機器の波形や数値にばかり目が行く、ケア時の声掛けや触ったりさすったりという行動が少ないという状況も指摘されています。「触れる」は、観察にも重要ですが、患者に安らぎを与える看護の実践、共感を伝えることにもつながります。患者を自分の目で観察し、自分の手で触れて状況を確認することを大切な看護と考えて意識的に行いたいと思います。もちろん患者の訴えを聴く、声をかける、説明しながら行うということは、言うまでもありません。

 何を観察すべきか、どのようにアセスメントすべきか、どんなケアが必要か、そのケアは急ぐのかどうか、など考えるべきことはたくさんあります。そして安全・安心なケアの習得など、身に付けることもたくさんあります。「学び続ける姿勢」「チャレンジする精神」で取り組み、そして、患者に最適な看護を提供するために、考え実践していることに「誇りと喜びを持って」働きたいと思います。


 この度、「理念」「私達の基本姿勢」「私達の看護」について、私なりの解釈を書かせていただきました。それぞれ短い言葉にまとめられていますが、大学病院で働く看護師としての役割を認識させられる、広く大きな奥の深い意味のある言葉だと思います。

 皆さんがそれぞれ、自分の看護について考える機会になることを願っています。

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目標

 平成19年度、当院は7:1看護師配置体制をとるため、200名を超える新卒看護師を採用しました。充足した人員でこれまで以上に質の高い看護を提供し、社会から期待される役割を果たすことができる看護部になるため、この年に採用した看護師たちが成長して大きな力となることが期待される平成23年度を目標に、「東大病院看護部のあるべき姿」を定めました。

 平成23年度を迎えるにあたり、どの程度到達できたかの評価を行い、これを踏まえて新しく「3年後(平成26年3月)の東大病院看護部のあるべき姿」を定めました。「平成25年度看護部目標」も、この「あるべき姿」の到達に向けて設定しています。

 

3年後(平成26年3月)の東大病院看護部のあるべき姿(平成23年3月制定)

 学び成長し続ける看護職員により、高度先進医療を提供するとともに患者の生命力を引き出す看護が実践されている。患者・家族、他施設、養成施設、他職種そして看護職員自身から「東大病院の看護」と「医療人を育成する力」が評価される。
  1. どの部署も看護職員のキャリア・実践能力ともにバランスの取れた組織となり、管理者を含め、それぞれがモデルとなる先輩から実践を通じて学んでいる。
  2. 「みて、触れて、考える看護」を実践する看護職員が育つ環境が整い、それぞれがキャリアパスを描き、自己研鑽や研究に取り組んでいる。
  3. 専門チーム等と連携し、様々なリソースを活用して、個別的で継続的な看護を実践し、安全で質の高い医療が提供されている。
  4. 医師および他職種と互いの役割を尊重しあい、それぞれの専門性が最大限に発揮される関係を築いている。
  5. 看護部が病院運営において大きな役割を担っている。
  6. 院内外に看護部の活動や取り組みを発信し、一般市民、患者や家族、学生、看護職と双方向の情報交換を行っている。

平成25年度看護部目標

  1. 倫理観を高め、基本的な知識・技術に基づいて、みて、触れて、考える看護を確実に実践する
  2. 部署の専門性を高め、患者の生命力を引き出す看護を実践する
  3. 看護職員および他職種とのよい協力関係を築き、チームとして患者に最適な医療を提供する
  4. 臨床に根ざした看護研究に向け、文献検索を日常の看護実践の評価や改善に活用する
  5. 病院方針の実現に貢献する
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